質問主意書

第154回国会(常会)

質問主意書


質問第一三号

二〇〇二年度診療報酬改定に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十四年二月二十一日

小池 晃   


       参議院議長 井上 裕 殿



   二〇〇二年度診療報酬改定に関する質問主意書

 多くの国民は、安心して健康に暮らせる社会の実現を切望しているが、医療制度の相次ぐ改悪と患者負担増による受診抑制で、健康悪化が国民的規模で進行している。さらに、政府が「構造改革」の名の下に進める高齢者原則一割、健保本人三割などの負担増は、受診抑制を加速し、症状の重症化の結果、医療費は増大し医療保険財政を一層圧迫することにならざるを得ない。
 あわせて政府は、医療の内容と質を経済的に支える診療報酬本体の史上初の引下げを強行しようとしている。
 六か月超の入院料などの保険外負担の拡大などを含む診療報酬の引下げは、医療体制の弱体化を招き、患者が受ける医療の質と安全にも重大な影響をもたらすだけでなく、公的保険給付を縮小し、保険診療と保険外診療の混在によって国民皆保険制度を空洞化させることになる。
 以下、二〇〇二年度の診療報酬改定に限って質問する。

一、再診料と外来診療料の月内逓減制について

1 導入の理由の一つに外来の機能分担が挙げられているが、月内逓減制の導入がなぜ機能分担を促進するのか説明されたい。
2 診療科により平均受診回数に大きな違いがあるが、そのことは逓減制の実施に当たってなぜ考慮されないのか。

二、これまで、退院した患者に対して退院の日から一月以内に行った在宅療養指導管理の費用は、入院していた医療機関・他の医療機関ともに算定できなかったが、入院していた医療機関では退院時の指導管理を退院時に算定できた。今回、入院していた医療機関に加え、他の医療機関でも一定条件の下で算定可とするとある。しかしそもそも、在宅療養指導管理料に自院以外の退院患者を含む旨の規定がない限りは、入院していた医療機関に係る規定と解釈すべきであると考えるが、見解を示されたい。

三、褥瘡対策や医療安全管理体制を推進していくことは極めて重要であるが、今回褥瘡対策未実施、医療安全管理体制未整備の各減算を導入するに当たり、それらに掛かるコストをどの程度と見積もっているのか。そのコストが入院基本料において評価された上で、未整備、未実施の場合に減算するということか、見解を示されたい。

四、外来慢性維持透析の見直しについて

1 透析患者の生命予後にとって、透析時間は長いほど良いとされているが、このことについての見解を示されたい。
2 今回の改定では、透析実施時間による点数の段階的設定を廃止するとしている。これにより、障害者加算の対象とならない患者であって、医療上長時間の透析を必要とする場合には、診療報酬上の評価がされなくなるが、なぜこのようなことが許されるのか説明されたい。
3 外来慢性維持透析における食事加算が廃止されようとしているが、外来慢性維持透析における食事療法の意義についてどのように考えるか。

五、手術の施設基準の設定について

1 対象手術の選定基準では、診療報酬で一万点以上のものとされているが、その根拠を明らかにされたい。
2 経営的判断から病院によっては施設基準を達成しうる手術に絞り込み、その結果患者が手術を受けたい地域で受けることができないなどの弊害が生まれるのではないか。

六、小児入院医療管理料の1、2を算定する医療機関の数は、それぞれどの程度見込んでいるのか。地域連携小児夜間・休日診療料を算定する医療機関の数はどの程度見込んでいるのか。小児救急医療の問題解決のためには、初・再診料や外来診療料に対する小児・乳幼児加算、時間外・深夜・休日加算、及び入院基本料に対する乳幼児救急医療管理加算などの大幅引上げこそ必要ではないかと考えるがいかがか。

七、入院基本料の平均在院日数要件を、二十一日(入院基本料一)、二十六日(入院基本料二)にそれぞれ引き下げる根拠を示されたい。また、急性期入院加算及び急性期特定入院加算に係る平均在院日数要件を十七日に引き下げる根拠を示されたい。あわせて、現行の急性期加算を算定している医療機関のうちどの程度の機関がこの要件を満たすと見込んでいるのか明らかにされたい。

八、夜間勤務等看護加算の基準のうち、1cを廃止するとしているが、その理由を示されたい。また、現在1cを算定している医療機関数を明らかにされたい。

九、外来診療における看護業務の役割・意義についてどう考えるか。診療報酬で、外来看護業務に対する評価をすべきと考えるがいかがか。

十、長期療養の入院基本料等の特定療養費化について

1 六か月を超える入院の入院基本料等の特定療養費化で、どの程度の長期入院患者が退院すると推計しているのか。そしてそうした患者のうち、在宅療養を行う患者数、各介護保険施設へ入所する患者数(介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設)、及びそれ以外の患者数について、それぞれどれだけ見込んでいるのか明らかにされたい。
2 経過措置終了の二〇〇四年四月一日からは、入院時期にかかわらず、規定どおりに施行されるのか。
3 低所得者に対する負担軽減などの対策は行われないのか。

十一、外来総合診療料(外総診)の廃止については、「算定要件が複雑で、現場で運用の混乱が見られている」ということが理由とされているが、これは開始当初から指摘されていたにもかかわらず、なぜ今になって廃止なのか、理由を説明されたい。また、外総診の施行の結果を、どのように総括しているのか。廃止により新たな混乱を生むとは考えないのか。

十二、新生児介補加算・乳児介補加算を給付の公平性の観点から廃止するとしているが、現在どの程度算定しているのか。廃止後に新生児介補、乳児介補が必要な場合は全額患者負担となるのか。少子化対策を強化するという方針からすれば、むしろ給付をすべてに適用し公平性を担保するべきではないか、見解を示されたい。

十三、一九八一年以降の医療経済実態調査では、歯科個人診療所の収支差額は減少し続け、今回調査では最低の額まで減少している。医業経営の合理化や職員体制の縮小という手段での歯科診療所の経営は限界に達している。今回更に一・三%の歯科診療報酬引下げで良質な歯科医療の確保と歯科医院の経営が果たして成り立つと考えているのか。

十四、「かかりつけ歯科医初診料」は前回改定で新設されたが、そのときにはどの程度の算定率を見込んでいたのか。日本歯科医師会の昨年三月の調査では、十三・三%と極めて低い算定率にとどまっているが、この原因はいったいどこにあると考えるのか。今回の改定で、算定率はどの程度変化すると見込んでいるのか。

十五、補綴物維持管理について、「補綴物維持管理未実施施設における歯冠補綴物製作及び根管治療に係る技術料の低減」の理由を示されたい。

  右質問する。