質問主意書

第154回国会(常会)

答弁書


答弁書第二九号

内閣参質一五四第二九号
  平成十四年七月二十六日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 倉田 寛之 殿

参議院議員井上美代君外七名提出公立学校施設の耐震性の確保及び公立学校の増改築、トイレの改造に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員井上美代君外七名提出公立学校施設の耐震性の確保及び公立学校の増改築、トイレの改造に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねは、平成十四年二月に消防庁が取りまとめた「防災拠点となる公共施設等の耐震化推進検討報告書」の「地方公共団体における公共施設等の耐震改修等の現状」の調査結果について問うものと解されるところ、同報告書においては、お尋ねの「耐震性がないと推計され、未改修になっている公立の小中高校」の建物の棟数については、推計していない。
 御指摘の「七万六五二棟」は、各地方公共団体が平成十三年三月三十一日までに、当該地域の実状を踏まえてそれぞれの判断で実施した耐震診断において対象とされた公立の幼稚園、小学校、中学校及び高等学校の建物(以下「公立学校の建物」という。)のうち、耐震性がないと診断されたものの割合を、耐震診断を実施していない公立学校の建物についても一律に当てはめる方法で算出したものであって、公立学校の建物の耐震性の実態を正確に反映したものであるとは必ずしも言い難いことから、更に同様の手法で都道府県ごとの推計を行うことは差し控えたい。
 なお、前記調査結果によれば、都道府県別の公立学校の建物の総棟数及びそのうち耐震性を有する建物(昭和五十六年以前に建築された建物であって耐震診断未実施のものを除く。)の棟数は、別表一のとおりである。

二について

 公立の小学校、中学校及び高等学校の施設については、地震等の非常災害時において、児童生徒等の安全を確保するとともに、その多くについては地域住民の避難場所としての役割を果たさせるため、その耐震性の確保を図ることは重要であると考える。
 市町村が行う公立の小学校及び中学校の施設(以下「小中学校の施設」という。)の改築又は耐震性の向上を目的とした補強(以下「耐震補強」という。)に係る事業(以下「改築補強事業」という。)については、義務教育諸学校施設費国庫負担法(昭和三十三年法律第八十一号)第三条第一項等により、これに要する経費が国庫負担又は国庫補助の対象とされている。また、文部科学省においては、市町村に対し、都道府県の教育委員会を通じ、改築補強事業について国庫負担金又は国庫補助金を活用するなどして速やかに必要な措置を講ずるよう通知等により要請している。さらに、地震防災対策特別措置法(平成七年法律第百十一号)第四条等により、地震防災上緊急に整備すべき木造以外の校舎の耐震補強に係る事業については、国庫補助の割合を当該事業に関する法令の規定にかかわらず二分の一にする特例措置が講じられている。
 地震防災対策の緊急性にかんがみ、今後とも、現下の厳しい財政状況を踏まえつつ、右のような施策を実施するなどして、小中学校の施設の耐震性の一層の向上を図るとともに、市町村による小中学校の施設の計画的な整備を促してまいりたい。
 公立の高等学校の施設の耐震性の確保については、必要な地方財政措置を講じているところであり、これを通じて都道府県等における耐震性の確保のための取組を促してまいりたい。

三について

 国有財産については、財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第九条第一項により、適正な対価なくしてこれを貸し付けてはならないものとされており、その趣旨を踏まえて、貸付けに係る土地上の施設の増改築についても相当額の承諾料を納付させることとしているところである。
 もっとも、地方公共団体に対する公立の義務教育諸学校の施設(以下「義務教育施設」という。)の用に供する国有財産の貸付けについては、先の大戦において破壊された校舎等の復旧及び義務教育の年限の延長による義務教育施設の不足の解消が急務であるとの政策的必要性から、国有財産特別措置法(昭和二十七年法律第二百十九号)第三条第一項により、時価からその五割以内を減額した対価で貸し付けることができることとされた。また、児童又は生徒の急増地域等においては、特に義務教育施設の整備に急を要することから、昭和四十八年における同法の一部改正により、このような特別の事由がある地域においては、無償で貸し付けることができるものとされたところである。さらに、増改築承諾料についても、同法の規定の趣旨を踏まえ同様に減額を行っている。
 御指摘の貸付料の免除や増改築承諾料の廃止については、近年、いわゆる少子化により児童生徒数が減少しており、義務教育施設の不足等の状況が認められず、また、現下の厳しい財政状況にかんがみ、税外収入の確保を図る必要があることなどに照らすと、これらの措置を採る状況にはないものと考える。

四について

 国から義務教育施設の用地の貸付けを受けた地方公共団体が国に納付する貸付料及び当該用地に所在する義務教育施設の改築について国の承諾を受けた地方公共団体が国に納付する改築承諾料について、都道府県別の平成十三年度の各納付額及び平成十四年度の改築承諾料の納付予定額は、別表二のとおりである。

五について

 御指摘の「補助基準」の引下げを行った平成十三年度及び平成十四年度の義務教育施設の大規模な改造に係る事業の費用については、現時点ではその決算額が確定していないので、同事業に係る国庫補助金の予算額でお答えすると、平成十三年度にあっては百九十九億三千八百万円、平成十四年度にあっては百三億三千八百万円である。これらは、各都道府県における個別の事業に係る費用の予定額を積算したものではないため、都道府県別の予算額については、答弁できない。また、義務教育施設の便所について、平成十三年度に国庫補助金の交付を受けて改造(便所のみの改造に限る。以下同じ。)を行った学校の数及び平成十四年度に国庫補助金の交付を受けて改造を行うこととしている学校の数の都道府県別の内訳は、別表三のとおりである。

六について

 義務教育施設の便所の整備については、これまでも国庫補助事業の対象を拡大するなどして必要な国庫補助等を行ってきたところであるが、今後とも、現下の厳しい財政状況を踏まえつつ、必要な予算額を措置するよう努めてまいりたい。

別表一 1/2

別表一 2/2

別表二 1/2

別表二 2/2

別表三 1/2

別表三 2/2