質問主意書

第156回国会(常会)

答弁書


答弁書第五号

内閣参質一五六第五号
  平成十五年三月十四日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 倉田 寛之 殿

参議院議員中村敦夫君提出別寒辺牛川のイトウと砂防ダムに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員中村敦夫君提出別寒辺牛川のイトウと砂防ダムに関する質問に対する答弁書

一について

 イトウは、環境省が平成十一年二月十八日に作成した汽水・淡水魚類のレッドリストにおいて、近い将来における野生での絶滅の危険性が高い種として絶滅危惧ⅠB類に掲載されており、保護のため十分な配慮がなされるべき種であると認識している。

二について

 札幌防衛施設局においては、別海矢臼別大演習場(以下「本演習場」という。)における自衛隊及び我が国に駐留するアメリカ合衆国軍隊(以下「合衆国軍隊」という。)の訓練の実施によって本演習場内の土地の形質が変化する等により、降雨又は融雪に伴い別寒辺牛川支流に土砂が流出しやすくなり、当該土砂の流出により生ずる障害を防止し、又は軽減するため、北海道厚岸町からの要望を踏まえ、ダムの建設の事業(以下「本件事業」という。)を計画したところである。本件事業については、別寒辺牛川の管理を行い、その周辺地域の状況に詳しい厚岸町に委託している。
 本件事業は、環境影響評価法(平成九年法律第八十一号)及び北海道環境影響評価条例(平成十年北海道条例第四十二号)に定める環境影響評価の対象事業に該当しないため、これらに基づく環境影響評価を行っていない。しかしながら、厚岸町の意見を踏まえ、本件事業の実施に伴う環境への影響を最小限にするとの観点から本件事業の対象地域周辺の動植物の生息等に及ぼす影響について調査を行った結果、イトウを含む魚類が別寒辺牛川支流に生息していることが確認されたことから、これらの繁殖及び生息にできる限り影響を及ぼすことのない方策について検討を行い、これに有効と考えられる附帯施設として魚道を設置したところである。
 なお、当該魚道におけるイトウの実際の遡上状況等について、今後、補完的に調査を行うとともに、その繁殖及び生息について、有識者から意見の聴取等を行うこととしている。
 また、厚岸湖・別寒辺牛湿原周辺の河川の河床低下を招く等の御指摘については、その内容につき十分な知見が得られていないが、必要があれば関係機関と調整等を行ってまいりたい。

三について

 本件事業については、二についてで述べたとおり、本演習場内から別寒辺牛川支流に流出する土砂により生ずる障害を防止し、又は軽減することを目的として実施するものであって、汚濁対策としては厚岸湖及び厚岸湾の漁業資源確保等に資するものとして、厚岸町からの要望を踏まえ行っているものである。

四について

 本件事業については、二についてで述べたとおり、本演習場における自衛隊及び合衆国軍隊の訓練の実施によって本演習場内の土地の形質が変化する等により、降雨又は融雪に伴い別寒辺牛川支流に土砂が流出しやすくなり、当該土砂の流出により生ずる障害を防止し、又は軽減するために行っているものである。
 なお、本演習場においては、合衆国軍隊による沖縄県道一〇四号線越え実弾射撃訓練を本土に移転して行う訓練が開始される以前からも、本件事業と同様の事業を行ってきたところである。

五について

 お尋ねの「原因対策」の意味が必ずしも明らかではないが、土砂流出の発生場所である弾着区域等となっている箇所においては、土砂の流出防止対策を講ずることは困難であることから、本件事業を実施しているものである。

六について

 札幌防衛施設局は、別寒辺牛川が河川法(昭和三十九年法律第百六十七号)の適用を受けない河川であるところ、厚岸町普通河川管理条例(平成十二年厚岸町条例第二十二号)に基づき河川の占用許可を受け、本件事業を行っているところである。

七について

 本件事業については、これまで述べてきたように、本演習場内から別寒辺牛川支流に流出する土砂により生ずる障害を防止し、又は軽減することを目的として実施するものであって、汚濁対策としては厚岸湖及び厚岸湾の漁業資源確保等に資するものとして、厚岸町からの要望を踏まえ行っているものであり、これを中止し、既に完成しているダムの堤体を撤去する考えはない。