質問主意書

第156回国会(常会)

答弁書


答弁書第四六号

内閣参質一五六第四六号
  平成十五年九月二日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 倉田 寛之 殿

参議院議員平野貞夫君提出鍼灸マッサージ医療に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員平野貞夫君提出鍼灸マッサージ医療に関する質問に対する答弁書

一について

 健康保険法(大正十一年法律第七十号)においては、保険医療機関が被保険者に対して療養の給付を行うことを原則とするとともに、入院時食事療養費、特定療養費及び訪問看護療養費の支給については、保険者は被保険者に代わり、療養の提供者に当該療養に要した費用のうち一部負担金相当額又は標準負担額を除いた額を直接支払うこと(以下「現物給付化」という。)ができる旨が規定されている。
 一方、同法第八十七条第一項に基づく療養費の支給については、保険者は、療養の給付を行うことが困難であると認めるとき又は保険医療機関以外の者から診療、手当等を受けたことがやむを得ないと認めるときは、その費用の一部を療養費として支給できることとされているが、入院時食事療養費、特定療養費及び訪問看護療養費とは異なり、現物給付化を可能とする旨の規定がないことから、原則として、現物給付化と同様の取扱いをすることは認められない。
 なお、柔道整復に係る療養費については、かつて整形外科を担う医師が少なかったこと、柔道整復師は脱臼又は骨折に対する応急手当をすることがあり、その場合には柔道整復師法(昭和四十五年法律第十九号)第十七条により医師の同意を要しないとされていること等を踏まえ、被保険者がその傷病に対する手当等を迅速に利用することを可能とする観点から、例外的に、受領委任払い(保険者と柔道整復師により構成される団体又は柔道整復師との間で契約を締結するとともに、被保険者が療養費の受領を当該契約に係る柔道整復師に委任することにより、保険者が療養費を被保険者ではなく柔道整復師に支払うことをいう。)の実施が認められているところである。

二について

 御指摘のような言明を行っている医師の数は把握していないが、慢性期に至っていない患者であっても、その症状等に応じて、医師による適当な治療手段のないものは存在すると考えている。

三について

 健康保険法においては、保険医療機関がはり施術又はきゅう施術(以下「はり施術等」という。)を実施すること自体は禁止されていない。
 しかしながら、このような場合に、保険医療機関は、保険者からはり施術等に着目した費用の支払を受けることはできず、また、保険医療機関及び保険医療養担当規則(昭和三十二年厚生省令第十五号)により、被保険者から保険診療に係る一部負担金等の外に費用の支払を受けることもできないこととされている。
 一方、施術所におけるはり施術等については、同法第八十七条第一項により、保険者は、療養の給付を行うことが困難であると認めるとき等は、その費用の一部を療養費として支給できることとされている。

四について

 健康保険法第八十七条第一項により保険者がはり施術等について療養費を支給するためには、ある被保険者について医師による適当な治療手段がないと判断される必要はあるが、医師が当該被保険者に対するはり施術等の適否まで判断する必要はないと考えている。

五について

 平成十五年六月二十四日に秋田県から千葉地方裁判所に御指摘の「副本」は提出されていないが、同日付けで厚生労働省から千葉地方裁判所に提出した乙①A第二十八号証(以下「第二十八号証」という。)は、昭和二十五年当時厚生省保険局から秋田県あて発出した「按摩、鍼灸術にかかる健康保険の療養費について」(昭和二十五年一月十九日付け保発第四号厚生省保険局長通知。以下「局長通知」という。)の写しである。

六、七及び十二について

 五についてで述べたように、第二十八号証は局長通知の写しであり、御指摘の「療養費の支給基準」と題する株式会社社会保険研究所が発行した書籍(以下「本件書籍」という。)に掲載されている局長通知の解説が局長通知と内容的に異なる理由は承知していないが、厚生労働省においては、従来から、局長通知の内容を踏まえて、保険者等に対して適切な指導を行ってきたところである。

八について

 厚生省大臣官房統計調査部(当時)が推計を行った「国民総医療費推計額」によれば、総医療費は、昭和二十四年度は千七十三億円、昭和二十五年度は千九十四億円、昭和二十六年度は千七十二億円である。なお、昭和二十三年度の総医療費は把握していない。
 また、これらの各年度におけるあん摩、はり及びきゅうに係る療養費の総額は、把握していない。

九について

 局長通知中の「本件については従前通り御取扱いを願いたい」とは、一についてで述べたように、健康保険法の関連規定を踏まえれば、あん摩、はり及びきゅうに係る療養費の支給については現物給付化を認めない取扱いをお願いするという趣旨である。

十について

 平成十五年版の本件書籍の局長通知に関する記述の中に、「療術業者」という文言はないと承知している。

十一について

 局長通知中の「療術業者」とは、局長通知の発出当時のあん摩、はり、きゆう、柔道整復等営業法(昭和二十二年法律第二百十七号)第一条の規定によるあん摩師免許、はり師免許又はきゅう師免許を受けた者等を指している。

十三について

 あん摩、マッサージ及び指圧については、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(昭和二十二年法律第二百十七号)第一条により、医師以外には、あん摩マッサージ指圧師の免許を有する者でなければ業としてはならないとされており、これに違反した場合には同法第十三条の七により処罰の対象となるため、「医業類似行為に対する取扱いについて」(平成三年六月二十八日付け医事第五十八号厚生省健康政策局医事課長通知)を発出する等、都道府県に対して、このような取扱いの関係方面に対する周知、指導等を要請しているところである。