質問主意書

第155回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一八号

内閣参質一五五第一八号
  平成十五年一月二十八日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 倉田 寛之 殿

参議院議員福島瑞穂君提出原子力発電所を維持するに当たって従うべき技術基準に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員福島瑞穂君提出原子力発電所を維持するに当たって従うべき技術基準に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねの説明については、説明を行った者及び説明の趣旨が明らかでないため、当該説明が誤りであるかなどについて具体的にお答えすることは困難であるが、関係する規制の内容について申し上げれば、次のとおりである。
 御指摘の発電用原子力設備に関する構造等の技術基準(昭和五十五年通商産業省告示第五百一号。以下「告示五百一号」という。)においては、発電用原子力設備に使用される材料に係る基準である材料の規格(以下「材料規格」という。)並びに発電用原子力設備の構造強度等に係る基準である構造の規格、安全弁等に係る基準、耐圧試験に係る基準及び監視試験片に係る基準(以下「構造等規格」という。)を定めているが、このうち材料規格は、一定以上の強度等を有する材料を用いることにより構造等規格への将来にわたる適合性を担保するための規格との性格を持つものであり、破壊試験に合格することとの規定を含むことからも分かるように、その性格上、設計時及び建設時にのみ適用されるものである。したがって、使用時の発電用原子力設備については、材料規格に係る規定は適用されず、ひび割れ等の不具合(以下「ひび割れ等」という。)がある場合であっても構造等規格その他関係する法令の規定に照らし安全上問題がない場合には、原子炉を運転することが可能である。

二、八及び十二について

 一についてで述べたとおり、材料規格は発電用原子力設備の設計時及び建設時にのみ適用されるのに対し、構造等規格は発電用原子力設備の設計時、建設時及び使用時に適用されるものであり、「原子力安全・保安院が、「使用時」においては告示五百一号は適用されない」としている、又は「電気事業者が、運転中の原子力発電所を維持するに当たって従うべき技術基準と設計時及び建設時に従うべき技術基準が、告示五百一号を含む全く同一のものである」としている事実はなく、また、電気事業法及び核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律(平成十四年法律第百七十八号)の施行に伴い、このような取扱いを変更する予定はない。

三から七まで及び九について

 一についてで述べたとおり、使用時の発電用原子力設備については、ひび割れ等がある場合であっても構造等規格その他関係する法令の規定に照らし安全上問題がない場合には原子炉を運転することが可能である。
 お尋ねの告示五百一号第四十四条第六項及び第九十四条第六項に定める再循環系配管等の第一種管及び炉心シュラウド等の炉心支持構造物の材料規格も、使用時の第一種管及び炉心支持構造物には適用されず、これらにひび割れ等がある場合であっても構造等規格その他関係する法令の規定に照らし安全上問題がない場合には、原子炉の運転を行うことが可能である。
 昭和四十年の電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)の施行以来、使用時の発電用原子力設備にひび割れ等がある場合であっても関係する法令の規定に照らし安全上問題がない場合には原子炉の運転を行うことが可能であるとの考え方に変更はない。例えば、平成十三年八月に東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)から経済産業大臣に対して、東京電力福島第二原子力発電所第三号機の炉心シュラウドにき裂があるが、当該炉心シュラウドはき裂が存在していても十分な構造強度を有している旨の報告がなされたことを受け、同年九月、経済産業省において、東京電力の当該報告は妥当なものであり、当該炉心シュラウドのき裂は安全上問題とならない旨の判断を公表するとともに、公表した内容を原子力発電所が設置されている地方公共団体に通知したところである。

十及び十一について

 使用時の再循環系配管等の第一種管については、管の厚さに係る告示五百一号第四十九条の規定だけでなく、構造の規格に係る告示五百一号第四十六条から第五十三条までの規定により、ひび割れ等の有無にかかわらず、必要な構造強度を確保することとしている。これと同様に、使用時の炉心シュラウド等の炉心支持構造物についても、炉心支持構造物に発生する応力が当該炉心支持構造物の許容応力を超えてはならないことなどを定めた告示五百一号第九十六条から第百条までの規定により、必要な構造強度を確保することとしているところ、二重基準との御指摘は当たらない。