質問主意書

第154回国会(常会)

答弁書


答弁書第四九号

内閣参質一五四第四九号
  平成十四年八月二十七日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 倉田 寛之 殿

参議院議員又市征治君提出大使天下り人事と北方三島疑惑に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員又市征治君提出大使天下り人事と北方三島疑惑に関する質問に対する答弁書

一の1について

 お尋ねの色丹島、択捉島及び国後島におけるディーゼル発電施設の設置事業(以下「本件事業」という。)については、本年三月四日に園部逸夫外務省参与から川口外務大臣に対して提出された「北方四島住民支援に関する調査結果報告書」(以下「三月報告」という。)に取りまとめられた調査の過程において、外務省及び支援委員会事務局の関係者から聞き取り調査を行った。また、本年四月二十六日に新日本監査法人から外務省に対して提出された「支援委員会の活動に関する調査報告書」(以下「四月報告」という。)に取りまとめられた調査の過程において、外務省及び支援委員会事務局の関係者から聞き取り調査を行ったものと承知している。
 これらの聞き取り調査は、対象者の氏名等を公表しないことを前提として行われたものであり、対象者の氏名については答弁を差し控えたい。

一の2について

 三月報告においては、本件事業について、「今回の調査の範囲では、鈴木議員の関与は確認されなかった。」とされており、四月報告においても、本件事業について、「鈴木議員の意向を配慮する形で案件内容、入札条件、入札評価等が変更された事実は発見されなかった。」とされているところ、これらの調査は、任意の調査という制約のある中で、可能な限り事実の解明を行ったものであり、外務省としては、これまで右認識を変えるに足りる事実等に接していないものである。

一の3について

 外務省としては、三月報告及び四月報告に係る調査において、任意の調査という制約のある中で、可能な限りの解明を行ったと認識しており、今後は、事案全容の解明のため、捜査に全面的に協力していく考えである。

二の1について

 本件事業に係る三井物産株式会社と支援委員会事務局との間の契約は、色丹島及び択捉島の案件については末澤昌二事務局長(当時)において、国後島の案件については高野保夫事務局長において、それぞれ締結したものである。
 なお、本件事業の実施については、外務省内の決裁によって決定されたが、色丹島及び択捉島の案件については西村六善欧亜局長(当時)が、国後島の案件については東郷和彦欧亜局長(当時)が、それぞれ主管局の局長として決裁を行ったものである。

二の2について

 支援委員会の設置に関する協定(平成五年外務省告示第百五十九号。以下「協定」という。)においては、支援の具体的内容については日本国政府が決定することとされていることから、本件事業については、外務本省において支援の具体的内容に関する決定を行い、その後の事務手続は支援委員会事務局において行ったものであり、都甲岳洋ロシア連邦駐箚特命全権大使(当時)及び丹波實ロシア連邦駐箚特命全権大使は、本件事業の決定等に関与しなかったものである。

二の3について

 支援委員会については、委員会の会合が開催されていなかったといった点はあったものの、協定に基づいて設置された国際機関として継続的に存在していたものであり、政府としては、協定及び国内の関係法令の規定に従い、所定の手続を経た上で支援委員会に対する資金の拠出を行ってきたことから、支援委員会への「支出は「国際機関への拠出金」としてはその時点にさかのぼって法的正当性がない。」との御指摘は当たらないと考えている。

二の4について

 支援委員会については、本年四月二十六日に支援委員会改革のための専門家会議から川口外務大臣に対して提出された「支援委員会改革のための提言」において、「問題の再発を防止し、より適切に支援事業を継続していくために、まず、現行の協定を終了し、それに基づく支援委員会を廃止し、可及的速やかにこれに代替する新たな枠組みを構築することが適切」であるとの提言がなされているところ、政府としては、この提言を重く受け止め、ロシア連邦等協定の締約国との協議を経た上で廃止していく方向で検討しており、御指摘の繰越金の処理についても、その過程において、検討していく考えである。

三の1の(1)及び(2)について

 御指摘の平成十四年七月十五日参議院行政監視委員会における川口外務大臣の答弁は、国家公務員の私企業からの隔離について定めた国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第百三条が、一般職の国家公務員に関し離職後二年間の就職先につき一定の制約を設けていることを踏まえ、一般に、国家公務員の再就職については、既存の法令の枠組の中で、国民の疑念を招くようなことがないよう、透明性を確保しつつ、行われることが重要である旨を述べたものである。
 なお、特命全権大使等の特別職の国家公務員については、同条の直接的な適用はないが、これらの職員がかつて一般職の国家公務員であった場合には、一般職から離職した時点から起算して二年以内に特別職から離職して就職する際には同条の規定が適用される。

三の1の(3)について

 お尋ねの「独自の調査」がどのようなものを想定しているのか明らかではないので、お答えすることは困難であるが、外務省が現在把握している限りにおいて、特命全権大使等の特別職から離職した者の就職については、いずれも法令上問題はないものと考えている。

三の2について

 特別職である特命全権大使の再就職については、本年八月二十一日に外務省が発表した「外務省改革「行動計画」」において、「国家公務員法第百三条及び人事院規則「営利企業への就職」に規定された基準を準用する。」としている。ただし、特別職である特命全権大使は人事院の所管に属さないことから、これらの者の就職については人事院による承認の対象とはならない。