質問主意書

第156回国会(常会)

質問主意書


質問第一〇号

ごみ焼却炉の解体に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十五年二月二十七日

中村 敦夫   


       参議院議長 倉田 寛之 殿



   ごみ焼却炉の解体に関する質問主意書

 昨年十二月一日、ダイオキシン類対策特別措置法により、既設焼却炉に対するダイオキシンの排ガス規制値が八〇ng‐TEQ/m3Nから一ng‐TEQ/m3Nへと改定された。これにより、一般廃棄物焼却施設及び産業廃棄物焼却施設(以下「ごみ焼却炉」という。)の多くが廃炉となる。
 しかし、廃炉後の解体手法によっては、新たな環境被害の起こることが危惧されている。
 したがって、次の事項について質問する。なお、同様の文言が並ぶ場合でも、各項目ごとに平易な文章で答弁されたい。

一、ごみ焼却炉について、二〇〇〇年、二〇〇一年、二〇〇二年の各年における全国の廃炉数を、一般廃棄物用と産業廃棄物用とに分け、都道府県ごとに示されたい。また、そのうち解体された炉数についてもそれぞれ示されたい。

二、ごみ焼却炉の解体に伴うダイオキシン類や重金属による周辺環境の汚染について、実態を把握しているか。把握しているならば、その概要を示されたい。把握していないならば、なぜ把握していないのか、理由を示されたい。

三、厚生労働省の「廃棄物焼却施設解体工事におけるダイオキシン類による健康障害防止について」によると、ごみ焼却炉の解体・補修時には、ダイオキシン類に汚染されているおそれのある箇所のダイオキシン濃度調査が必要とされている。その調査により、高濃度の汚染物質が検出された場合、どのように処理するのか、次のそれぞれについて明らかにされたい。

1 煤塵、焼却灰、付着物などの粉状物
2 コンクリート、レンガ、金属類などの工作物
3 電気機械などの設備機器

四、煤塵について

1 これまで、ごみ焼却炉の解体に伴って発生した煤塵はどのように処理されてきたのか。二〇〇〇年、二〇〇一年、二〇〇二年の各年において解体されたごみ焼却炉について、それぞれ示されたい。
2 政府は、煤塵について、溶融固化・セメント固化・薬剤固化・酸処理・エコセメント、いずれかによる処理を法令で定めている。この処理方法は重金属に対応したものと聞くが、どうか。もしそうであるならば、高濃度のダイオキシン類汚染物質である煤塵については、別に処理方法を定める必要があるのではないか。
3 ごみ焼却炉の解体によって発生した煤塵について、既設のごみ焼却炉に一般ごみとともに投入・焼却し、改めてその排ガスから捕捉した煤塵を安定化処理するようにしていると聞く。これは、合法的な処理方法なのか。合法であるならば、その法令上の根拠を示されたい。
4 前項の処理がなされる際、周辺にダイオキシン類や重金属が飛散するおそれがある。前項の処理を行った際の排煙中のダイオキシン類及び重金属濃度及び周辺環境の汚染について、実態を明らかにされたい。
5 バグフィルターなどの除塵装置は、ごみ焼却炉からの排ガスを八五〇度前後から二五〇度前後に冷却した後、ダイオキシン類を粒子化して捕捉する。しかし、排ガスの流速が速いため、完全な粒子化は物理的に不可能である。よって、高濃度のダイオキシン類汚染物質を焼却した場合、相当な量のダイオキシン類が大気中に放出されるものと思われるが、どうか。

五、ごみ焼却炉の解体について

1 政府は、ごみ焼却炉の解体に際して、厚生労働省の「廃棄物焼却施設内作業におけるダイオキシン類ばく露防止対策要綱」の遵守を国庫補助の要件としているか。
2 本要綱によると、解体作業を請け負う事業者に対し、ダイオキシン類濃度の測定結果など安全に関する情報の事前提供を定めている。一方、周辺住民への情報提供については、どうすべきか明示されていない。なぜか。
3 本要綱によると、三ng‐TEQ/gを指標値として解体作業の区分を行っているが、なぜか。
4 前項の指標値を超えた汚染物については、その処理をどうすべきなのか。
5 本要綱では、作業従事者の血液検査を必要に応じて行うとしている。しかし、ごみ焼却炉の解体に伴う汚染を監視するためには、作業前後及び作業期間中について、作業従事者及び周辺住民の血液検査、並びに周辺環境の土壌、大気、松葉、水、底質などのモニタリングが必要であると考えるが、どうか。
6 環境省は、ごみ焼却炉の解体・補修工事に伴う汚染を防止するため、作業、解体方法及び解体物の処理について、それぞれ基準を示すべきではないか。また、これらの基準が示されるまで、作業従事者及び周辺住民の健康を守るため、ごみ焼却炉の解体を凍結すべきではないか。環境大臣の意見を示されたい。

六、東京都下の柳泉園組合では、ごみ焼却炉の解体方法及び解体物の行方について、市民に知らされていないと聞く。ごみ焼却炉の解体方法及び解体物の行方については、周辺住民の健康と密接に関係する情報であり、明らかにされるべきことと考えるが、どうか。また、明らかにされていないのは、これらの情報開示を定めた法令がないからではないか。

七、過去のごみ焼却炉の解体において、施設敷地内に灰や廃材などを埋めていた事例があったと聞く。このような場合、実態の把握されないままに放置され、周辺環境に大きな影響を及ぼすことが危惧される。政府の対処方針を示されたい。また、その実態を把握しているか、把握しているならばその内容を示されたい。

八、ごみ焼却炉内における作業及び解体については、労働安全衛生法を中心とする法令があり、作業従事者の健康を守る観点からの対策が講じられている。一方、ごみ焼却炉の補修・解体によって懸念される周辺地域への影響については、周辺住民の健康や周辺環境を守ることを目的とする法令がない。よって、ごみ焼却炉の補修・解体に関して、周辺住民の健康や周辺環境を守る観点から新しい法令が必要と考えるが、どうか。

  右質問する。