質問主意書

第157回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第七号

内閣参質一五七第七号
  平成十五年十一月十一日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 倉田 寛之 殿

参議院議員福島瑞穂君提出浜岡原子力発電所の耐震性に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員福島瑞穂君提出浜岡原子力発電所の耐震性に関する質問に対する答弁書

一の1及び2について

 御指摘の平沼前経済産業大臣の「科学技術ですとかそういうもので、完全、パーフェクトなものはあり得ないと思います。その中で、いかにより完全に近づいて安全性を担保する、それが我々人類に課せられた課題だと思っています」との発言は、科学技術には常に発展や改良の余地があり、より完全なものに近づけるための努力が必要である旨を一般論として述べたものである。
 他方、原子力発電所の耐震設計の審査に当たっては、信頼性の高い科学的知見に基づき、過去に発生した地震及び周辺の地質の調査等から原子力発電所の立地を予定する地域で発生が予測される地震のうち最大の規模のものを想定し、そのような地震が発生したとしても十分な安全性が確保し得ることを確認しており、「浜岡原発を巨大地震の安全性の実験機」にしている旨の御指摘は当たらないと考える。

一の3及び4について

 お尋ねの平沼前経済産業大臣の発言における「想定外の地震」とは、中央防災会議において東海地震の規模としてマグニチュード八・〇が想定されているところ、これを超える規模の地震を意味しており、具体的には、浜岡原子力発電所の耐震設計の審査に当たって想定した最大でマグニチュード八・五の規模の地震を意味している。
 また、中部電力株式会社から聴取したところ、お尋ねの中部電力株式会社のパンフレットの記述における「想定される・・・地震」とは、最大でマグニチュード八・五の規模の地震を意味しているとのことであり、「平沼前大臣と中部電力との見解が異なっている」との御指摘は当たらない。

二の1から3までについて

 御指摘の中部電力株式会社浜岡原子力発電所五号炉参考資料第九一C-五-一号においては、マグニチュード八程度の規模の地震として、関東大地震以外に、千九百八十五年のチリ地震(マグニチュード八・〇)及びメキシコ地震(マグニチュード八・〇)を検討の対象として取り上げ、これらの地震の震源近傍の岩盤における最大加速度の観測結果を考慮するなど十分な検討を行っており、基準地震動S1(発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針(昭和五十六年七月二十日原子力安全委員会決定。以下「耐震設計審査指針」という。)5.の(3)の①の(ⅰ)の基準地震動S1をいう。以下同じ。)の最大加速度を四百五十ガルとすることは妥当であるとした結論は適切なものであったと考えている。
 また、お尋ねの基準地震動S2(耐震設計審査指針5.の(3)の①の(ⅱ)の基準地震動S2をいう。以下同じ。)の最大加速度の設定については、南海トラフ沿いにおけるマグニチュード八・五の規模の地震等(以下、「南海トラフ地震等」という。)の発生を想定し、基準地震動S1の最大加速度を四百五十ガルとしたことなどを踏まえて十分な検討を行ったところであるが、右に述べたように、基準地震動S1の最大加速度を四百五十ガルとしたことは妥当であり、基準地震動S2の最大加速度を六百ガルとしたことについても問題はないと考えている。
 このように、お尋ねの基準地震動S1及び基準地震動S2の最大加速度の設定は、いずれも妥当なものであると考えており、「浜岡原発は想定した東海地震にさえ耐えられるはずがない」との御指摘は当たらないと考える。

二の4について

 平成十二年十月六日の「平成十二年(二〇〇〇年)鳥取県西部地震」、平成十三年三月二十四日の「平成十三年(二〇〇一年)芸予地震」、平成十五年五月二十六日の宮城県沖の地震、同年七月二十六日の宮城県北部の地震及び同年九月二十六日の「平成十五年(二〇〇三年)十勝沖地震」に係るお尋ねの点は、別表第一のとおりである。

二の5について

 お尋ねの地震について「加速度頭打ち」に係る検討を行ったことはなく、お尋ねの点についてお答えすることはできない。

三の1について

 地震の発生に伴う原子力災害の防止については、関係する法令等の規定に基づき原子力発電所が十分な耐震性を有することを確認するなど原子力発電所における事故の防止に万全を期しているほか、万が一、地震の発生に伴い原子力発電所において事故が起こった場合においても、防災基本計画等に定める原子力災害対策に従って適切に対応することが可能であると考えている。さらに、東海地震の発生時における浜岡原子力発電所の防災対策については、災害対策基本法(昭和三十六年法律第二百二十三号)第四十条第一項の規定に基づく静岡県地域防災計画に、内閣総理大臣が大規模地震対策特別措置法(昭和五十三年法律第七十三号)第九条第一項の規定により警戒宣言を発した場合において電力需給を勘案しつつ行う発電所の運転停止等が定められており、「「浜岡原発震災」を起きないこととし、防災対策は必要ないとする」との御指摘は当たらないと考える。
 なお、お尋ねにおいて防災基本計画の記述として引用されている記述は、防災基本計画には存在しない。

三の2について

 三の1についてで述べたように、原子力発電所については、十分な耐震性を有することを確認することなどにより地震の発生に伴う原子力災害の防止に努めており、「東海地震が起きる前に浜岡原発を停止することは、唯一の防災手段である」との御指摘は当たらないと考える。

三の3について

 き裂が発生した炉心シュラウドの安全性について評価を行うに当たって、当該き裂が過去においてどのように進展してきたかという点についての情報は必要でないため、お尋ねの点については特段の検討を行っていない。

三の4について

 浜岡原子力発電所第四号機の炉心シュラウドについては、平成十五年七月十五日、発電用原子力設備に関する技術基準を定める省令(昭和四十年通商産業省令第六十二号)第三条第一項の規定に基づき中部電力株式会社に対して特殊設計施設の認可を行った際に、当該炉心シュラウドに生じたき裂の進展状況の予測を基に、南海トラフ地震等を想定して設定された地震動が作用したとしても、五年後においても当該シュラウドの構造健全性が十分に確保されることを確認しており、この評価結果は妥当なものであると考えている。

三の5について

 千九百七十年から千九百九十九年までの三十年間のアメリカ合衆国、英国、フランス、ドイツ及び日本におけるマグニチュード五・〇以上の規模の地震の発生回数は、別表第二のとおりである。

別表第一 1/2

別表第一 2/2

別表第二