質問主意書

第155回国会(臨時会)

質問主意書


質問第五号

島々谷の砂防に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十四年十一月十四日

中村 敦夫   


       参議院議長 倉田 寛之 殿



   島々谷の砂防に関する質問主意書

 北アルプス南部の島々谷は、上高地のかつての表玄関である。明治時代、日本アルプスを世界に紹介したウォルター・ウェストンは、この島々谷を幾度となく歩き、渓谷の美しさを絶賛していた。
 しかし、現在の島々谷には、川を分断する砂防ダムがひしめき合い、ウォルター・ウェストンの愛した渓谷美は失われている。そして、新しい砂防ダムの建設で発生した土砂が、既存の砂防ダムを埋め、更に新しい砂防ダムを造る根拠の一つとされているのである。政府は、このような賽の河原で石を積むに等しい行為を、いかに言えば止めるのだろうか。強い不信感を抱かざるを得ない。
 以上の観点から、次の事項について質問する。なお、同様の文言が並ぶ場合でも、各項目ごとに平易な文章で答弁されたい。

一、島々谷川(北沢、南沢、その他の支流も含める。以下同じ。)における美しい景観と多様な渓流生態系は、自然科学的見地及び文化的見地から非常に価値が高く、国民の財産としてありのままで保全すべきものであると考えるが、どうか。

二、一九九九年の大雨の際の土砂の影響を見ると、島々谷川第三号砂防ダムより下流において最も被害が出ていた。したがって、島々谷川第六号砂防ダムを建設するよりも、下流にある既設砂防ダムについて、定期的な浚渫やオープン型(スリット型)への改修などによって、土砂調節量を増やすことを優先すべきであると考えるが、どうか。

三、島々谷川第一号砂防ダムについて、一九九九年の大雨の際、同砂防ダムによって河床が上がったため、土石流が道路にあふれやすくなり、道路を経て直下の人家に押し寄せる危険性があったと聞く。したがって、早急に同砂防ダムをオープン型(スリット型)へ改修し、河床を下げる必要があると考えるが、どうか。

四、一九九九年の大雨の際に破損した旧営林所作業小屋近辺の川原に、建設廃土が盛られている。また、二股トンネルの出入口近辺の川原でも、建設廃土が盛られている。この他、ワサビ沢トンネルの建設廃土も、近辺の川原に盛られている。しかし、川原はそもそも土砂調節機能を果たしているのである。したがって、このように建設廃土を川原に置くことは、河川本来の土砂調節機能を低下させ、砂防事業と矛盾する行為になると考えるが、どうか。

五、現地を視察したところ、次の状況を目撃した。島々谷川第四号砂防ダムは満砂状態にあり、島々谷川第五号砂防ダムの建設廃土が流れ込んでいた。また、島々谷川第五号砂防ダムも満砂状態にあり、島々谷川第六号砂防ダムの建設廃土が流れ込んでいた。このような状況について、政府の認識を示されたい。

六、政府は、環境調査及び土砂流出調査の結果を早急に公表した上で、住民やNGOなどを交えて、島々谷における砂防事業の改善策を検討すべきであると考えるが、どうか。

  右質問する。