質問主意書

第157回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第九号

内閣参質一五七第九号
  平成十五年十一月十四日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 倉田 寛之 殿

参議院議員井上美代君提出公的年金改正における女性の労働力率見通しに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員井上美代君提出公的年金改正における女性の労働力率見通しに関する質問に対する答弁書

一について

 本年九月五日に公表した「平成十六年年金改革における給付と負担の見直しについて(坂口試案骨子)」(以下「坂口試案」という。)における年金の財政見通しの作成に用いた労働省が平成十年に行った平成三十七年までの労働力率の見通し(以下「平成十年推計」という。)は、過去の労働力率の実績と将来の労働力率に与える要因を分析した上で、性別及び年齢層別に推計したものである。
 具体的には、男性に関して、十五歳から二十四歳までの年齢層については過去の労働力率の実績を踏まえ、短時間雇用者比率(非農林業雇用者に占める短時間雇用者の割合をいう。以下同じ。)の変化の影響等を見込んで推計し、二十五歳から五十九歳までの年齢層については長期にわたって労働力率の変化がみられないため昭和六十三年から平成九年までの労働力率の平均値の実績をもって推計値とし、六十歳以上の年齢層については過去の労働力率の実績を踏まえ、六十歳以上の就業者に占める自営業主及び家族従業者の割合の変化の影響等を見込んで推計している。また、女性に関しては各年齢層について、過去の労働力率の実績を踏まえ、出生時期による労働力率の特性、有配偶率の変化、短時間雇用者比率の変化の影響等を見込んで推計している。

二について

 平成十年推計は、一についてで述べたように、過去の労働力率の実績を踏まえ、各種の要因の影響を見込んで推計したものであり、女性の労働力率のいわゆる「M字型」(以下「M字型」という。)の底である三十歳から三十四歳までの年齢層について、その女性の労働力率は平成九年から平成三十七年までに八・八ポイント上昇するものの、労働力率が高い二十五歳から二十九歳まで及び四十五歳から四十九歳までの年齢層の女性の労働力率も同じ時期にそれぞれ五・二ポイント、四・三ポイント上昇することが見込まれていることから、M字型は緩やかになるものの、解消することにはならないと推計している。
 また、平成十年推計においては平成三十七年より後の労働力率を推計していないため、坂口試案においては、男女を問わず同年以降の労働力率を固定して年金の財政見通しを作成している。

三について

 M字型が解消され、女性の労働力率が高まると仮定すると、女性の労働力率が高まっている期間においては、年金財政における負担能力が改善する可能性がある。一方、長期的に年金財政を考えた場合には、労働し保険料を納付したことに対応する給付が高齢期に行われることとなることから、将来の給付が増大する可能性がある。また、労働力率が高まったときの女性の就業の形態、賃金水準等も給付と負担の双方に影響を与えることから、M字型の解消が年金財政にどのような影響を与えるかについては、一概にお答えできない。

四について

 年金の財政見通しに用いる労働力率の見通しは、過去の労働力率の実績を踏まえ、各種の要因の影響を見込んで推計するものであり、目標水準を事前に設定するようなものではなく、また、お尋ねのケースについて、M字型が解消する時期などの前提は必ずしも明らかではないが、お尋ねのケースに整合的な前提をおいた年金の財政見通しの作成を行うことについては、今後の課題として検討してまいりたい。