質問主意書

第154回国会(常会)

答弁書


答弁書第二〇号

内閣参質一五四第二〇号
  平成十四年五月三十一日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 倉田 寛之 殿

参議院議員櫻井充君提出BSEで被害を被った和牛繁殖農家に対する施策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員櫻井充君提出BSEで被害を被った和牛繁殖農家に対する施策に関する質問に対する答弁書

一及び二について

 牛海綿状脳症の発生により経済的に影響を受けた畜産農家の経営の安定を図るため、本年度にBSE対応畜産経営安定資金を新たに創設したところである。また、粗収益の額が物財費を下回った場合にその差額を補てんすることを内容とするBSE対応肉用牛肥育経営特別対策事業を昨年度に引き続き実施しているほか、粗収益の額が物財費と家族労働費との合計額を下回った場合に家族労働費の一部を補てんする肉用牛肥育経営安定対策事業、子牛価格の低下に対応して所定の奨励金を交付する子牛生産拡大奨励事業及び子牛価格が保証基準価格を下回った場合にその差額を補てんする肉用子牛生産安定等特別措置法(昭和六十三年法律第九十八号)に基づく生産者補給金制度について、補てん金等の交付を本年四月以降、従来の四半期ごとの交付から毎月の交付に変更する等畜産農家の資金繰りの改善を図るための措置を講じているところである。
 一方で、牛海綿状脳症に関する正確な情報の提供等国産牛肉の消費拡大対策も併せて実施し、最近では牛肉の消費及び価格ともに総じて回復基調にある。
 今後とも、これらの対策を総合的に実施することにより、畜産農家の経営の安定が図られるものと考えている。
 なお、お尋ねの肉用牛繁殖農家に対する資金の融資については、前述のBSE対応畜産経営安定資金で対応しているところであり、今後とも同資金の適切な運用等により肉用牛繁殖農家の経営の安定を支援してまいりたい。

三について

 お尋ねの「処分」の意味が必ずしも明らかではないが、仮に廃棄の意味だとすれば、廃用牛についても、現在では、すべて食肉処理時にBSE検査を受け、その結果BSE陰性であれば食用として安全なものとして流通させることができることから、廃棄を前提に買い上げることは適切ではないと考えている。
 また、廃用牛の買上げを国が直接行うことは、会計法(昭和二十二年法律第三十五号)上の現物確認等の一連の事務に多くの時間や経費、職員の確保が必要となり、迅速な処理が困難である。
 廃用牛の流通については、迅速に対処することが重要であるとの観点から、農業協同組合等が廃用牛を買い上げることに対して助成することを内容とする廃用牛流通緊急推進事業を行っているところである。

四について

 家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律(平成十一年法律第百十二号。以下「法」という。)は、家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進を図ることを目的として、一定規模以上の畜産業を営む者に対し、家畜排せつ物の管理施設の構造設備及び管理の方法に関する基準(以下「管理基準」という。)に従い、家畜排せつ物を管理することを求めている。
 一定規模以上の畜産農家が管理基準を遵守することは、水質汚濁、悪臭等の環境問題の防止等のために必要なものであることから、御指摘の法の適用の緩和については困難であると考えている。

五について

 本年四月四日の参議院予算委員会において須賀田農林水産省生産局長が答弁した牛海綿状脳症の発生による影響額は、牛海綿状脳症の発生による影響を正確に把握することは困難であると前置きした上で、子牛価格の低下等による畜産農家の収入の減少額等から農林水産省において推計した額を述べたものである。
 牛海綿状脳症の発生に伴って畜産農家が影響を受けた額を政府が賠償することは困難であるが、政府としては、牛海綿状脳症の発生以降、畜産農家の経営の安定を図るため、前述のような各般の対策を講じているところであり、今後ともこれらの対策の着実な推進に努めてまいりたい。