質問主意書

第157回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一七号

内閣参質一五七第一七号
  平成十五年十一月十八日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 倉田 寛之 殿

参議院議員福島瑞穂君提出東京拘置所建替えに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員福島瑞穂君提出東京拘置所建替えに関する質問に対する答弁書

一の1の(1)について

 お尋ねの東京拘置所建て替えに係る「新庁舎」は、東西に伸びる職員の執務室等により構成される管理棟(以下「管理棟」という。)並びに管理棟の中央部分から南西及び南東の各方向にそれぞれ放射状に伸びる二棟の収容棟(以下「南収容棟」という。)により構成されているところ、お尋ねの精神的な不調の訴えには様々なものがあること等から一概に述べることは困難であるが、例えば、南収容棟供用開始前の本年二月と供用後の同年九月について、東京拘置所医務部における精神科の一日平均受診者数を比較すると、二十九・九人から三十一・六人と一・七人の増加が認められるものの、この間の被収容者数の増加を考慮し、一日平均被収容者数に占める一日平均受診者数の割合を比較すると一・三パーセントから一・一パーセントと〇・二パーセント減少していることが認められる。

一の1の(2)及び(3)について

 東京拘置所においては、刑事被告人等の入出所が頻繁にあり、特定の被収容者について、投薬の回数や総量を把握することが困難であるため、お尋ねのような調査を実施したことはないが、東京拘置所における調剤のために払い出された薬剤の数量については記録しているため、その変化については継続的に確認してまいりたい。

一の2の(1)及び(2)について

 東京拘置所については、全体改築工事の終了後、外塀を撤去し、外塀のない施設とする予定であることから、被収容者の逃走、部外者の侵入、被収容者と部外者との不正連絡等を特に防止する必要がある。また、同工事に際しては、周辺住民等から、改築後の施設の窓の位置等は、ふかん防止等について十分配慮したものとしてもらいたい旨の要請を受けており、他方、被収容者については、施設の外から見られたり撮影されたりすることがないよう人権上の配慮が求められる。このため、南収容棟の窓については、上部と下部にルーバーを設置し、通風や採光をできる限り確保しつつ、必要な範囲で視界を制限したところである。

一の2の(3)について

 東京拘置所においては、全体改築工事の着手から管理棟及び南収容棟の供用開始前までに、周辺住民を対象とした工事現場の見学会を十八回実施したところであるが、これは、工事の実施状況を公開し、説明することによって、周辺住民の理解を得るとともに、定期的に工事見学会を開催してもらいたい旨の周辺住民の要請にこたえることを目的としたものである。
 なお、東京拘置所においては、これまでに、供用している収容棟等の内部を周辺住民に参観させたことはない。

二の1について

 南収容棟の被収容者のための戸外運動場としては、南収容棟各棟の屋上に設置した運動場(以下「屋上運動場」という。)のほか、各収容棟の偶数階の南端部分をつないだテラス状の床面に設置した運動場(以下「中間階運動場」という。)があるところ、お尋ねの「運動場」とは中間階運動場のことを、また、「黒く覆う」とは中間階運動場に隣接する通路南面に取り付けた金属製建材のことをそれぞれ指すものと解される。この金属製建材は、格子状の透き間部分に内部から外部へ斜め上向きに角度を付けた構造となっており、一の2の(1)及び(2)についてで述べたところと同様、必要な範囲で視界を制限しつつ、外気や日照を確保するため設置したものであり、設置当初は灰色であった溶融亜鉛メッキの表面が、時の経過とともに少しずつ黒味を帯びてきたものである。

二の2について

 中間階運動場及びこれに隣接する通路の施設外部に面した側には二の1についてで述べた金属製建材を、管理棟及び南収容棟に囲われた空間に面した側には格子状の透き間部分に角度のない構造の金属製建材を取り付けているものの、いずれの側も壁を設けず外気や日照を確保しており、中間階運動場における運動も、監獄法施行規則(明治四十一年司法省令第十八号)第百六条第一項等に規定する戸外運動に当たるものと考えている。

二の3について

 屋上運動場については、被収容者の収容期間の長短にかかわらずこれを使用させているところ、その対象となる被収容者の人数は、その時々の収容状況等によって異なるため一概にはお答えできないが、本年十月十日現在の人数を申し上げると、五百五十四名であり、その内訳は、刑事被告人が五百四十六名、受刑者(労役場に留置されている者を含む。)が八名である。
 なお、右の者のほか、死刑確定者についても屋上運動場を使用させる場合があると承知している。

二の4について

 東京拘置所には、現在、南収容棟以外の既存の収容棟三棟に隣接して地上の運動場五か所が存するところ、これらは、今後、管理棟の中央部から北西及び北東方向に放射状に伸びる二棟の収容棟の建設が終了した後、撤去することとしており、現時点においては、全体改築工事の終了後も右運動場を残して被収容者の運動に供することは検討していない。

三の1について

 御指摘のような事実はないと承知している。

三の2について

 現在、ラジオのスイッチを居房内に設置している行刑施設(刑務所、少年刑務所及び拘置所をいう。以下同じ。)は、東京拘置所(南収容棟以外の収容棟の居房の一部)、奈良少年刑務所、福島刑務所(居房の一部)及び大阪拘置所(居房の一部)であり、これら以外の行刑施設においては、南収容棟と同様、スイッチを居房の外部にのみ設置している。
 このように、ほとんどの行刑施設においてスイッチを居房の外部に設置している理由は、被収容者がスイッチを故意に破損したり、部品を取り外して自傷の用に供したり、又はスイッチに紐状の物を掛けて縊首を企図したりする等の事故の防止という保安上の配慮によるものであり、南収容棟も同様の理由により、居房の外部にのみこれを設置したものである。
 したがって、拘禁施設として保安上支障が生じない範囲においては、被収容者にスイッチの操作をゆだねても差し支えない場面も想定されることから、スイッチを居房内に設置することも検討する余地があると考えている。
 東京拘置所についても、今後、拘禁施設として保安上支障が生じない範囲で、スイッチを居房内に設置することが可能かどうか検討してまいりたい。

三の3の(1)について

 拘置所の参観については、「参観の取扱いについて(通達)」(平成八年三月一日付け法務省矯総第三百三十五号)において、拘置所、拘置支所及び拘置区(以下「拘置所等」という。)の参観は原則として許さないこととしているところである。これは、拘置所等が罪証隠滅や逃亡のおそれ等のため勾留された被疑者及び被告人等を収容する施設であり、また、被疑者及び被告人は無罪の推定を受ける者であることから、これらの点につき慎重な配慮が求められることによる。

三の3の(2)について

 御指摘のように、行刑施設運営の透明化を図る必要性は十分認識しており、拘置所等を含め行刑施設の参観の在り方については、御指摘の行刑改革会議における議論や提言を踏まえ、検討してまいりたい。