質問主意書

第157回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一〇号

内閣参質一五七第一〇号
  平成十五年十月三十一日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 倉田 寛之 殿

参議院議員吉岡吉典君提出日出生台演習場での米海兵隊実弾射撃演習に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員吉岡吉典君提出日出生台演習場での米海兵隊実弾射撃演習に関する質問に対する答弁書

一について

 我が国に駐留するアメリカ合衆国(以下「合衆国」という。)の軍隊(以下「合衆国軍隊」という。)のうち沖縄県に駐留する軍隊(以下「在沖米軍」という。)のキャンプ・ハンセンにおける射撃訓練等の実施により発生する山火事については、発生の都度、在沖米軍から那覇防衛施設局に対し通報がなされてきており、平成十四年八月から本年五月末までの間の発生件数は十二件である。政府としては、従来から、合衆国軍隊に対し、山火事の未然防止に努めるとともに、発生した場合には直ちに消火活動を行い、その被害を最小限にとどめるよう累次申入れを行ってきているところである。また、山火事が発生した場合に消火活動が迅速に行われるようにするため、キャンプ・ハンセンにおいて、消火用水槽、ヘリコプターの離着陸場、道路等の整備に努めてきているところである。
 なお、在沖米軍においては、右申入れ等を踏まえ、射撃訓練の実施に際して、キャンプ・ハンセンにおける気象条件を考慮の上、曳光弾、照明弾等の使用を制限するなどの措置をとっていると承知している。また、消火活動を迅速に行うため、平成十四年から、山火事が発生した場合は、現地の訓練部隊が直接、普天間飛行場のヘリコプター部隊に対して出動を要請する体制に改めるとともに、消火活動のためのヘリコプター一機を同飛行場に常時確保していると承知している。
 お尋ねの騒音による「被害の実態」がどのようなものを想定しているのか必ずしも明らかではないが、例えば、キャンプ・ハンセン周辺の地方公共団体や住民から那覇防衛施設局に寄せられた騒音に対する苦情及び抗議で記録にとどめたものの件数は、平成十一年においては五件、平成十二年においては十五件、平成十三年においては七件、平成十四年においては十六件、本年一月から九月末までの間においては零件である。政府としては、キャンプ・ハンセン周辺において、従来から、防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律(昭和四十九年法律第百一号)に基づき、学校、保育所等の防音工事に関する助成の措置を講じてきているところであり、また、合衆国軍隊に対し、騒音の軽減について配慮するよう累次申入れを行ってきているところである。
 お尋ねの「流れ弾による被害」については、在沖米軍のうち海兵隊(以下「在沖米海兵隊」という。)によるいわゆる沖縄県道一〇四号線越え実弾射撃訓練(以下「県道一〇四号線越え実弾射撃訓練」という。)が取りやめられた平成九年度以降、発生していないと承知している。
 なお、合衆国軍隊に照会したところ、同年度以降、県道一〇四号線越え実弾射撃訓練において百五十五ミリりゅう弾砲の砲座として使用された区域においては、実弾射撃訓練は実施していないとのことである。

二について

 県道一〇四号線越え実弾射撃訓練については、実施の都度、県道一〇四号線の一部区間の交通規制が行われることや訓練の危険性などを理由として、沖縄県を始めとする関係地方公共団体や住民がその取りやめを長年にわたり強く要望していたものである。政府としては、右要望を踏まえ、同県民の負担を軽減することを目的として、平成九年度から県道一〇四号線越え実弾射撃訓練を取りやめ、本土において同質・同量の訓練(以下「本土移転訓練」という。)を実施することとする旨合衆国政府と合意したものである。
 お尋ねの「沖縄県における演習や基地被害」がどのようなものを想定しているのか必ずしも明らかではないが、例えば、平成八年度においては、県道一〇四号線越え実弾射撃訓練が三十六日間実施され、その都度、県道一〇四号線の一部区間の交通規制が行われていたところ、本土移転訓練が開始された平成九年度以降においては、当該交通規制が行われなくなったことにより、周辺住民の生活上の支障等がなくなったことから、このような意味において同県民の負担は軽減されたと認識している。
 本土移転訓練が実施されている矢臼別、王城寺原、北富士、東富士及び日出生台の自衛隊の各演習場周辺の地方公共団体、住民等からは、これまで、陳情等を通じ、例えば、射撃による騒音及び振動により周辺住民の生活環境に影響が及んでいるとして、特に早朝及び夜間の射撃訓練を自粛し又は中止することや訓練の安全対策等に万全を期することが求められている。

三及び四について

 御指摘の「一部の米軍車輌」が所定の表示を行っていたかどうかについては、把握することが困難であるが、公用車両の表示に関する措置を含め、沖縄に関する特別行動委員会(SACO)最終報告の実施状況については、今後とも合衆国政府との間で確認してまいりたい。

五について

 本土移転訓練を日出生台演習場において実施するに際しては、平成九年十月二十三日、福岡防衛施設局長が、大分県知事、玖珠町長、九重町長及び湯布院町長との間で、「日出生台演習場の米軍使用に関する協定」を締結したところであり、同協定においては、「協定当事者は、米軍が、訓練部隊の司令官は責任をもって自己の部隊の秩序と規律の維持を確保し、その際、最高度の規律を確保すると約束していることを確認する。施設局長としても、米軍の外出時には職員が同行するなど責任を持って対応する。」とされている。
 福岡防衛施設局においては、周辺住民の不安を解消するため、日出生台演習場における本土移転訓練期間中の規律保持について、合衆国軍隊へ累次申入れを行うとともに、当該期間中、福岡防衛施設局の職員が、同演習場から外出する在沖米海兵隊の隊員の案内のための同行に努め、個々の外出状況に応じて同行ができない場合には外出先で巡回する等の措置を講じてきており、今後とも引き続き同様の措置を講じてまいりたい。
 なお、本土移転訓練の実施にかかわる防衛施設局(以下「関係防衛施設局」という。)においては、関係地方公共団体等に対し、適切に情報の提供を行ってきているところであり、御指摘の在沖米海兵隊の隊員の外出先についても、当初から長崎方面とされており、福岡防衛施設局米海兵隊実弾射撃訓練実施現地対策本部から関係地方公共団体に対し、事前にお知らせしたところである。

六について

 関係防衛施設局においては、当該防衛施設局の関係する職員で構成する現地の対策本部又は連絡本部(以下「現地対策本部等」という。)を設置し、早朝及び夜間の射撃訓練の自粛又は中止や訓練の安全対策等を求める関係地方公共団体からの要請等も考慮し、本土移転訓練期間中の隊員の規律を保持すること、早朝及び夜間の射撃訓練を最小限にとどめること等について、累次合衆国軍隊へ申入れを行うなど、合衆国軍隊と必要な調整を行ってきているところであり、引き続き現行の現地対策本部等により対応してまいりたい。