質問主意書

第154回国会(常会)

質問主意書


質問第五〇号

電源開発特別会計と電源地域振興センターの業務に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十四年七月三十日

福島 瑞穂   


       参議院議長 倉田 寛之 殿



   電源開発特別会計と電源地域振興センターの業務に関する質問主意書

 (財)電源地域振興センター(以下「センター」という。)は、一九九〇年に設立された認可法人で、原子力発電所等の立地自治体における交付金事業の立案や実施に深く関わっている。「振興相談事業」、「調査事業」、「研修事業」、「専門家派遣事業」、「販売促進事業」、「原子力立地給付金交付事業」、「企業立地支援事業」、「広報事業」などがその事業内容である。このうちの原子力立地給付金交付事業(以下「給付金事業」という。)では、給付金拒否者リストを電力会社に作らせ、さらにそのリストを関連する都道府県に提供していたことが二〇〇二年六月に明らかになった。
 センターは経済産業省の外郭団体であり、会長は電気事業連合会会長である。理事長には官僚OBが就任しており、ある時期は常勤理事六人のうち理事長を含む四人が通商産業省(現経済産業省)のOBだったこともあり、センターと経済産業省の結び付きは極めて太いと思われる。
 二〇〇〇年に新潟県の刈羽村で発覚した、生涯学習センター「ラピカ」をめぐる交付金不正受給事件では、センターが事業の企画段階からコンサルタントのように相談・調査にかかわり、専門家派遣を行い、さらに事業の入札にまで深くかかわっていた。会計検査院は二〇〇一年の会計検査院報告で交付金の不当支出があったことを認め、刈羽村に対し、ラピカ事業にかかわる電源立地交付金約五十六億円のうち三億四千万円を返還するよう命じた。しかしこの判断は、施工工事における不正が明確に認められたものに限定され、刈羽村の責任としても不十分であり、さらにセンターと経済産業省自身の管理責任の問題は、全く触れられていない。
 このようにセンターの業務や電源開発特別会計の公正かつ適切な使用については多くの疑問が残されており、よって以下質問する。

一、原子力立地給付金問題について

 原子力立地給付金の給付事業は、政府から原子力発電所等立地自治体及びその周辺自治体の住民に対して支給する給付金で、事実上は電気料金の軽減措置であり、電気料金割引と同じ意味を持つものである。給付金支給の流れは国から都道府県へ交付され、その都道府県からセンターに補助事業として交付され、更にセンターから電力会社に事務委託して各住民に給付金が支給されるという複雑な経路をたどる。原子力発電所の立地の見返りとしての給付金であることは名称からも明らかであるため、この給付金拒否者は原子力発電所の立地に反対の意思等を抱いていることを、容易に推測することができる。拒否者リストの作成はそのまま、原子力発電所の拒否者リスト作成の意味を持つと考えることもできる。
1 原子力立地給付金が支給されている関係市町村の名前、及びそれぞれの自治体ごとの支給総額は幾らか。最新の二〇〇一年度実績で示されたい。
2 原子力立地給付金の支給総額は過去十年間どのように変化してきたか。それぞれの自治体について二〇〇〇年度までの過去十年間の支給総額を示されたい。
3 原子力立地給付金の一人(若しくは一戸)当たりの支給額には地域によって違いがあるようである。各自治体において、一人(若しくは一戸)当たりの支給額はそれぞれ幾らか。
4 電力会社に対し拒否者リストを作成するようセンターが指示したのか。指示が事実であれば、その目的は何か。
5 各電力会社は同じようなフォーマットを用いて拒否者リストを作成しており、拒否理由についても書き込むようになっている。共通のフォーマット作成や拒否理由等の個人情報を書き込むようセンターが指示したのか。
6 センターが拒否者リストを作成させていたことについて、監督官庁である経済産業省は承知していたのか。承知していたとすれば、これを妥当なものと判断していたのか。
7 拒否者リスト作成は、それ自体個人情報の収集であり、それを地方自治体に渡せば個人情報の流出ということになるのではないか。これについての政府見解を示されたい。
8 過去に関連する地方自治体から拒否者リストが必要であるという要請がなされたことはあるか。
9 センターが個人情報の収集及び流出を指示していたことが事実とすれば、その責任をどのように取らせるのか。また経済産業省はどのような改善策を採ったのか。
10 経済産業省も国民に対し監督官庁として謝罪し責任を取るべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。

二、電源立地促進対策交付金について

 新潟県刈羽村で問題となった、電源立地促進対策交付金(以下「交付金」という。)の対象事業である生涯学習センター「ラピカ」の事件では、平成九年度、十年度に総額五十六億円の交付金が支給されている。事業の基本構想等は平成四年度からスタートしており、センターに対し平成四年度と平成五年度に基本構想及び基本計画に関する調査委託が行われている。センターはその調査を更に総合ユニコム(株)に委託、その総合ユニコムが外部スタッフとして(株)石原・山口計画研究所の石原信氏と個人コンサルタントの古宮正貴氏を起用する。平成七年に古宮氏はセンターからの専門家派遣事業として、同事業の設計コンペを取り仕切り、そのコンペで(株)石原・山口計画研究所すなわち石原信氏の会社が設計を落札する。さらに平成九年、同研究所は随意契約により施工監理契約を刈羽村と結ぶ。そして、ラピカの一連の事件につながるのである。
1 平成九年度、十年度の交付金申請に当たって、刈羽村は東北通産局に対し、どのような資料を添付したのか。東北通産局はそれをどのように管理、保管しているか。
2 東北通産局は、交付金額の妥当性をどのように確認したのか。
3 交付金申請に当たって、刈羽村が東北通産局に提出された資料は、誰がどのように作成したのか。
4 二〇〇一年九月の経済産業省の調査報告書「新潟県刈羽村生涯学習センター『ラピカ』に関する問題について」(以下「経産省報告書」という。)によれば、事件発覚後の二〇〇一年一月、刈羽村は設計図、特記仕様書、設計内訳書の復元を行っている。これに基づいて工事費用が申請した交付金より更に大きいと見せようとしたのではないかという疑惑が持たれているが、この復元作業は誰が何に基づいて行ったのか。
5 交付金より工事費用を大きく見せることで、交付金の不正受給を隠蔽しようとする意図を読み取ることもできる。経済産業省は復元された設計図等に対し、何の疑問も抱かなかったのか。
6 平成七年に行われた設計コンペには、刈羽村のデザイン選考委員会の委員として、センターの吉野隆治理事(当時)が参加している。これはセンターの業務ではなく個人としての参加ということであるが、吉野理事はコンペを取り仕切る古宮氏、コンペに参加する石原氏を刈羽村に紹介した人物である。吉野氏のこのような参加が妥当であったと考えているのか、政府の見解を示されたい。
7 このデザイン選考委員会の委員としての吉野氏の報酬は幾らだったのか。
8 古宮氏はセンターからの専門家派遣事業として設計コンペを取り仕切っており、これに対し刈羽村からセンターへは幾ら支払われたのか。そのうち古宮氏には幾らが報酬として支払われたのか。
9 施工監理契約が随意契約とされた理由は何か。他の公共事業等の場合も、設計の落札者が施工監理を行うことはよくあることなのか。
10 センターが関与していない交付金事業も多いが、それらの対象自治体は相談事業や調査事業、専門家派遣事業などをどういう団体に委託しているのか。

三、専門家派遣事業について

 ラピカ事件にまつわるセンターの行う専門家派遣事業は、極めて不透明でルールも明確でなく、不正の温床となる可能性を多分に内在している。経済産業省は、ラピカ事件の反省から、センターの行う専門家派遣事業を中止させたと聞いている。しかし、正式に発表された形跡はなく、これもまた不透明な形で闇の中で対処が行われているように見える。
1 センターがこれまでに、専門家として派遣した事業数、派遣者数及びその事業費を示されたい。
2 そのうち成就しなかった事業は何で成就した事業は何か。それぞれ事業数と事業名、その年度を示されたい。
3 成就しなかった事業の場合、その事業の廃止理由は、それぞれ何か。
4 過去に専門家として派遣した者の氏名と所属、肩書、経済産業省若しくは通産省とのかかわりについて示されたい。
5 専門家派遣事業を中止したのであれば、その理由を示されたい。また、それは今後、電源三法交付金受給自治体に対する専門家派遣事業というものは一切無くなるということか。

四、ラピカ修繕工事について

 ラピカ事件に対しては、会計検査院から刈羽村に交付金返還命令が出され、刈羽村は不当支出と認定された交付金と加算金の合計三億四千万円を国に返還した。その後、施工業者と施工監理会社との間で和解が成立し、業者側が三億四千万円を刈羽村に支払うこととなり、ラピカの修繕工事が実施された。
 さて、二〇〇一年九月の経産省報告書では、ラピカのコンクリートのひび割れについて、a基礎打ち継ぎ部分の水平クラック、b外壁ヘアクラック、c開口部クラックに三分類し、いずれも〇・一五ミリメートル以下で耐久性の目標値(〇・三ミリメートル)以下であるので、止水処置等の補修を行えばよいとしている(五十四ページ)。
 ところが、刈羽村が二〇〇二年五月に実施した、基礎打ち継ぎ部の水平クラック補修工事修繕工事の完了報告書と外壁クラック補修工事完了報告書(以下「刈羽村報告書」という。)によれば、品質管理記録で、五月八日にクラックを再確認し、クラック幅〇・一から〇・二ミリメートルはEP-400の注入剤を、〇・二から〇・五ミリメートルはEP-300の注入剤を使用すると書いている。そして、出荷証明書では、水平クラック補修工事と外壁クラック補修工事それぞれに、エバーボンドEP-300は三kg/STを四ST、すなわち十二kg、EP-400は四kg/STを二ST、すなわち八kg使用したと記述している。これは、幅〇・二から〇・五ミリメートルのクラックを修繕したことを示すものであり、経産省報告書と矛盾する。
1 経産省報告書と刈羽村報告では、クラックの大きさが明らかに違っている。どちらの記述が正しいのか。また、二つの記述が異なることになった原因は何か。
2 経産省報告書を業務委託し、担当した(社)公共建築協会が、〇・二から〇・五ミリメートルの大きさのクラックを見落としたのか。見落としがあるとすれば、この調査自体の信憑性に問題があり、調査のやり直し等が必要なのではないか。
3 刈羽村報告書からは、耐久性の目標値を超えるクラックが存在すると推測されるが、注入剤による補修で対策は十分と考えるのか。

  右質問する。