質問主意書

第156回国会(常会)

質問主意書


質問第一六号

「難病対策見直し」に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十五年三月十九日

大脇 雅子   


       参議院議長 倉田 寛之 殿



   「難病対策見直し」に関する質問主意書

 日本の難病対策は、昭和四七年に策定された厚生省(当時)の「難病対策要綱」の下、進められてきた。対象となる疾病の範囲は、「①原因不明、治療方法未確立であり、かつ、後遺症を残すおそれが少なくない疾病」、「②経過が慢性にわたり、単に経済的な問題のみならず介護等に著しく人手を要するために家族の負担が重く、また精神的にも負担の大きい疾病」の二項目に整理して、難病を医学的・社会的側面からとらえて対策を講じてきたことは一定の評価に値する。しかし、平成一五年度予算における難病対策は、昨年八月に出された厚生科学審議会疾病対策部会難病対策委員会の中間報告を踏まえて、各種見直しがされようとしている。厳しい経済情勢の中で行われる今回の見直しは、「難病患者といえども『痛み』に耐えてもらう」という政府の姿勢が貫かれており、これにより、薬を服用しながら辛うじて就労を続け、日々難病と闘っておられる多くの患者の方々は、更なる窮地に追いやられることになる。厳しい時代にこそ、患者の背中を暖かく後押しする支援策を強く望む観点から、以下、質問する。

一、医療費負担に対する支援制度見直しについて

 現行の医療費負担への支援制度は、日常生活に著しい支障のある重症患者及びスモン、クロイツフェルト・ヤコブ病、劇症肝炎、重症急性膵炎患者については、自己負担分の全額公費負担が実施され、それ以外の患者に対しては、入院患者の一医療機関につき月額一四〇〇〇円限度制、入院以外は薬剤の一部負担金を含め、医療機関ごとに月額二〇〇〇円限度制が敷かれ、難病患者の治療促進に大きく貢献してきていた。しかし、今回の見直しでは、「低所得者及び重症者については、全額公費負担」とする一方、「日常生活に特段の支障がなく就労等も可能な軽症の期間にある者については、一般医療の扱いとする」との方向が打ち出され、自己負担分への支援が打ち切られ、患者の所得に応じた医療費の自己負担が導入されることになり、難病患者の不安を呼び起こしている。
1 軽症になった者が一般医療の扱いにされる場合は、どのような手続となるか。具体的にどの機関がどのような基準に基づき判断するのか。
2 一般医療扱いとされた場合の医療費自己負担額は、通常の健康保険制度に沿って、三割負担となるのか、あるいは、身体障害者に対する更生医療給付に準じて算定されるのか。難病患者の治療法及び治療薬等は医療保険適応外のものも多い上、薬代も高額となっており、患者の負担が過度に重くなることが考えられる。その点に対する配慮は具体的にどのように考えているか。
3 更生医療給付の場合は、世帯全体の所得税額に対する徴収額が決められているが、難病の場合は、所得税は世帯全体か、本人のみか。
4 難病登録患者に付与されている「特定疾患医療受給者証」は、一般医療扱いになった場合、どのような扱いになるか。また、いったん、軽症と認定されて「受給者証」を返却した人が、再び症状が重くなり「受給者証」を再発行してもらう場合は、再申請の手続等においてタイムラグが生じないよう最大限の配慮をするべきと思うが、政府の見解を明らかにされたい。
5 現在、就労している難病患者が退職した場合、更生医療給付に準じた徴収金額であっても、前年度の所得税額による算出額であると、家計への負担は重くなる。負担軽減のための移行措置を考える必要があると思うが、政府の見解を明らかにされたい。

二、治療研究事業の対象疾患選定について

 また、今回の見直しでは、他に日常生活用具給付品目の拡充(九品目→一七品目)、特定疾患治療事業への追加指定の検討など拡充策も含まれるが、その反面、対象外となる疾病の検討も含まれる。現行の治療研究事業の対象として四五疾患が選定されているが、「研究の進捗に伴い、原因の解明や有効な治療法が開発されている」疾患については、治療研究事業の対象とする必要性が相対的に大きく減ったものとして評価をし直し、対象外とする方向も打ち出された。中間報告では「患者数が五万人を上回った疾患や…治療成績等の面で大きく状況が変化したと考えられる疾患については、…特定疾患として取り扱うことが適当かどうか定期的に評価を行うことについて検討する必要がある」とされ、評価については、現在、厚生労働省の研究班が作業中とのことだが、
1 四五疾患のうち対象外として想定されているのは、具体的にどの病気で、いつ頃確定されるか。
2 評価検討の結果、対象外となる疾患が生じた場合は、患者団体等への説明の機会の確保及び患者の納得が必要だと思うが、政府の見解を明らかにされたい。

三、難病相談支援センターの整備について

 さらに、今回の見直しで新たに難病相談支援センター(以下「センター」という。)が、都道府県に設置される。センターは、各自治体の努力によって既に設置されているところもあり、国の事業として新規に取り組まれることで、各都道府県の難病への理解、支援策の拡充、情報へのアクセス等が均等化されていくメリットが考えられる。厚生労働省はおおむね三年を目標に、センターの設置を達成しようとしているが、全国にあまねくセンターができ、相談員がいるということになれば、現在五〇万人を超える難病患者支援の大切な糸口となる。平成一五年度では、具体的に何か所の設置を考えているか。

四、難病対策について

 難病対策の重要な柱である調査研究事業においては、国際的な連携を強化して早急な治療法の確立を実現するとともに、それぞれの疾病について、どこまで解明が進み、どこまで解明できていないかなどの説明と評価を、患者及び国民に対して示すべきだと思うが、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。