質問主意書

第154回国会(常会)

質問主意書


質問第三八号

電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法の政省令制定に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十四年七月二十三日

福島 瑞穂   


       参議院議長 倉田 寛之 殿



   電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法の政省令制定に関する質問主意書

 二〇〇二年五月三十一日に成立した「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」(以下「新エネルギー利用特措法」という。)は、一定割合の新エネルギー発電による電力の供給を電気事業者に義務付け、それによって太陽光発電や風力発電などの自然エネルギーを含む新エネルギー普及を促進しようとする法律である。しかし、その法律運用の重要な部分が政省令によって定めることとされており、今後どのような議論と決定過程を経て政省令が決められていくのかが、この法律が目的とする自然エネルギーの促進、普及にとって大きな要素となると考える。自然エネルギーはまだ発展途上のエネルギーシステムであり、多くの一般国民やNGOあるいは事業者による実験的利用や思い切った挑戦などにより技術革新や効率の改善ひいては発電コストの低下という結果につなげることによって、市場競争力を高めるための試行の最中にあるからである。このような努力は単に技術的なものだけではなく、補助金や料金制度など設備を取り巻く社会的メカニズムの側面からも必要なものである。この法律も、そのようなメカニズムの一つとして法制化されたものと考える。ところが、法律の毛細血管とも言うべき政省令がいつどのように議論され、固められていくのか、いつまでたっても明らかにされない。また政省令の策定過程において、NGO、NPOを始め、多くの一般国民の意見を取り入れることになっているが、国民の声を反映するプロセスが作られるのか否かすら、全く明らかにされていない。このままでは、法律を効果的に運用していくために広く国民の理解を深める上でも、法律の趣旨について周知徹底を図る上でも、大きな障害となるおそれがあると考える。そこで以下質問する。

一 今回成立した新エネルギー利用特措法は、法案の上程に先立って昨年十二月に開催された総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会(以下「新エネルギー部会」という。)で辛うじて了承された「基本線」を逸脱する懸念があると指摘されている。すなわち新エネルギーの取引のための証書等のメカニズムが明示されていないこと、市場取引のルールや情報が不透明で電気事業者間の閉鎖的な市場取引となるおそれ、廃棄物発電を新エネルギーに含め自然エネルギーと同レベルで競争することを認めるなどの取扱いの問題などである。したがって、政省令の策定に当たっては、まず新エネルギー部会を再開し、成立した法律が昨年十二月に確認された「基本線」を逸脱していないか、しているとすればどのような対策が必要かを確認することが最優先されるべきと考えるが、いかがか。

二 新エネルギー利用特措法の政省令については、国会審議でも「直ちに取りかかりますけれども、十分時間をかけて慎重に検討する」(二〇〇二年四月二十四日、衆議院経済産業委員会での河野資源エネルギー庁長官答弁)との答弁が行われているが、いつからいつまでの期間に、どのようなプロセスで策定するのか、政省令のための審議会等を開催するのかなどを明らかにされたい。

三 同じく政省令に関する国会審議では「政省令等の策定に際しましては、専門的な知識を有する学者、電気事業者、新エネルギー等による発電を行う発電事業者等の専門家及び関係大臣の意見を踏まえまして、慎重に検討がなされることがまず必要である」(五月三十日、参議院経済産業委員会での平沼経済産業大臣答弁)との答弁が行われている。実際には、どのような手続で専門家あるいは関係業界の意見を聞くのか、その手順について示されたい。

四 平沼大臣は同じ答弁の中で、とりわけ「NPOを含む国民から広く御意見をいただくことは有意義なことだと私ども思っておりまして、手続の透明性あるいは合理性にしっかりと留意しつつ、その参画の在り方について私どもは検討をしていきたい」とも述べているが、実際には、どのような手続でNPOの参画を行うのか、これもその手順について示されたい。

五 同じく国会審議における新エネルギーの定義をめぐる政省令についての質疑では、「廃棄物、とりわけ廃プラスチックなどのいわゆる化石燃料系の廃棄物による発電を対象に指定するような場合には、循環型社会形成推進基本法の基本原則にのっとって、本来再使用、再生利用すべき廃棄物の焼却が促進されないように、抑制的な観点から慎重に検討してまいりたい(中略)具体的には、(新エネルギーを)政令指定する場合には、これは環境省とも当然のことながらよく相談をしながら制定をさせていただきます。」(五月三十日、参議院経済産業委員会での河野資源エネルギー庁長官答弁)との政府答弁が行われている。では実際に、法律の主管官庁である経済産業省はどのような手続で環境省との「相談」を行っているのか、現在までの回数、開催月日、内容について示されたい。また、相談を行うまでの手順、相談の形式、公表の方法などについても示されたい。

六 同じく新エネルギー利用特措法に係る政省令に関する平沼大臣の国会答弁の中には、「(政省令等の)策定過程においてパブリックコメントに付すべきものについては当然その手続を経るとの心構えを持って、透明性等、そういったものを担保しつつ、私どもは真摯に、そして慎重に対処していきたい」(五月三十日、参議院経済産業委員会)というものもある。残念ながら、現在の状況は全く「不透明」な状況にあると思われるが、先の大臣答弁はどのように履行されるのか示されたい。

七 パブリックコメントは、いつ頃どのような形で求めることになるのか、現在想定されていることを示されたい。

八 五月三十一日から六月十九日までに資源エネルギー庁で行った「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法についての電子管理システムの構築等事業の委託先公募」について、どのような応募があり、誰のどのようなシステムが選ばれたのか。その応募されたものすべてのシステムの概要を含め示されたい。

九 このようなシステム公募の方法は、国会答弁で強調されていた「透明性」の確保や、NPOや専門家など広く国民の意見を聞くなどの、政省令制定過程の手続とは整合性を持たないように見えるが、政府答弁の趣旨はシステム公募の中でどのように担保されているのか示されたい。

  右質問する。