質問主意書

第154回国会(常会)

答弁書


答弁書第四五号

内閣参質一五四第四五号
  平成十四年八月二十七日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 倉田 寛之 殿

参議院議員福本潤一君提出中国製ダイエット食品による健康被害及び中国医学の適切な普及に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員福本潤一君提出中国製ダイエット食品による健康被害及び中国医学の適切な普及に関する質問に対する答弁書

一について

1 いわゆる健康食品については、基本的には食品として食品衛生法(昭和二十二年法律第二百三十三号)が適用されるが、医薬品若しくは医薬部外品(以下「医薬品等」という。)として薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)が適用される場合もある。
 食品については、食品衛生法第二条第一項において医薬品等を除くすべての飲食物をいう旨の定義があり、いわゆる健康食品のうちこの定義に該当するものについては、有毒な、若しくは有害な物質が含まれ、若しくは付着し、又はこれらの疑いがあることが疫学的調査その他の科学的調査により客観的に認められる場合には、同法第四条第二号の規定によりその販売、販売の用に供するための製造、輸入等が禁止される。
 医薬品については、薬事法第二条第一項において、日本薬局方に収められている物、人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物(医薬部外品を除く。)及び人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物(医薬部外品を除く。)をいう旨の定義があり、また、医薬部外品については、同条第二項において、吐き気その他の不快感又は口臭若しくは体臭の防止等を目的とし、かつ人体に対する作用が緩和な物及びこれらに準ずる物で厚生労働大臣の指定する物をいう旨の定義がある。いわゆる健康食品のうち、医薬品等としての効能効果を標ぼうしたり、専ら医薬品として使用される成分を含有したりしていることから医薬品等に該当すると判断されるものであって、同法第十二条に基づく製造業の許可を受けずに製造されたもの又は同法第二十二条の規定による輸入販売業の許可を受けずに輸入されたもの(以下「無許可医薬品等」という。)については、同法第五十五条又は第六十条の規定により、その販売、陳列等が禁止される。
2 中国製ダイエット食品が原因である可能性がある健康被害事例について、本年七月十二日から同年八月十九日までの間に都道府県(保健所設置市及び特別区を含む。以下同じ。)から報告があったものを集計したところ、無許可医薬品等については三十九製品で、被害者が六百十八人(うち死亡者三人)あり、食品については百十一製品で、被害者が百四十一人(うち死亡者一人)あった。
3 中国製ダイエット食品が原因である可能性がある健康被害事例に係る発売元、販売業者、輸入代行業者及び消費者に対する食品衛生法及び薬事法の適用については、次のとおりである。
 (一) 御指摘の「発売元」とは、中国製ダイエット食品を中国において販売している者を指すと考えられるが、中国においてこれらの物を販売する行為に対し、食品衛生法又は薬事法を適用することは困難である。
 (二) 販売業者が販売の目的で輸入した物が食品衛生法又は薬事法に違反するものであった場合には、当該販売業者に対して、これらの法律に基づき、厚生労働大臣、都道府県知事等がこれらの物の回収等を命じ、また、悪質な事例については刑事告発する場合もある。
 (三) 消費者が自己の使用のために輸入する物は、食品衛生法又は薬事法の規制対象ではなく、また、このような物まで食品衛生法又は薬事法の規制対象とすることは困難であると考えている。
 また、輸入代行業者は、輸入の手続を代行する限りにおいては、販売業者に該当せず、食品衛生法又は薬事法による規制を行うことは困難である。

二について

 いわゆる健康食品とは、一般に、特定の食品成分を積極的に摂取することによる健康の維持増進を目的とするものを指すと考えられるが、医薬品等とは異なり、疾病の予防又は治療のために使用することを目的としたり、身体の構造又は機能への影響を及ぼすことを目的とすることは認められない。

三について

 文部科学省においては、漢方薬等に関する資料の収集及び整理、薬効の評価、解析及びデータベースの構築等を図るため、富山医科薬科大学和漢薬研究所の附属施設として薬効解析センターを設置している。同センターが運用する民族薬物データベースは、インターネット上で公開されており、医学、薬学等の専門家や消費者に対して漢方薬等の有用性及び安全性に関する正確な情報を提供することを通じて、漢方薬等の適正な使用に寄与しているところである。
 厚生労働省においては、御指摘のような漢方薬やいわゆる健康食品に関する啓蒙、中国医学に関する指導を行う専門施設は設置していないが、保健機能食品やいわゆる健康食品について消費者に適切な情報を提供し、気軽に相談することができる者(以下「アドバイザリースタッフ」という。)が養成されていくことが望ましいと考えており、アドバイザリースタッフが習得すべき知識、養成方法等に関する基本的な考え方を都道府県や関係団体に示したところである。また、漢方薬に関する調査研究については、厚生労働科学研究費補助金による支援を行うとともに、中国医学による医療のうち医行為に該当するものについては医師法(昭和二十三年法律第二百一号)等により、はり及びきゅうについてはあん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(昭和二十二年法律第二百十七号)により資格制度を設け、このような業務に従事する者の質を確保しているところである。

四について

 食品であるか、医薬品等であるかの判断がつきにくい物による健康被害事例への対応については、食品担当部局と医薬品担当部局の連携の強化等により、現行制度の下での対策を一層充実させていきたいと考えている。また、今般の中国製ダイエット食品が原因である可能性がある健康被害事例も踏まえ、現在進めている食品衛生法全体の見直しに向けた作業の中で、保健機能食品制度の拡充を含め、いわゆる健康食品に対してどのような規制の在り方が適当かを検討してまいりたい。

五について

 各地方公共団体の消費生活センターに寄せられたいわゆる健康食品に関する苦情相談については、国民生活センターが運営する「全国消費生活相談ネットワークシステム」を通じて、情報の共有化を図っている。国民生活センターは、これらの情報及びその分析を基に、身体に異常を感じたら直ちに使用を中止し医師に相談すること、効能又は効果の表示は薬事法違反であること等の注意喚起を各種媒体を通じて消費者に対して行い、危害の防止に努めているところである。
 なお、いわゆる健康食品が原因である可能性がある健康被害の相談については、保健所においても受け付けており、原因究明が必要な場合等においては製造業者等に対する調査、製品に対する試験検査等を実施するとともに、相談の概要等を遅滞なく厚生労働省に報告するよう都道府県に要請しているところであるが、今般の中国製ダイエット食品が原因である可能性がある健康被害事例を踏まえ、都道府県との間で一層緊密な連携を図りながら、消費者に対する情報提供の充実に努めてまいりたい。