質問主意書

第154回国会(常会)

質問主意書


質問第四四号

道路法による路線の変更又は廃止の要件並びに道路管理者等の責務に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十四年七月二十九日

浅尾 慶一郎   


       参議院議長 倉田 寛之 殿



   道路法による路線の変更又は廃止の要件並びに道路管理者等の責務に関する質問主意書

 道路法は、道路網の整備を図り、もって交通の発達に寄与し、公共の福祉を増進することを目的とし、市町村道の道路管理者を市町村とした上で、市町村道の路線の認定、公示、道路の区域の公示等の義務を、市町村及びその首長に課している。
 かかる道路法の規定は、道路が、住民の社会生活に大きな影響を及ぼす公共建造物であることにかんがみ、住民の福祉を増進する観点から、市町村及びその首長の行政行為に一定の手続上の制約を課すものであり、住民自治を保障する憲法の趣旨を具体化する法的枠組みとして評価できるものである。
 しかし、道路法の規定には、なお、解釈が不明確な部分も見られるところ、各市町村及びその首長において、法の趣旨を踏まえた制度の統一的な解釈、運用がなされなければ、法の目的を達成できないばかりでなく、住民の社会生活に無用の混乱を招くおそれがある。
 思うに、内閣は憲法七十三条により、法律を誠実に執行することを任務とするのであって、法令の規定が不明確な場合には、国民の予測可能性を担保するため、明確な解釈を早急に示す義務がある。
 このような立場から、標記について以下質問する。

一、まず、道路法では、道路の区域の変更が、その起点、終点又は重要な経過地の変更を伴う場合は、道路の変更又は廃止に当たると解されるが、どの程度、それらが移動された場合に路線の変更又は廃止に当たるのか、その要件が法律上明らかではない。
 しかし、市町村道の路線の変更又は廃止の場合に、法が市町村議会の議決を要することとしているのは、道路の路線の変更又は廃止が、道路位置が少なからず移動することを前提とした行政行為であり、住民の社会生活に大きな影響を及ぼすことが予想されることから、これを民主的統制に係らしめることにより、住民福祉の増進を図る趣旨と解される。
 そこで、道路の起点、終点又は重要な経過地の移動を伴う道路区域の変更が、路線の変更又は廃止に当たるか否かは、住民の社会生活に与える影響も加味して判断すべきであり、道路区域の変更により、道路の終点が、例えば、崖地のように、住民の通行が明らかに不可能であり、将来も通行できる見込みが全くないような地点に移動する場合には、住民の社会生活に与える影響は甚大なのだから、地番の変更や移動の距離が小さくとも、そのような終点の移動を含んだ道路区域の変更は、路線の変更又は廃止に当たり得ると考えるが、かかる解釈に相違ないか、政府の見解を示されたい。

二、また、右の趣旨にかんがみると、道路の区域変更が路線の変更又は廃止に当たるか否かの判断においては、道路の隣地地権者との境界確定のための協定の有無等、道路を利用する住民の社会生活とは関係ない事項は、斟酌される余地は無いと考えられるが、かかる解釈に相違ないか、政府の見解を示されたい。

三、なお、我が方質問主意書に対する政府答弁書(平成十二年九月一日付内閣参質一四九第九号)では、道路法第九十条第二項の規定に基づき国有財産の譲与を受けた市町村は、市町村道の路線の変更等に伴い、それを私人の用に供するために譲渡することを妨げるものではない、とする解釈が示されているところ、路線の変更が伴わない場合であっても、それを私人の用に供するため譲渡することは差し支えないものか、政府の見解を示されたい。

四、最後に、市町村は、市町村道の道路管理者とされ、道路の維持又は修繕をなすべき責務を負うが、道路の区域の変更及び路線の変更又は廃止の際に、住民に対してどのような責務を負うのかが必ずしも法律上明らかではない。
 しかし、道路法の目的にかんがみれば、市町村道の道路管理者を市町村と規定したのは、住民の社会生活に精通する市町村に、市町村道を維持、修繕する等、住民の社会生活の利便に資するよう、有効かつ適切に管理をなすべき責務を課すことにより、住民福祉の増進を図る趣旨と解される。
 そこで、市町村道の道路管理者たる市町村は、道路の区域の変更及び路線の変更又は廃止の際にも、それが住民の社会生活の利便を害することのないよう、住民に配慮すべき責務を負うのであり、例えば、何らかの理由による緊急避難的措置として、道路管理者たる市が、市道の区域変更として、道路の終点を、崖地のような住民の通行が不可能な地点に移動したため、道路であった場所の住民の通行が不可能となるおそれがある場合には、速やかに、かつ真摯に、関係者と折衝し、道路であった場所の住民の通行を事実上又は法律上可能ならしめるための措置を講ずることも、市道の道路管理者たる市の責務に含まれ得ると考えるが、かかる解釈に相違ないか、政府の見解を示されたい。

  右質問する。