質問主意書

第156回国会(常会)

答弁書


答弁書第一五号

内閣参質一五六第一五号
  平成十五年五月二十日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 倉田 寛之 殿

参議院議員大脇雅子君提出テロ対策特別措置法に基づく自衛隊海外派遣にかかわる規模、経費等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員大脇雅子君提出テロ対策特別措置法に基づく自衛隊海外派遣にかかわる規模、経費等に関する質問に対する答弁書

一の1について

 平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法(平成十三年法律第百十三号。以下「テロ対策特措法」という。)に基づく協力支援活動及び被災民救援活動に係る所要経費については、平成十三年度においては平成十三年十一月二十二日に閣議決定された予備費を使用し、平成十四年度においては平成十四年五月二十一日及び同年十一月二十二日に閣議決定された予備費等を使用したところである。
 右の活動に係る所要経費の実績については、あくまで現時点における概算額ではあるが、平成十三年度末までに協力支援活動については約九十億円、被災民救援活動については約一億円を執行し、平成十四年四月から本年三月末までの間に協力支援活動について約百三十八億円を執行したところである。

一の2の①について

 掃海母艦「うらが」及び護衛艦「さわぎり」が被災民救援活動として輸送した、テント千二十五張、毛布一万八千六百枚、ビニールシート七千九百二十五枚、スリーピングマット一万九千九百八十枚、給水容器一万九千六百個の合計約二百トンの救援物資は、パキスタン・イスラム共和国のカラチで国際連合難民高等弁務官事務所(以下「UNHCR」という。)に引き渡された。当該救援物資の契約額は、合計約一億円である。

一の2の②について

 テロ対策特措法において、被災民救援活動は、平成十三年九月十一日にアメリカ合衆国(以下「合衆国」という。)において発生したテロリストによる攻撃に関連し、国際連合の総会、安全保障理事会若しくは経済社会理事会が行う決議又は国際連合等が行う要請に基づき実施する旨が定められており、被災民の救援のために人道的精神に基づいて行われる活動について、これらの決議や要請があった場合には、所要の検討の上、適切に対処してまいりたい。

一の2の③について

 テロ対策特措法に基づく協力支援活動等に係る所要経費については、一の1についてで申し上げたとおりである。
 テロ対策特措法に基づき派遣される自衛隊員(以下「隊員」という。)に係る費用の見通しについては、協力支援活動等を実施する自衛隊の部隊等の規模、構成等によって変動するものであり、現時点において確たることを申し上げることは困難である。

一の3について

 協力支援活動に従事する自衛隊の部隊等のインド洋上での活動内容は、テロ対策特措法の目的を達成するためにテロ対策特措法に基づき実施する合衆国軍隊等に対する艦船用燃料の補給である。
 また、協力支援活動を外国の領域で実施する自衛隊の部隊等の派遣期間については、テロ対策特措法に基づく基本計画により本年五月十九日までとされていたところであるが、現地の情勢、協力支援活動の実績等を勘案しつつ、我が国として、引き続き、国際的なテロリズムの防止等に努める国際社会の取組に積極的かつ主体的に寄与していくことが重要であると判断したため、同月九日、当該派遣期間を同年十一月一日まで延長する旨の基本計画の変更につき閣議決定したところである。

一の4について

 現在、テロ対策特措法に基づく協力支援活動としての艦船用燃料の補給(以下「艦船用燃料の補給」という。)を駆逐艦、補給艦等の合衆国軍隊の艦船に対して実施しており、本年三月末までに、約二十八万二千キロリットル、概算額で約百五億円分の艦船用燃料を補給したところである。
 航空機用燃料については、現在までのところ、合衆国軍隊の艦船に対し提供した実績はない。

一の5について

 防衛庁においては、給油のために要する艦船用燃料を、民間企業と契約を締結して調達している。
 お尋ねの給油先艦船別等の給油実績については、これを公にすることは、給油先相手国の部隊運用の実態が明らかになり、給油先相手国との信頼関係を損なうおそれがあるため、答弁を差し控えたい。
 また、実際の艦船用燃料の補給は、これらの国からの具体的な申出を受け実施することとしており、今後の補給量等の予定を示すことは困難である。

一の6について

 昨年の秋以来、インド洋においてアル・カイダ及びタリバーンに対する海上逃亡阻止活動が行われている海域が拡大し、当該海域に艦船を派遣している国も増えており、当該活動全体の効率的な実施の必要性が増大している状況を踏まえ、当該海域における艦船用燃料の補給をより柔軟に実施するとの観点から、艦船用燃料の補給を合衆国、グレート・ブリテン及び北アイルランド連合王国(以下「英国」という。)以外の国の艦船に対しても実施していく方向で関係国と調整を行ってきた。その結果、本年二月二十八日にフランス共和国、ドイツ連邦共和国及びニュージーランドの艦船に対し、また三月十一日にイタリア共和国、オランダ王国及びスペインの艦船に対し、また同月二十八日にカナダ及びギリシャ共和国に対し、艦船用燃料の補給を実施することを決定したところである。なお、これらの国々との調整の過程においては、テロ対策特措法の趣旨や艦船用燃料の補給の実施のための条件などについて繰り返し説明を行い、各国の十分な理解を得ているが、調整の詳細については、相手国との関係もあり、答弁を差し控えたい。
 また、実際の艦船用燃料の補給は、これらの国からの具体的な申出を受け実施することとしており、今後の補給対象となる艦船の種類や補給量等を示すことは困難である。

一の7及び8について

 テロ対策特措法に基づく海上自衛隊の部隊による合衆国軍隊の艦船への給油以外の支援内容については、テロ対策特措法に基づく協力支援活動のうち別表第一に掲げる「補給」として、本年三月末までに、英国の艦船に対して約五千三百キロリットル、フランス共和国の艦船に対して約六百キロリットル、ニュージーランドの艦船に対して約二百キロリットル、イタリア共和国の艦船に対して約三百キロリットル、オランダ王国の艦船に対して約二百キロリットルの艦船用燃料の補給を実施しており、これらに要した経費は、概算額で約二億円である。
 また、テロ対策特措法に基づく協力支援活動のうち別表第一に掲げる「港湾業務」として、平成十三年十二月二十四日に合衆国軍隊の艦艇に対し海上自衛隊の曳船により入港支援を実施するとともに、平成十四年四月十五日に合衆国軍隊の艦艇に対し海上自衛隊の曳船により出港支援を実施した。さらに、協力支援活動のうち別表第一に掲げる「輸送」として、平成十四年二月二十一日に補給艦「とわだ」が合衆国軍隊の艦艇に対して日用品等の物品輸送を実施するとともに、本年二月四日から三月二十八日までの間、輸送艦「しもきた」及び護衛艦「いかづち」により、タイ王国の建設用重機等の輸送を実施した。これらに要した経費については、タイ王国の建設用重機等の輸送に要した経費は、同年三月末までに概算額で約三億円であるが、その他の「輸送」及び「港湾業務」については、その性質上、これらのみに要した経費について算出することは困難である。
 テロ対策特措法に基づく航空自衛隊の部隊による支援内容については、テロ対策特措法に基づく協力支援活動のうち別表第一に掲げる「輸送」として、合衆国軍隊からの具体的な輸送の依頼を受けて、本年三月末までに、C-130型輸送機等により、部品整備器材や衣料品等の在日米軍基地間の輸送を百四十二回実施するとともに、同様の物資等のグァム方面等への輸送を十五回実施しており、これらに要した経費は、三月末までに概算額で約十一億円である。
 また、テロ対策特措法に基づく被災民救援活動として、UNHCRの要請に基づき、平成十三年十一月二十五日から十二月三十一日までの間、掃海母艦「うらが」及び護衛艦「さわぎり」によりテント、毛布等をパキスタン・イスラム共和国のカラチ港へ輸送した。当該活動に要した経費は、約一億円である。
 これらのテロ対策特措法に基づく活動は、テロ対策特措法第一条の目的に従って、我が国が平成十三年九月十一日に合衆国において発生したテロリストによる攻撃によってもたらされている脅威の除去に努めることにより国際連合憲章の目的の達成に寄与する合衆国その他の外国の軍隊その他これに類する組織の活動に対して実施し、及び国際連合の総会、安全保障理事会若しくは経済社会理事会が行う決議又は国際連合、国際連合の総会によって設立された機関若しくは国際連合の専門機関若しくは国際移住機関が行う要請に基づいて実施するものである。この点については、合衆国軍隊等によるイラク共和国に対する武力の行使がなされた現在においても、いささかも変更はない。

二の1について

 テロ対策特措法に基づく協力支援活動等に従事する隊員が、その新たな職務に伴い支給されることとなる手当は、特別協力支援活動等手当及び航海手当があり、その経費の実績については本年三月末までに概算額で約十二億円を執行したところである。また、これら手当に係る経費については、予備費等を使用したところである。

二の2について

 テロ対策特措法に基づくイージス・システム搭載護衛艦(以下「イージス艦」という。)の派遣は、補給活動のより一層の安全性の確保、隊員の居住環境の改善等を考慮して、派遣することが適当と判断したものである。
 ここでいう「隊員の居住環境の改善」とは、隊員が最高気温約四十度にもなる厳しい環境の中で任務を遂行しているため、イージス艦の優れた居住性を活用して隊員の負担を軽減しようとするものである。
 当該措置の効果及び経費については、その性質上、具体的にお示しすることは困難である。

二の3について

 御指摘の「本来的任務」とは、何を意味するか必ずしも明らかではないが、インド洋に派遣されているイージス艦は、これまで派遣された他の護衛艦と同様、テロ対策特措法に基づき派遣されているものであり、当該イージス艦が行う情報収集は、これまで派遣された他の護衛艦と同様、テロ対策特措法に基づき、我が国の補給艦が給油を行うに際しての安全を確保するため、我が国が主体的に実施するものであって、「米国軍艦船等が独自に行っている情報収集活動と競合するので、支援活動の枠を超えるのではないか」との御指摘は当たらない。

二の4について

 協力支援活動等のため派遣される隊員については、過酷な勤務環境で長期に海外に派遣されることを考慮して、事前の健康診断を実施し、不適な者は要員から外す措置をとっている。また、派遣された隊員の健康面の配慮については、医官等を派遣艦船に乗船させ、疾病の予防の指導・相談や疾病が発生した場合に必要な診療態勢を整備しているところである。さらに、健康上の問題のため、派遣中の隊員を帰国させざるを得ない場合には、必要に応じ、他の部隊等から交替要員を派遣することとしている。
 テロ対策特措法に基づいて派遣される隊員の健康管理のための医薬品等購入経費として、本年三月末までに概算額で約二億円を執行しているところである。
 防衛庁としては、協力支援活動等に支障を来さないよう、今後とも派遣された隊員の健康管理等に万全を期してまいりたい。

二の5について

 艦船の派遣に際しては、洋上の行動における隊員の疲労や艦船の修理サイクル等を考慮して、三か月から四か月を目途として派遣部隊を交替させてきたところであるが、艦船派遣をめぐる諸情勢を的確に予測することが困難であることから、任務に就いている隊員の帰国予定について確たることを申し上げることは困難である。

三の1について

 我が国は、平成十四年一月のアフガニスタン復興支援国際会議において、向こう二年半で最大五億ドルまで、そのうち最初の一年間で最大二億五千万ドルまでの支援を表明している。お尋ねの「復興支援のために支出された経費」の定義が必ずしも明らかではないが、我が国は、本年五月四日までに政府開発援助等によって約三億九千万ドルのアフガニスタン復興支援を実施または決定している。その具体的内容及び実績は、別表のとおりである。

三の2について

 外務省以外にも、内閣府、警察庁、財務省、文部科学省、農林水産省等多くの省庁が、各種政府派遣調査団への職員参加等の手段を通じてアフガニスタン復興支援にかかわっている。
 お尋ねの「活動実績及びその経費」については、その定義が必ずしも明らかでなく様々な要素を含み得るため、省庁別にその内容を確定することは困難である。

三の3について

 お尋ねの「社会資本整備にかかわる支援」についてはその範囲が一義的に確定し得るものではないが、我が国はこれまでに、例えば、アジア開発銀行が進めるカンダハル・スピンボルダック間幹線道路整備計画へ千五百万ドルを拠出したほか、合衆国及びサウジアラビア王国と共同で進めるカブール・カンダハル間幹線道路整備計画に五千万ドルを拠出することを表明し、既にカンダハル市中心部から約二十キロメートル地点まで完工している。

三の4について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかでないが、我が国は、国際連合児童基金を通じて、これまでに「Back to School」プログラムのために五百万ドルを拠出したほか、小児感染症予防計画のために約千百十五万ドルを拠出する等様々なアフガニスタン復興支援を実施してきている。
 今後の支援経費の増額に関しては、様々な事態の推移を注視しつつ総合的に勘案していく必要があり、現時点で確たることを申し上げることは困難である。
 なお、アフガニスタンについては、国際連合の安全保障理事会等で国際連合平和維持活動の決議がなされていないことから、国際連合平和維持活動は実施されていない。

三の5について

 我が国は、アフガニスタン復興の取組に必要な安全を確保するために、地雷除去を始めとする地雷対策支援に力を入れてきている。具体的には、我が国は、平成十四年一月、地雷除去のために緊急に必要な機材の整備、地雷除去事業への支援、地雷による犠牲者への支援等のために国際連合開発計画等の国際連合の機関等に総額約一千九百二十二万ドルを拠出したほか、いわゆる「緒方イニシアティブ」の一環として、同年十月には、地雷除去事業への支援、地雷による犠牲者への支援及び地雷啓もう活動への支援のために国際連合開発計画に総額約四百八十六万ドルを、本年三月には、国際連合地雷対策サービス部に総額約三百七十八万ドルを拠出する等の支援を行ってきている。
 我が国は、今後とも同国における地雷除去を促進するための取組を行っていくこととしている。

三の6について

 女性の地位向上は、アフガニスタン復興支援国際会議で我が国が表明したアフガニスタン復興支援の優先分野の一つであり、これまでに専門家派遣、研修員受入れ、内閣官房長官主催「アフガニスタンの女性支援に関する懇談会」の開催等様々な手段を通じて、積極的に取り組んできている。
 また、我が国は、女性の地位向上のために国際連合の各種委員会等国際場裡においても様々な取組を行っている。

三の7について

 我が国は、元兵士の武装解除、動員解除及び社会復帰(以下「DDR」という。)分野における支援の主導国として国際連合アフガニスタン支援ミッション(以下「UNAMA」という。)とともに、アフガニスタンにおけるDDRに取り組んできている。具体的にはこれまでに、我が国がUNAMAと協力して策定した、DDRを支援する「平和のためのパートナーシップ計画」の推進のため三千五百万ドルを拠出したほか、本年二月にアフガニスタン「平和の定着」東京会議を開催してDDR分野への国際社会の支援を働きかける等様々な取組を行ってきたところである。
 今後のアフガニスタンの国内情勢について確たることを申し上げることは難しいが、我が国としては、引き続きこのような取組を続けていくこととしている。

三の8について

 我が国は、アフガニスタン復興支援国際会議において向こう二年半で最大五億ドルまでの支援を行う旨表明しており、今後とも、和平プロセス、治安、人道・復興支援を軸に、アフガニスタンにおける平和の定着のために、迅速で目に見える支援を行っていく所存である。

別表 1/5

別表 2/5

別表 3/5

別表 4/5

別表 5/5