質問主意書

第158回国会(特別会)

質問主意書


質問第一号

福岡県警察における「カジノバー汚職事件」に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十五年十一月十九日

平野 貞夫   


       参議院議長 倉田 寛之 殿



   福岡県警察における「カジノバー汚職事件」に関する質問主意書

 本年一一月一一日付け福岡県警察における「カジノバー汚職事件」に関する質問に対する答弁書(内閣参質一五七第四号。以下「答弁書」という。)に対し、私が入手した資料などを基に、改めて次のとおり質問する。有権者や納税者が納得できる、誠実で分かりやすい答弁を求める。

一 捜査の経緯について

1 答弁書「一の1及び2について」記載の「匿名の通報」「所要の捜査」の内容について、具体的に説明されたい。
2 答弁書「一の3について」記載の「収賄被告人四名」「贈賄被告人五名」について、氏名及び犯行当時と逮捕当時それぞれの職業を明らかにされたい。
3 答弁書「一の4及び5について」で、政府は収賄警察官について「基本的には、個々の職員の職務倫理意識の欠如による」と答えているが、このように判断した根拠を説明されたい。
4 答弁書「一の4及び5について」で、「警察の許認可業務ないし捜査事務における管理体制の不備に起因するものと考えている」としているが、このように判断した根拠を説明されたい。

二 内部告発について

 私は、福岡県筑紫野警察署の捜査員が上司に提出した平成八年二月二五日付け、同年五月二三日付け及び同年六月二二日付けの「贈収賄容疑情報に関する報告書」三通の写し(以下「報告書」という。)をそれぞれ入手している。
 まず、二月二五日付け報告書によると、捜査員は暴力団組員等による恐喝(みかじめ料)被疑事件の容疑情報に基づき、内偵したところ、福岡市博多区中洲のカジノバー「フラミンゴ」に出入りする業者及び暴力団組員等から「現職警察官に手入れ(取り締まり)情報を流してもらう提供料として、平成七年一一月までは毎月三〇〇万円、同年一二月からは毎月一五〇万円の現金を渡している」「フラミンゴは開店当初、現職警察官に東京で二〇〇〇万円の現金を渡している」「現職警察官には、別途五〇〇万円相当の賭博や飲食の接待もした」「これらの現金は、佐賀県唐津警察署の敷地を提供し、交通安全協会の役員等をしている地元の建設会社社長から、フラミンゴが借り受けた」「現職警察官に現金を渡すのは、毎月収支決算日である五日か翌六日である」などの情報を入手した。
 そこで、捜査員が張り込みを続けたところ、平成七年一二月六日午後五時三〇分ごろ、博多署横の三井アーバンホテルのラウンジで、フラミンゴの経営者と博多署暴力犯係長の松尾和弘が会っているのを現認した。また平成八年二月六日、フラミンゴの経営者が現金を持って博多署方面に外出した際、松尾は別の場所にいたことから、松尾以外にも現金を受け取っている警察官がいると思われるとしている。
 さらに、フラミンゴ経営者が「近々取り締まりがあるので、警察の方から『一旦店を閉めた方がいい』旨の申し出があった」と話しているとの情報提供もあった。
 次に、五月二三日付け報告書によると、フラミンゴ経営者らは「警察から『そろそろやばくなった。五月の連休明けに手入れがあるから、連休前に店を閉めてくれ。三ヶ月は店を閉めて、三ヶ月経ったらまた名義を変えてオープンするといい』という指示を受けた。今後、警察の取り締まり情報は博多署幹部から直接入るようになった」と話しているとの情報があった。フラミンゴは連休前に閉店した。
 さらに、六月二二日付け報告書によると、捜査員がフラミンゴ関係者から事情聴取したところ「フラミンゴ姉妹店『プレイバー』への警察の手入れ情報が事前に寄せられ、情報通りに取り締まりがあった」「情報提供者は博多署幹部、県警本部捜査四課の警視、指のない刑事らである」と供述した。
 捜査員はこの供述に加え「二月二五日付け、五月二三日付けの各報告書記載の事実」「博多署副署長にプレイバーの内偵状況や捜索状況等について決裁する権限があること」「捜査四課警視は福岡県八女市の会社代表者から週に二-三回くらい、ゴルフや飲食の接待を受けているほか、各種業者と中洲を豪遊し、生活が派手であること」「指のない刑事は捜査員がこれまでの捜査状況を報告してきた相手で、捜査員がフラミンゴ経営者と松尾の面会を現認後、現金の受け渡しが銀行振り込みになった」などから、松尾、博多署副署長、捜査四課警視、指のない刑事らの容疑が認められると報告している。
1 この報告書の内容からすると、答弁書「二の1及び2について」に「尽くした」と記載されている「所要の調査」は「所要の捜査」でなければならないと考えるが、なぜ「調査」なのか。
2 捜査員が報告書で贈収賄容疑を指摘した警察官やカジノバー関係者のうち、その後立件されたのはだれか。併せて、その他の人物が立件されなかった理由も示されたい。
3 福岡地方検察庁は平成八年当時、捜査員が指摘したカジノバーをめぐる贈収賄容疑事件について、知っていたか。知っていたとすれば、どのように対処したか。
4 報告書を提出した捜査員の平成八年から退職する同一二年までの異動状況を明らかにされたい。

三 再発防止について

1 答弁書「三の1について」で、福岡県警察の再発防止策として「厳正な監察の実施」とあるが、これまでは厳正に監察を実施していなかったのか。
2 答弁書「三の1について」で、「警察署における許認可関係業務の指導に係る体制強化」とあるが、これまでは指導体制が十分でなかったのか。今回の事件が起きる前、許認可業務について、福岡県警察本部が各警察署に対して発した通達、通知等の内容も併せて明らかにされたい。
3 答弁書「三の1について」で、「暴力団捜査情報の管理に係る体制強化」とあるが、これまでは管理が十分でなかったということか。今回の事件の再発防止策として「暴力団捜査情報の管理」を挙げた理由も併せて示されたい。
4 答弁書「三の5について」で、政府は「警察改革が進められている最中に、このような事案が発生したことについては誠に遺憾である」との見解を示しているが、なぜ警察改革が進められている最中に、このような事案が発生したと考えるか。
5 答弁書「三の6について」で、政府は「最近においても、なお職員の非違行為の発生が認められるところであり」としているが、平成一二年以降の警察職員の非違行為について、行為者の所属、階級、行為時期、行為内容、処分(刑事処分も含む)状況、処分(刑事処分も含む)の理由をそれぞれ示されたい。
6 元検事総長の伊藤栄樹氏の回想録『秋霜烈日』には、共産党盗聴事件の捜査をめぐり「検察は、警察に勝てるか。どうも必ず勝てるとはいえなさそうだ」と書かれている。事件を起こした警察官の刑事処分について、検察の基本的な考え方を明らかにされたい。
7 「警察刷新会議」のメンバーで内閣特別顧問を務めた中坊公平氏が、旧住宅金融債権管理機構(現整理回収機構)社長当時の債権回収をめぐって告訴され、弁護士を廃業したことについて、政府はどのように考えるか。
8 中坊氏は弁護士廃業を発表した本年一〇月一〇日、次のようなコメント(要旨)を発表した。
 「旧住宅金融債権管理機構による大阪府堺市の土地をめぐる不適切回収行為について、一九九八年当時の社長として責任を取って大阪弁護士会に対し、弁護士名簿登録取消請求書と退会届を提出した。私ほか部下三名が告発され、東京地検の取り調べを受けた。私の処分については司直の公正な判断に委ねることとし、これとは別に、整理回収機構の公共的使命と、弁護士として高い信頼を求められる立場に照らして重い社会的責任を自らに課すこととし、断腸の思いで四十六年にわたった私の弁護士資格を返上することを決意した。このような事態を招いたことを深くおわびする。」
 警察当局は刷新会議当時、この「大阪府堺市の土地をめぐる不適切回収行為」を知っていたか。
9 政府は中坊氏の警察刷新会議への取組に、この「大阪府堺市の土地をめぐる不適切回収行為」が何らかの影響を与えたと考えるか。
10 福岡県警察のカジノバー汚職事件が摘発されるまでに、本事件に関し福岡県警察に政治家から問い合わせなどはなかったか。

  右質問する。