質問主意書

第156回国会(常会)

答弁書


答弁書第六号

内閣参質一五六第六号
  平成十五年三月二十五日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 倉田 寛之 殿

参議院議員八田ひろ子君提出労働現場(製造業)における熱中症対策の改善に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員八田ひろ子君提出労働現場(製造業)における熱中症対策の改善に関する質問に対する答弁書

一について

 労働安全衛生規則(昭和四十七年労働省令第三十二号)第六百七条に基づき、事業者は、暑熱の屋内作業場について、半月以内ごとに一回、定期に、当該屋内作業場における気温、湿度及びふく射熱を測定するとともに、測定結果等を記録して、三年間保存しなければならないこととされているところであり、これらについて改めて調査を行い、開示することは考えていない。
 なお、熱中症による労働災害(労働者の休業の日数が四日未満のものを除く。)が発生した場合には、事業者は、同規則第九十七条第一項の規定により労働基準監督署長に報告すべきこととされており、厚生労働省においては、報告された災害について調査等を実施するとともに、全国における熱中症による死亡災害発生状況を毎年取りまとめ、これの周知に努めているところである。

二について

 熱中症の発生については、休憩時間の取得の状況、塩及び飲料水の補給の状況、通風の状況等といった温湿度以外の要因も大きいと考えている。したがって、熱中症となるおそれのある温湿度の設定については、これらの要因を勘案するとともに、温湿度に対する順化の程度や作業に伴う身体内における発熱量等といった個人差があるものについて勘案する必要があることから、適切に設定することは困難であると考えていること及び熱中症の予防対策としては、熱中症の発生要因全般について適切な措置を講ずるとともに、作業中の労働者の健康状態の確認等を適切に行うことが効果的であると考えていることから、熱中症の予防対策として法令において温湿度の基準値を定めることは考えていない。
 なお、このような考えに基づき、労働安全衛生規則において、暑熱の屋内作業場で有害のおそれがあるものについては冷房等適当な温湿度調節の措置を講ずるとともに、著しく暑熱の作業場においては作業場外に休憩の設備を設けること、多量の発汗を伴う作業場においては塩及び飲料水を備えること等を事業者に義務付け、また、「熱中症の予防について」(平成八年五月二十一日付け基発第三百二十九号労働省労働基準局長通達。以下「通達」という。)において、シャワー等の設備等を設けること、作業休止時間や休憩時間を適切に確保すること、熱中症の予防方法等に関する労働衛生教育を実施すること、作業開始前及び作業中に労働者の健康状態を確認すること等の対策を講ずべきことを示しているところであり、都道府県労働局及び労働基準監督署においては、これらにのっとった適切な措置が講じられるよう事業者等に指導しているところである。

三について

 二についてで述べたとおり、労働安全衛生規則において、事業者に対し冷房等適当な温湿度調節の措置を講ずること等を義務付けるとともに、通達において、熱中症の予防のために事業者が講ずべき対策を示しているところであり、これらの措置の具体的な実施方法については、事業者が作業場の状況を勘案して検討すべきものであると考える。
 なお、厚生労働省においては、労働者の安全と健康を確保する観点から、職業性疾病等の予防等に関する研究を促進しているところであり、今後とも、必要に応じて、これらの分野に関する調査研究の促進を図ることとしている。

四について

 都道府県労働局及び労働基準監督署においては、熱中症を含む労働災害を防止するため、労働安全衛生関係法令等に基づき、必要に応じて事業者等に対し指導を行っているところであるが、お尋ねの内容については、私企業の正当な利益を害するおそれがあるため、答弁を差し控えたい。