質問主意書

第155回国会(臨時会)

質問主意書


質問第八号

柔道整復師の施術に係る療養費の支給に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十四年十一月二十六日

堀 利和   


       参議院議長 倉田 寛之 殿



   柔道整復師の施術に係る療養費の支給に関する質問主意書

 柔道整復師の施術に係る療養費の支給に関する保険不正請求問題については、平成五年に会計検査院から厚生大臣あてに「柔道整復師の施術に係る療養費の支給について」の是正要求(以下「是正要求」という。)が提出されたが、それ以後どのように解決されたか疑問である。現在も保険不正請求に関する問題が指摘されており、柔道整復師が打撲や捻挫で施術をしたとして支給を申請した療養費の推計額が増大の一途をたどっている。
 そこで、以下の点につき質問する。

一、平成五年の会計検査院からの是正要求や、平成七年九月に医療保険審議会柔道整復等療養費部会がまとめた「柔道整復等の施術に係る保険給付について」(以下「部会意見」という。)では、審査体制の充実が求められた。今日までの是正の状況及びその評価について厚生労働省としての見解を示されたい。

二、平成五年に会計検査院から是正要求とともに、「会計検査院柔道整復施術調査結果」(平成五年十二月)が示された。なかでも「はり、きゅう、マッサージの振り替え請求」において、はり、きゅう、マッサージの施術をして、保険請求は柔整施術として行っている。この件についても、どのような是正がなされたか、明らかにされたい。

三、平成七年の部会意見では、「打撲・捻挫は、関節等に対する可動域を超えた捻れや外力による外傷性の疾患であり、療養費の対象疾患は、急性又は亜急性の外傷性であることが明白な打撲・捻挫に限るべきである」とされた。また、平成九年四月に出された「柔道整復師の施術に係る療養費の算定基準の実施上の留意事項等について」では、「療養費の支給対象となる負傷は、急性又は亜急性の外傷性の骨折、脱臼、打撲及び捻挫であり、内科的原因による疾患は含まれないこと」とある。亜急性及び外傷性の定義について明らかにされたい。

四、柔道整復師の中に「人間は寝ている間も筋や腱が動いており、患者は肩こりだと思っても、知らない間に捻挫していることもある」という施術判断をする者が多い。捻挫などのけがをしたときに患者自身に自覚がないということは常識的には考えにくい。厚生労働省としては「患者が知らない間にも捻挫することがある」との見解に立っているのか明らかにされたい。

五、看板に「各種保険取扱」として「神経痛、腰痛、五十肩」や「肩こり、全身疲労、腰痛」と病名を掲げる柔道整復師の施術所もある。外傷ではないこうした病名は療養費の支給対象となるのか。また、広告表示においても違法性はないのか。

六、厚生労働省の「患者調査」で用いる傷病小分類のうち、柔道整復師の療養費の支給対象となるのは「損傷、中毒及びその他の外因の影響」のうちの骨折、脱臼、捻挫、ストレインであり、「筋骨格系及び結合組織の疾患」は対象外であるとの解釈で正しいか。また、「国民生活基礎調査」で用いる傷病のうち、施術への療養費の支給対象となるのも同様の理解でよいか。見解を示されたい。

七、平成七年の部会意見では、審査体制の充実が求められている。そこで、柔道整復の療養費に関する審査委員会の現状について以下の点に関するデータを都道府県別に示されたい。
1 審査委員会の設置状況。
2 審査委員会の発足時期。
3 委員の人数と構成(保険者、施術者及び学識経験者それぞれの人数)。なお、学識経験者に医師は入っているか。医師が入っている場合、整形外科医や外科医が入っているか。
4 審査委員会は全保険者の全申請書を審査しているか。全数でない場合、審査している申請書の割合はどのくらいか。
5 これまでの審査で減額された請求はあるか。ある場合、その件数及び金額を示されたい。

八、過去の国民生活基礎調査によると、「骨折以外のけが、やけど」で「あんま、はり、きゅう、柔道整復師」に通う人は、平成元年九万六千人、平成四年九万一千人、平成七年六万三千人、平成十年九万四千人、平成十三年十万八千人と、ほぼ横ばいで推移してきた。しかし、骨折、脱臼、捻挫、打撲で申請された柔道整復師の療養費の推計額は、平成二年の一六六九億円から平成十二年には二七四八億円と一・六五倍に増えており、同じ期間の国民医療費の伸び(一・四七倍)を上回る増加であった。けがをする人が増えないのに療養費が伸び続けるのはなぜか、その理由を示されたい。

九、柔道整復師が打撲や捻挫で施術をしたとして療養費の支給を申請している患者の数は、厚生労働省「国民生活基礎調査」で示された「骨折以外のけが、やけど」で通院している患者数を大幅に上回っている。平成十二年十一月十六日の参議院国民福祉委員会での西川きよし議員の質問に対し、津島雄二厚生大臣は「給付と負担の両面において公平な制度であるよう不断の見直しを進めてまいりますとともに、制度の公正な運営を図ることによって国民の方々の納得が得られるよう努力をしてまいりたい」と答弁しているが、「公正な運営」のためには放置できない事態であり、数字の乖離が生じている原因を調査する必要がある。いつまでにどのような方法で調査をするのか具体的に示されたい。

  右質問する。