質問主意書

第156回国会(常会)

答弁書


答弁書第七号

内閣参質一五六第七号
  平成十五年四月十八日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 倉田 寛之 殿

参議院議員中村敦夫君提出霞ヶ浦導水事業に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員中村敦夫君提出霞ヶ浦導水事業に関する質問に対する答弁書

一の1について

 茨城県知事から国土交通省関東地方整備局長あてに平成十三年六月十九日付けで提出された「霞ヶ浦導水事業計画の変更等について(要望)」は、河川法(昭和三十九年法律第百六十七号)に基づくものではないが、これを踏まえ、霞ヶ浦導水事業(以下「本件事業」という。)の事業主体である国土交通大臣が本件事業の内容の見直しを検討した結果、平成十四年十月三十一日付けで霞ヶ浦導水事業計画(本件事業に係る河川法施行令(昭和四十年政令第十四号)第三十八条の三第一項に掲げる事項を記載した計画をいう。以下単に「事業計画」という。)の変更(以下「第三回変更」という。)を行ったものであり、その際には、同条第二項に基づき、関係行政機関の長への協議等の必要な手続を行っている。

一の2について

 第三回変更に当たっては、茨城県以外の特別水利使用者に対し、取水量の削減の要望がないことを確認しており、現時点においては、お尋ねのような場合は生じないものと認識している。
 なお、今後、特別水利使用者から取水量の削減の要望があった場合には、必要に応じて、事業主体である国土交通大臣が事業内容の見直しを検討することとなる。

一の3について

 第三回変更に当たって、河川法施行令第三十八条の三第二項に基づき国土交通大臣が特別水利使用者の同意を得るために同条第一項に基づき明らかにした事項は、別紙一のとおりである。

一の4について

 第三回変更に当たっては、国土交通大臣から関係行政機関の長に対し、河川法施行令第三十八条の三第二項に基づき別紙一の内容を協議するとともに、同令第三十八条の四ただし書に基づき特別水利使用者負担金の額の算出方法について別紙二の内容を協議しており、それぞれ異議はない旨の回答を得ている。

一の5について

 第三回変更前の事業計画における総事業費の概算額は約千九百億円であり、その内訳は、工事費約千四百四十二億円、測量及び試験費約二百二十二億円、用地費及び補償費約八十五億円、船舶及び機械器具費約四十八億円、営繕費約四億円並びに事務費等約九十九億円となっている。
 また、第三回変更後の事業計画における総事業費の概算額は約千九百億円であり、その内訳は、工事費約千四百三十三億円、測量及び試験費約二百三十一億円、用地費及び補償費約八十三億円、船舶及び機械器具費約四十九億円、営繕費約四億円並びに事務費等約九十九億円となっている。

一の6について

 平成十三年九月二十七日付けの事業計画の変更(以下「第二回変更」という。)において、完成予定を平成十二年度から平成二十二年度に延長している。これは、第一導水路の区分地上権の設定に関する多数の関係者からの理解を得るために当初の予想を超える時間を要することとなったことによるものである。
 また、お尋ねの各工区の進捗状況及び工事費については、別紙三のとおりである。

一の7について

 第三回変更後の事業計画における事業費の特別水利使用者それぞれの負担割合は、別紙一の(参考)五(二)ロのとおりである。また、お尋ねの「算出根拠及び算出方法」は、右の負担割合の算出方法についてのお尋ねであると解されるが、その内容は、別紙二のとおりである。

一の8について

 お尋ねの事項については、別紙四のとおりである。

一の9について

 お尋ねの事項については、別紙五のとおりである。

二の1について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、本件事業は、河川法第八条に規定する河川工事として行っているところ、本件事業に要する費用については、同法第五十九条、第六十条第一項及び第六十三条の規定により、国、茨城県及び千葉県が負担するとともに、本件事業は、同法第七十条の二第一項に規定する河川工事に該当するため、その一部を特別水利使用者が受けることとなると認められる利益の限度において当該特別水利使用者にも負担させているものである。この場合、霞ケ浦等の水質浄化は、特別水利使用者が受けることとなると認められる利益に含まれるものでないため、お尋ねの「水質改善のための費用」については特別水利使用者は負担していない。

二の2について

 本件事業は、一年間で霞ケ浦(西浦)の容量の四分の三に相当する水量を那珂川及び利根川から導水し、湖水を希釈するとともに湖水の滞留時間を短縮するものであり、下水道整備等の水質保全事業や規制等の措置とあいまって、霞ケ浦の水質浄化に効果を発揮するものである。平成十四年三月に茨城県、栃木県及び千葉県が策定した平成十三年度から平成十七年度までを計画期間とする「霞ヶ浦に係る湖沼水質保全計画」(以下「湖沼水質保全計画」という。)において目標とされている平成十七年度時点の霞ケ浦(西浦)の水質及び平成三年から平成十二年までにおける利根川、那珂川等の流量を用いて、本件事業による水質浄化効果を試算すると、霞ケ浦(西浦)において化学的酸素要求量(以下「COD」という。)の平均値を一リットル当たり約〇・八ミリグラム低下させると予測している。
 水質浄化による費用対効果については、いくつかの算出手法が提案されているのが現状であるが、平成十年十一月三十日に開催された関東地方建設局事業評価監視委員会において建設省関東地方建設局(当時)が提示した試算を基に、本件事業による霞ケ浦の水質浄化に関する費用便益比を計算すると、約一・一となる。
 なお、同委員会においても費用対効果の分析手法については更に研究が必要との指摘もあり、今後とも、便益の算出手法の検討を行ってまいりたい。

二の3について

 本件事業の完了後においても、継続的な水質調査を行うとともに、導水を行わない場合を仮定した水質浄化効果の試算を行うこと等により、本件事業による水質浄化効果の分析を実施する予定である。なお、それらの実施に当たっては、学識経験者等の意見を聴く予定である。

二の4について

 第三回変更後の事業計画において、那珂川から霞ケ浦への導水量は、最大毎秒三十五立方メートルから最大毎秒十五立方メートルへと削減されたが、年間の導水量の合計は第三回変更前と同程度とする計画であり、第三回変更前と同程度の水質浄化効果があるものと認識している。

二の5について

 本件事業の水質浄化効果の予測におけるCODの計算では、一般に植物プランクトンの増減と相関関係が認められるクロロフィルaを変数とする基礎式を用いて、植物プランクトンの増減に伴う物質生産の収支を計算しており、その結果、二の4についてで述べたとおり、第三回変更後においても変更前と同程度の水質浄化効果があることを確認しているものである。
 なお、植物プランクトンの種の構成の変化及びそれに伴う水質の変化の予測は、現在の知見では非常に困難であると認識している。

二の6について

 本件事業による水質浄化効果は、霞ケ浦に流入する河川水や下水道からの排水に比べて水質の良好な那珂川及び利根川の水を流入させることにより、湖水を直接的に希釈するとともに、湖内での藻類の増殖に必要な栄養塩の希釈により藻類の増殖を抑えることによって得られるものと認識しており、二の2についてで述べたとおり、霞ケ浦(西浦)におけるCODの平均値を一リットル当たり約〇・八ミリグラム低下させると予測している。
 なお、本件事業の水質浄化効果の予測におけるCODの計算では、無機態窒素及び無機態リンを変数とする基礎式を用いて、窒素濃度及びリン濃度の変化による物質生産の収支を計算している。

二の7について

 二の5についてで述べたとおり、植物プランクトンの種の構成の変化及びそれに伴う水質の変化の予測は、現在の知見では非常に困難であると認識しているが、一般に植物プランクトンの増減と相関関係が認められるクロロフィルaを変数とする基礎式を用いた計算の結果から、水質浄化については所要の効果が得られるものと認識している。

二の8について

 二の3についてで述べたとおり、本件事業の完了後においても、継続的な水質調査及び水質浄化効果の分析を実施する予定であり、それらの結果に応じて適切に対応してまいりたい。

二の9について

 本件事業は、霞ケ浦の水質浄化のほか、那珂川、利根川等の流水の正常な機能の維持及び増進並びに特別水利使用者に対する都市用水の供給の確保のために必要な事業であり、「国土交通省政策評価基本計画」(平成十四年三月二十二日国土交通省議決定)に基づく再評価を行いつつ、早期に効果が発現できるよう着実に事業を進めてまいりたい。
 なお、二の7についてで述べたとおり、植物プランクトンの種の構成の変化及びそれに伴う水質の変化の予測は、現在の知見では非常に困難であると認識しているが、一般に植物プランクトンの増減と相関関係が認められるクロロフィルaを変数とする基礎式を用いた計算の結果から、水質浄化については所要の効果が得られるものと認識している。

三の1について

 お尋ねの「那珂川の河川水を霞ヶ浦へ放流する場合」の「湖底堆積物の巻き上げ」については、放流口付近の浚渫や放流流速を小さくする等の対策によって、「湖内の水質が大きく悪化する」ことがないようにすることが可能であると認識している。
 また、その費用については、右に述べたような対策を詳細に検討した上で確定していくこととしている。

三の2について

 霞ケ浦の底泥浚渫事業については、昭和五十年度に事業を開始し、計画浚渫量は約八百万立方メートル、全体事業費は約千三百億円である。平成十四年度までに約六百五万立方メートルの浚渫を実施してきており、今後約百九十五万立方メートルの浚渫を予定している。
 また、底泥浚渫は、栄養塩や有機物を多く含有している湖底の表層部付近の底泥を湖内から除去することにより、底泥からの栄養塩等の溶出による負荷を削減するものであるところ、湖沼水質保全計画を基に霞ケ浦の底泥浚渫事業の水質浄化効果を試算すると、平成十三年度から平成十七年度までの間に土浦沖等の栄養塩等の濃度が高い底泥表層部分を約二百六十六万立方メートル浚渫することによって、底泥からの栄養塩等の溶出量が減少することとなり、本事業を行わない場合に比べ平成十七年度時点で霞ケ浦(西浦)のCODの平均値を一リットル当たり約〇・二ミリグラム低下させると予測している。

四について

 霞ケ浦から利根川及び那珂川への送水による利根川及び那珂川の水質への影響を低減するため、水質浄化対策の実施を予定しているが、現在、実験等により浄化手法、規模等の詳細な検討を行っているところであり、今後、対策の内容、費用等を確定していくこととしている。

五の1について

 生物の多様性に関する条約(平成五年条約第九号。以下「生物多様性条約」という。)は、国内における本件事業のような事業活動を直接規制するものではなく、本件事業が生物多様性条約に抵触するとは考えていない。
 なお、本件事業の実施が生物の多様性に著しい悪影響を及ぼすおそれがあるとは考えていないが、その実施に当たっては、事業実施に伴う水質変化の予測や環境調査を継続して実施しており、今後とも、必要に応じて水質浄化対策等の保全対策を講ずることとしているとともに、工事の実施に当たっても、環境に十分配慮しながら事業を進めているところである。

五の2について

 茨城県及び千葉県が水産資源の保護培養、漁業取締りその他漁業調整を図ること等を目的に制定している茨城県内水面漁業調整規則(昭和四十年茨城県規則第十五号)、茨城県霞ケ浦北浦海区漁業調整規則(昭和四十三年茨城県規則第四十九号)及び千葉県内水面漁業調整規則(昭和四十一年千葉県規則第七号)における外来魚のブラックバス、ブルーギル等の移植禁止規定は、密放流による外来魚の生息域の拡大を防止するためのものであるところ、本件事業は、霞ケ浦の水質浄化のほか、那珂川、利根川等の流水の正常な機能の維持及び増進並びに特別水利使用者に対する都市用水の供給の確保のために必要な事業として行われている河川法第八条の河川工事であって、アユ等の迷入防止対策を実施するなどこれらの規則が禁止する外来魚の放流を目的とするものではないため、これらの規則に抵触するものではないと認識している。

五の3について

 我が国では、環境影響評価法(平成九年法律第八十一号)に基づく環境影響評価により生物多様性条約第十四条第一項で求められている措置を実施しているところであるが、本件事業は、同法の環境影響評価の対象となる規模が大きく環境影響の程度が著しいものとなるおそれがある等の事業に該当しないことから、同法に基づく環境影響評価は行っていない。
 しかしながら、五の1についてで述べたとおり、本件事業の実施に当たっては、事業実施に伴う水質変化の予測や環境調査を継続して実施しており、今後とも、必要に応じて水質浄化対策等の保全対策を講ずることとしているとともに、工事の実施に当たっても、環境に十分配慮しながら事業を進めているところである。

五の4について

 本件事業においては、那珂川下流部の流水の正常な機能の維持に必要な流量を十分に確保できる場合のみ那珂川から霞ケ浦への導水を行うとともに、那珂川下流部の流量が低下する場合には、霞ケ浦からの送水により流水の正常な機能の維持に必要な流量を確保するものである。また、本件事業による那珂川河口部の水温、溶存酸素量、生物化学的酸素要求量等の変化の予測によると、本件事業の実施が環境に及ぼす影響は極めて小さいことから、お尋ねの「那珂川河口沿岸の浅海域」における環境に及ぼす影響及び「水産業及び海水浴場に対する影響」も極めて小さいものと認識している。

五の5について

 五の4についてで述べたとおり、那珂川河口部において、本件事業の実施が環境に及ぼす影響は極めて小さいことから、お尋ねの「涸沼の水質、生態系及び水産業に与える影響」も極めて小さいものと認識している。

六の1について

 お尋ねの「本導水路」は、本件事業の第二導水路(以下「利根導水路」という。)としての機能だけでなく、水資源開発公団が管理する霞ケ浦開発施設の利根川連絡水路(以下「利根川連絡水路」という。)としての機能も併せ持つ共同施設であるところ、お尋ねは、利根導水路としての「二回目の試験通水及び本通水」のことと解されるが、「二回目の試験通水」については、本件事業の完了までに行われる予定であり、また、「本通水」については、本件事業の完了後に行われるものである。
 なお、「本導水路」は、利根川連絡水路としては既に運用中であり、利根川連絡水路としての「本通水」は、霞ケ浦開発施設に関する施設管理規程(平成八年三月二十九日建設大臣認可)に定めるところにより、必要に応じて行われるものである。

六の2について

 六の1についてで述べたとおり、利根導水路は、利根川連絡水路としては既に運用中であり、「本通水」については、霞ケ浦開発施設に関する施設管理規程に定めるところにより、水利使用者への用水の供給を行う必要が生じた場合に行われるものであるが、現在までのところ、その必要が生じていないため、行っていない。

六の3について

 お尋ねの水利権に係る東京都及び千葉県内の水利使用者に対しては、平成七年度末に利根川連絡水路も含めた霞ケ浦開発事業が完成したことにより、利根川連絡水路を利用した送水が可能となり、利根川の適正な利用及び流水の正常な機能の維持に支障を与えることなく安定的に取水を行えるものであることから、河川法第二十三条の流水の占用の許可を与えたものである。

別紙一 1/5

別紙一 2/5

別紙一 3/5

別紙一 4/5

別紙一 5/5

別紙二

別紙三

別紙四 1/12

別紙四 2/12

別紙四 3/12

別紙四 4/12

別紙四 5/12

別紙四 6/12

別紙四 7/12

別紙四 8/12

別紙四 9/12

別紙四 10/12

別紙四 11/12

別紙四 12/12

別紙五