質問主意書

第155回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一四号

歯科医師の医科研修に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十四年十二月十二日

櫻井 充   


       参議院議長 倉田 寛之 殿



   歯科医師の医科研修に関する質問主意書

 札幌の救急救命センターでは、北海道大学歯学部及び札幌市立病院の要望により、院内のレジデント教育委員会の了承を得て、平成九年一月より歯科口腔外科研修医の救命救急センターでの研修を受け入れることとなった。
 歯科口腔外科での業としての診療領域の対象は、原則として口蓋、頬粘膜、上下歯槽、硬口蓋、舌前三分の二、口蓋底、軟口蓋、顎骨(顎関節を含む)、唾液腺(耳下腺を除く)を加える部分であり、歯科口腔外科医はそれらの部位の疾患、外傷、悪性腫瘍に対応している。また、悪性腫瘍の治療、その他治療上全身的な管理を要する患者(例えば糖尿病や高血圧を持病として持つ患者など)の治療に当たっては、歯科医師は適宜、医師との連携を取る必要があるとされている。このように、歯科口腔外科医師はこの領域における外科的治療も含めた治療を行っている。
 歯科口腔外科領域の治療においては生命維持のため、気道確保の技術の習得や、全身麻酔技術の習得、局所麻酔剤使用に伴うアナフィラキシーショックにも迅速に対応する必要がある。また、全身的な患者管理も求められている。さらには、歯科口腔外科に入院中の患者が、突然、心筋梗塞や、脳内出血などを起こした場合にはその症状から病状を診断し、当該医師の応援を受けるとともに、その医師が来るまでの間の応急処置を行うことは、歯科医師といえども当然のことである。しかし、平成十三年六月、某新聞社が、右記救急救命センターについて内部告発に基づく「歯科医師、資格外診療」という記事を掲載した。その後、保健所が同センターを監査し、厚生労働省の強い要請による刑事告発となった。そして警察による強制捜査から、関係者に対する事情聴取が行われ、平成十四年二月十二日、歯科研修医は不起訴となったが同センター部長が医師法第十七条違反で起訴された。
 そこで以下質問する。

一 札幌保健所が「歯科医師が歯科口腔外科の研修の一環として、歯科に属さない疾患にかかわる診察、点滴、採血、処置及び注射などの医行為を行う」ことの是非について厚生労働省に回答を求めた際、「歯科に属さない疾患にかかわる医行為を業として行うことは医師法第十七条に違反する。」との見解を出した。しかしその後、平成十四年四月二十三日付けで厚生労働省医政局医事課長通知(第〇四二三〇〇二号)・厚生労働省医政局歯科保健課長通知(第〇四二三〇〇四号)が出され、そこには「歯科医師が、救急救命処置に関する対応能力の向上を図るために医科の診療分野において研修することは、一般的に医師法に違反するものではない」とある。とすると、厚生労働省は前述の札幌保健所への回答は「研修の一環」ということを踏まえていなかったということなのか。

二 本裁判の検察の冒頭陳述において、厚生労働省医事課長は「絶対的医行為」とは「単純な補助的行為と見なし得る程度を超え、かつ、医師が常に自ら行わなければならないほど高度に危険な行為」であり、その行為として、①気管挿管、②中心静脈路確保、挿入したカテーテルの抜去、③動脈に挿入したカテーテルの抜去、④手術又は輸血の同意を得るための説明行為、⑤手術における助手行為、⑥触診としている。これは厚生労働省の見解と解釈してよいのか。

三 歯科医の医科研修はどこまで認められるのか。また、法律により歯科医の医科研修を規定したとしても現場での裁量にゆだねざる得ない場面もあると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。