質問主意書

第154回国会(常会)

質問主意書


質問第三七号

一般戦災傷病者の実態調査に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十四年七月二十二日

大脇 雅子   


       参議院議長 倉田 寛之 殿



   一般戦災傷病者の実態調査に関する質問主意書

 太平洋戦争末期、日本本土一一三以上の都市に対する米軍の空爆などで、多数の民間人が傷病を負ったが、国との雇用関係又は雇用類似の関係になかったとの理由により、これら、いわゆる一般戦災傷病者は、戦後一貫して国家補償の観点に立った援護の枠組みから置き去りにされてきた。さらに、二〇〇一年(平成十三年)の省庁再編により、一般戦災傷病者問題を所管する省庁すらなくなったことが、先般明らかとなっている。
 一般戦災傷病者に関する調査は、一九八〇年(昭和五十五年)に厚生省(当時)が実施した「身体障害者実態調査」の一環として、愛知県など一部地域の抽出による調査が一回行われたのみである。したがって、その全容はこれまで正確に把握されてこなかった。
 戦時においては、国家総動員法を始め、防空法、戦時災害保護法等によって、国民は官民を問わず国土防衛に駆り出されており、まして一一三都市以上の地域拠点を対象に行われた米軍の無差別爆撃の下では、被害は等しく被り、官民の区別など付けようがないことは言うまでもない。
 しかし、政府は、戦争公務上の戦災傷病者に対しては、年金を始め、妻に対する特別給付金や、療養給付、療養手当、葬祭費、補装具の支給・修理、JR乗車船券無料取扱いなど、国家補償に基づく手厚い援護を整備してきた。また、軍属・準軍属の範囲も、戦後、逐次、拡充指定されてきている。他方、一般の戦災傷病者にはこれらの援護は一切なく、障害福祉年金を支給してきただけである。例えば、最重度の障害を負った場合、軍人軍属、準軍属の最高年額九七二万円であるのに比べ、一般の戦災傷病者は年額一三二万円であり、国による遺憾の意が表明されることも、慰撫されることもなく、戦後五七年が経過した。
 戦後処理における国家補償は、公正・平等に行うべきとの観点から以下質問する。

一、一般戦災傷病者の実態の把握は、今後一層困難となることが予想される。政府として、一般戦災傷病者の全国悉皆調査を可及的速やかに行い、正確な実情を把握すべきと考えるが、見解を明らかにされたい。

二、当該問題について、三月二十八日の参議院厚生労働委員会における質疑で、実態把握のための機関の立上げ及び調査の実施を要望したところ、坂口力厚生労働大臣は、「十分な検討をする」と答弁されたが、これらの進捗状況はどのようになっているか、明らかにされたい。

三、省庁再編の結果、一般戦災傷病者問題の所管省庁が無くなったことは、極めて遺憾である。いかなる理由で無くなったのか、明らかにされたい。

四、この際、一般戦災傷病者問題を担当する大臣と所管省庁を、早急に確定すべきと思うが、政府はどう考えるか。見解を明らか にされたい。

五、軍人軍属も一般戦災傷病者も、直接的戦争影響によって損傷を受けた犠牲者であることに何ら変わりはなく、イギリス、フランス、ドイツ等では軍人、民間人を問わず国家補償による援護措置が講じられている。日本においても「赤紙一枚」による扱いの差はできる限り縮小していくべきである。そのためにも今後、「戦傷病者戦没者遺族等援護法」の適用対象を広げ、一般戦災傷病者にも国家補償による救済を実施するべきであると考えるが、見解を明らかにされたい。

  右質問する。