質問主意書

第156回国会(常会)

答弁書


答弁書第一二号

内閣参質一五六第一二号
  平成十五年四月八日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 倉田 寛之 殿

参議院議員櫻井充君提出電磁波問題に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員櫻井充君提出電磁波問題に関する質問に対する答弁書

一及び二について

 国際がん研究機関(以下「IARC」という。)においては、超低周波磁界の人体に対する発がん性について、疫学調査の結果に基づく限定的な証拠があること、動物実験については十分な証拠がないことなどを踏まえ、「ヒトに対して発がん性があるかもしれない」ことを示す「2B」に分類したものと承知しているが、現在、世界保健機関(以下「WHO」という。)において、IARCが行った発がん性の評価等を踏まえ、居住環境における超低周波電磁界へのばく露に係る住民の健康リスク評価に関する検討が行われているところであり、政府としては、当該検討の状況を注視してまいりたい。

三について

 超低周波磁界を含め生活環境において人体に好ましくない影響を及ぼす可能性がある物質等を評価する際には、疫学調査、動物実験、細胞実験等の結果を踏まえ、総合的な検討が行われることが必要であると認識している。

四について

 お尋ねの研究については、平成十四年度に、文部科学省の科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会研究評価部会(以下「部会」という。)において、目標の達成度、研究成果の価値等についての事後評価が行われ、比較的高い強度の超低周波電磁界に係る対象者の割合が低いことなどを踏まえて考えれば全体の症例数が少な過ぎること、他の交絡要因の影響の除去が適切であるかどうか不明であること、解析対象者の決定について選択バイアスが発生する可能性に関し十分な説明がなされていないことなどの理由から、「本研究の結果が一般化できるとは判断できない」と評価されたところである。政府としては、部会における評価の手続等に問題はなく、評価は適切に行われたものと考えている。
 なお、御指摘の「研究成果の概要」は、研究実施者が自らの研究の内容を説明するために作成した文書を要約したものであり、部会が当該研究について評価を実施した結果を取りまとめた「研究の評価」とは性格を異にするものである。

五について

 一及び二についてで述べたとおり、現在、WHOにおいて、居住環境における超低周波電磁界へのばく露に係る健康リスク評価について検討が行われているところであり、その結論が出ていない現時点において、〇・四マイクロテスラ以上の磁束密度となる箇所に着目して調査を実施することは考えていない。

六について

 政府としては、パンフレットの配布、シンポジウムの開催等を通じた超低周波電磁界に係る研究の動向等の関連情報の提供、超低周波電磁界へのばく露を低減するための技術に関する調査、超低周波磁界の健康に対する影響に関する研究等WHOが「ファクトシートN-263」において政府が実施し得る対策として例示している「予防対策」に従来から取り組んできている。

七について

 無線通信に用いられる電波については、それが人体に好ましくない影響を与えないよう、電波の電界強度、磁界強度及び電力束密度(以下「電波の強度」という。)の基準が電波法施行規則(昭和二十五年電波監理委員会規則第十四号)第二十一条の三及び別表第二号の二の二で定められており、また、携帯電話端末等の一般環境における局所比吸収率(以下「局所SAR」という。)の基準が無線設備規則(昭和二十五年電波監理委員会規則第十八号)第十四条の二で定められているが、これらの基準は、科学的根拠に基づく適切なものと考えている。このため、当該基準を満たす携帯電話用基地局又は携帯電話端末については、それらから発射される電波にばく露される者の年齢にかかわらず、人体に好ましくない影響を与えることはないと考えており、現時点において、更なる規制を行う必要はないものと考える。
 なお、政府としては、従来、無線通信に用いられる電波の安全性に関する研究等を実施してきたところであるが、今後とも、これを継続し、我が国の電波の強度の基準及び局所SARの基準の根拠となる科学的データの信頼性向上を図るとともに、研究成果を正確に公表することにより、安心して安全に電波を利用できる環境の整備を推進していく所存である。

八について

 我が国において使用される携帯電話端末は、七についてで述べたとおり、無線設備規則第十四条の二に規定する局所SARの基準に適合したものでなければならず、当該基準に適合する携帯電話端末であればそれが人体に好ましくない影響を及ぼすことはないと考えられることから、政府がそのような携帯電話端末の局所SARの数値を周知するよう指導し、又は特定の携帯電話端末の推奨等を行う必要はないものと考える。

九について

 お尋ねの送電線及び携帯電話中継基地局の建設をめぐる紛争については、電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)、電波法(昭和二十五年法律第百三十一号)等の関係法令上、経済産業大臣又は総務大臣から事業者に報告を求める事項には当たらず、承知していない。

十及び十一について

 お尋ねの送電線、携帯電話中継基地局等の設置に当たっては、電気事業法、電波法等の関係法令に基づき、これらの設備を設置する者(以下「設置者」という。)に対し、公共の安全を確保するために必要なものとして規定された技術基準への適合を義務付けることなどにより安全を確保しており、安全の観点から、周辺住民に対する事前説明を義務付ける必要はないと考えている。
 また、設置者は、送電線等の設置の際に周辺住民との間で問題が生じ得ると判断した場合には、地方公共団体や住民との間で事前の話合いを行っていると承知しており、必要に応じて「景観や住民感情」への配慮にも対処されるものと認識している。

十二について

 お尋ねの「非熱作用」に関する研究については、従前から、がんの促進性等超低周波磁界の影響に係る研究、熱作用が生じない条件における無線通信に用いられる電波へのばく露に係る研究等を実施しているところである。

十三及び十四について

 お尋ねの電磁波に係る予防原則等については、WHOの国際電磁界プロジェクトにおいて検討が進められており、同プロジェクトにおいて十分な検討が行われることが重要であると考えている。このため、引き続き、同プロジェクトに対する研究成果の提供等の協力に努めてまいりたい。また、政府としては、従前から、熱作用以外の作用によるものも含む電磁波の人体に対する影響等について、国内外の情報の収集、各種調査研究、これらの成果に係る情報の提供等に取り組んできているところであり、引き続きその着実な実施に努めてまいりたい。