質問主意書

第156回国会(常会)

質問主意書


質問第四号

ETCに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十五年二月七日

中村 敦夫   


       参議院議長 倉田 寛之 殿



   ETCに関する質問主意書

 最近、高速道路においてETC料金所の設置が進んでいる。一方、ETCを利用している自動車ユーザーはわずかにすぎない。
 それにもかかわらず、ETC導入に対して巨額の予算が割り当てられており、自動車ユーザーの間で政府の施策について疑問の声が高まっていると聞く。
 したがって、次の事項について質問する。なお、同様の文言が並ぶ場合でも、各項目ごとに平易な文章で答弁されたい。

一、ETC導入は、渋滞解消のための施策か。それとも、割引料金の導入によってトラック等の長距離利用車の高速道路離れを引き戻すための施策か。施策の主目的を端的に答弁されたい。

二、政府は、ETC導入に当たり、他に考えられる渋滞解消策との精密な比較検討を行ったか。行ったならば、その概要を示されたい。行っていないならば、なぜ行わなかったのか、理由を示されたい。

三、「平成十五年度道路関係予算概要」によると、ETC導入によって料金所渋滞が解消し、その経済効果が年間三千億円に上るとされている。その根拠を示されたい。

四、道路関係四公団は、ETC料金所を通過する車に対して、時速二十キロメートル以下に減速するよう呼び掛けている。なぜか。

五、しばしば、トンネルや下り坂から上り坂に変わる箇所などで、車が減速することに起因する渋滞、いわゆる自然渋滞が発生する。ETC料金所の通過時に時速二十キロメートル以下へ大幅な減速を余儀なくされるのであれば、新たにETC料金所に起因する自然渋滞の発生を想定し得るが、どうか。具体的な検証データがあれば、併せて示されたい。

六、「平成十五年度道路関係予算概要」によると、「平成十九年までにETC利用率を全利用者の半数程度まで引き上げることにより、料金所渋滞を概ね解消」すると整備目標を掲げている。この「概ね解消」される「料金所渋滞」に、ETC料金所の通過時の減速に起因する「自然渋滞」は含まれているのか。端的に答弁されたい。

七、同様に、この「概ね解消」される「料金所渋滞」に、盆暮れ時などの季節的な渋滞は含まれているのか。端的に答弁されたい。

八、昨年の秋に社団法人日本自動車連盟が自家用乗用車ユーザーを対象としたアンケートを実施したところ、「すでにETCを利用している人」は二・一パーセントしかなく、「今後、ETCを利用したいという利用意向者」も三十一・一パーセントにとどまった。このアンケート結果から、ETCが十分に普及する見込みは立っていないと考えられるが、どうか。

九、政府は、ETC普及策として、ETC利用者に特化した多様な料金施策を実施するとしている。一方、社団法人日本自動車連盟のアンケートによると、「ETCの前払い割引制度が適用されたことによって、ETCの利用を検討したいと回答した人」は、わずか五パーセントにすぎなかった。よって、ETC利用者に特化した多様な料金施策の実施は、ETC普及策として問題があるのではないか。

十、ETCの普及促進のため、割引率の高い高額ハイウェイカードを廃止する一方で、ETC利用者に特化した多様な料金施策を実施することは、ETCが使用できない自動二輪ユーザーや、キャッシュカードが発行されない低所得者層などに対する公共料金の差別となる。よって、ETC利用者に特化した多様な料金施策を実施することは、憲法第十四条で定める法の下の平等に反すると考えるが、どうか。

十一、日本道路公団の資料を基にして、二〇〇一年の一般料金所主要渋滞ポイントの上位五か所とその理由を調べたところ、次のとおりであった。
 渋滞頻度二百四十九回/年の東北道上り川口ジャンクションでは、首都高速道路川口料金所から続く渋滞をその原因としていた。渋滞頻度二百二十六回/年の東名高速上り横浜町田インターでは、料金所先の保土ヶ谷バイパスから続く渋滞をその原因としていた。渋滞頻度九十九回/年の名神高速下り京都東インターでは、料金所先の府道一四三号線から続く渋滞をその原因としていた。渋滞頻度七十七回/年の関越道上り大泉ジャンクションでは、外郭環状道路乗り継ぎ料金所から続く渋滞をその原因としていた。渋滞頻度四十三回/年の関越道上り所沢インターでは、料金所先の国道四六三号線から続く渋滞をその原因としていた。
 以上のことから、渋滞の主原因が一般料金所そのものにあるのではなく、本線並びに乗り継ぎ料金所(以下「本線料金所等」という。)若しくは一般道路から続く渋滞の影響にあることが分かる。
 よって、道路関係四公団の料金徴収体系を、入口で通行券を受け取り出口で料金を支払う日本道路公団の方式に統一し、すべての本線料金所等を廃止すれば、ETCのように料金差別やユーザーへの費用負担が生じることもなく、一般道路における渋滞に起因するものを除けば、料金所渋滞をおおむね解消することができると考えるが、どうか。

  右質問する。