質問主意書

第157回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一六号

国立高度専門医療センターにおける看護体制問題等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十五年十月九日

小池 晃   


       参議院議長 倉田 寛之 殿



   国立高度専門医療センターにおける看護体制問題等に関する質問主意書

一 厚生労働省管轄の国立高度専門医療センターは、我が国を代表する医療施設であり、国民の期待も大きなものがある。より一層の機能の充実・強化が強く望まれているところである。国立高度専門医療センターは二〇〇四年度からは国立病院・療養所が独立行政法人化に伴い、「国立高度専門医療センター特別会計」によって運営されることになる。新しい枠組みの下で、その期待される機能にふさわしいマンパワーの充実が必要だと考え、以下質問する。

1 全日本国立医療労働組合(以下「全医労」という。)は二〇〇三年に「退庁時間調査」を実施した。調査は更衣棟前などで退庁する看護師に対する聞き取りを行っている。例えば国立がんセンター東病院では半数以上の看護師が平均二時間以上の残業をしている実態が明らかになった。しかし厚生労働省が明らかにした二〇〇二年度超勤勤務実態によると、国立がんセンター東病院の看護師の超過勤務時間は月平均十時間弱であり、一人一日にすれば〇・五時間にすぎない。看護師の残業実態と超過勤務手当の支給実績には大きな乖離があり、いわゆるサービス残業となっているのではないかと考えられるが、厚生労働省の見解を求める。
2 厚生労働省は二〇〇一年四月六日、労働基準局長名で「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準について」を発出している。これによると「使用者には、労働時間の管理を適切に行う責務がある」としているが、国立高度専門医療センターにおける勤務時間管理は同通達が示す基準を満たしているのか。現状の労働時間管理方法の報告と併せて見解を求める。
3 全医労による調査結果からみて国立高度専門医療センターに勤務する看護師には慢性的な超過勤務の実態があることがうかがわれる。一人一日平均二時間もの超過勤務が生じている最大の原因は、深刻な人員不足にあると考えられるが、厚生労働省の見解を求める。また超過勤務の解消・縮減に向けた方策についても厚生労働省の見解を求める。
4 文部科学省管轄の国立大学付属病院や日赤、労災病院などの公的医療機関に比較して、国立高度専門医療センターの看護体制、とりわけその夜勤における人員体制が少ない事実は以前から指摘されている。その医療内容などからみて、国立高度専門医療センターの看護師の夜勤体制は(準夜・深夜ともに)少なくとも三人以上は必要であり、厚生労働省として、その実現に向けた増員計画を早急に作成すべきである。すべての病棟での三人以上夜勤を実現するためには何人の看護師を増員する必要があるのか。また増員計画策定についての厚生労働省の見解を求める。
5 看護体制の充実・強化に当たっては、増員と併せて離職防止策の徹底が重要である。国立高度専門医療センターにおける看護師の一年間の退職者数及び平均退職年齢、平均在職期間、主な退職理由を明らかにされたい。今後、厚生労働省として、国立高度専門医療センターにおける看護師の離職防止をどのように図るのか、具体的な説明を求める。

二 救急救命医療について国民の関心が高まっている現在、国立高度専門医療センターはその役割を積極的に果たすことが求められており、併せて救急救命医療に従事する労働者の労働条件改善も必要であると考え、以下質問する。

1 国立高度専門医療センターでは時間外の救急救命が頻繁に行われており、医師・看護師は交代制をとっているが、その他の薬剤師・臨床検査技師・事務職員などは宿日直勤務で対応している。宿日直勤務は原則として通常の労働を行わず充分な睡眠時間が取れることなどを条件に労働基準法に基づき認められるが、救急医療体制の進展に伴い宿日直勤務として対応することが適切でないケースが少なくないとして、厚生労働省は二〇〇二年三月一九日、労働基準局長名で「医療機関における休日及び夜間勤務の適正化について」を発出し、社団法人日本病院協会等に対しても遵守することを要請している。国立高度専門医療センターで現在実施している宿日直勤務はこの指導からして、適正なものといえるかどうか、見解を求める。
2 民間医療機関に対しては宿日直勤務の適正化を指導しながら、国立高度専門医療センターについては「労働基準法の対象外」として、それを放置するならば、仮に職員に健康被害等が生じた場合、その管理責任は極めて重大であり、決して免れることはできない。今後、国立高度専門医療センターにおける宿日直勤務についても、民間医療機関と同様に改善を図るべきと考えるが、見解を求める。

  右質問する。