質問主意書

第154回国会(常会)

質問主意書


質問第一二号

国際協力銀行及び独立行政法人日本貿易保険の環境ガイドラインに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十四年二月二十一日

谷 博之   


       参議院議長 井上 裕 殿



   国際協力銀行及び独立行政法人日本貿易保険の環境ガイドラインに関する質問主意書

 国際協力銀行(以下「JBIC」という。)及び独立行政法人日本貿易保険(以下「NEXI」という。)の環境ガイドラインは、一九九九年のG8ケルンサミットでの首脳共同宣言を受けて「二〇〇一年までに輸出信用機関のための共通の環境上の指針を作成」することが合意され、これまでに策定作業が進められてきたところである。
 JBICに関しては、第一四五回国会での国際協力銀行法案の採決時に、参議院財政・金融委員会及び衆議院商工委員会の附帯決議で、「徹底したアセスメント制度を導入」し、「十分な情報公開と透明性を確保」した上で、「国際水準に照らして十分な内容」を持ったガイドラインの策定が約束され、それを受けてNGOや学識経験者も参加して「国際協力銀行の環境ガイドライン統合に関する研究会」(以下「研究会」という。)が立ち上がり、提言を出すなど透明性を確保したプロセスを通じて、ODA、OOFに共通の「新環境ガイドライン案」が作成されたことは高く評価したい。しかし、残念ながら、最終的にパブリックコメントにかけられた新環境ガイドライン案は、この研究会の提言を十分に踏まえたものとは言えない点も見受けられる。
 一方、NEXIの「貿易保険における環境配慮のためのガイドライン一部改正案」(以下「ガイドライン一部改正案」という。)は、そのようなNGOとの対話の機会を持たないまま、パブリックコメントにかけられており、そのプロセス、内容において余りに不十分な点が多い。NEXIがよりどころとするOECDの輸出信用部会で議論が進められている現在の共通アプローチも、情報公開や住民との協議、明確な環境配慮水準が適切に規定されていないことで、国際NGO等から批判の声が上がっている。
 そこで、以下質問をする。

一 研究会が提言している「持続可能な発展」と人権に関する国際的原則を確認し、これに沿って融資業務を行うという点について、JBICの新環境ガイドラインに十分反映されていないのは、いかなる理由か。

二 研究会は、「特に影響が重大と思われる案件や異論の多い案件」について専門家から成る委員会を設置することを提言しているが、新ガイドライン案では単に「外部専門家の意見を求めることができる」とされている。専門家の意見を聞くだけでなく審査プロセスの透明性とアカウンタビリティを確保するためにも、専門家から成る委員会の設置を明記するべきではないか。

三 新環境ガイドライン案において、カテゴリFIの環境レビューの記述が、研究会の提言に比べ大幅に簡素化されたのはいかなる理由か。

四 新環境ガイドライン案は、モニタリングに関する記述が不十分である。世界銀行のガイドラインのように、カテゴリA案件に当たるものは、モニタリングの実施期間や現地調査によるモニタリングの実施などを更に細かく規定するべきではないか。

五 新環境ガイドライン案に示されている、融資等に係る意思決定を行うに先立つ情報公開の期間は、ODA、OOFそれぞれどのくらいの日数を十分な期間と認識しているか。

六 新環境ガイドラインの適切な実施を求めていくに当たって、研究会の提言では「公正・中立な立場から、遵守に関する異議申し立てを受け付け、専門性を持って必要な調査を行い、その結果に基づき銀行に対して勧告を行う」機関の設置が求められている。こうした機関の設置に向けたJBICの今後の取組について説明されたい。

七 新環境ガイドライン案では、対象プロジェクトに求められる環境配慮の条件を明記しているが、これらを確実に実行していくために不可欠な相手国政府や事業者の十分な理解を得るために、外務省やJBICが行うべき適切な働きかけとはどのようなものか。

八 新環境ガイドライン案は、カテゴリA案件に求められる環境アセスメント報告書を現地で公開することを要求しているが、これはプロジェクトによる社会環境影響を的確に地元住民に知らせる上でも非常に重要であり、とりわけ高く評価するところである。
 これを実効あるものにするため、外務省とJBICはパブリックコメントの期間中に主要な被援助国政府に説明をしてきたと聞く。その具体的な国名とそれぞれの回答内容を明らかにされたい。

九 環境アセスメント報告書を現地で公開することに、現地政府が消極的である場合の適切な説得方法について、具体例を示されたい。

十 NEXIとJBICは類似の業務を持っているため、もし環境ガイドラインの基準や条件が異なると、その緩やかな方に顧客が流れる恐れがあると認識しているか。

十一 NEXIは、ガイドライン一部改正の最終案公表の際、意見交換会やパブリックコメントでのどういった意見をどのように反映させ、又は反映させなかったか、その理由とともに明らかにされたい。

十二 NEXIに「貿易保険」の申請が来る段階では、既に環境影響評価など事前準備は終了していることが多い。最も重要である申請の事前準備段階での十分な環境配慮が行われることを確保するために、JBICの新環境ガイドライン案の第2部「対象プロジェクトに求められる環境配慮」をNEXIのガイドラインにも適用するべきではないか。

十三 NEXIのカテゴリA案件については、環境アセスメント報告書の提出を義務付け、これを公開するべきではないか。

十四 「環境配慮確認票」はNEXI自身が記入し、責任を持って事業の環境配慮を確認するべきではないか。

十五 JBICは、第三者からの異議申立てにより遵守状況について調査し勧告を行う専門性、独立性、公平性、透明性を確保した外部組織の設置を検討している。NEXIは、同様の機関を設置する考えは有しているか。

十六 貿易保険対象の事業の実施者が政府関係機関である場合、経済産業省は環境配慮のためのガイドラインの実効性を高めるため、具体的にどのような適切な働き掛けを行うべきと考えているか。

十七 JBICの新環境ガイドライン案と比べ、NEXIのガイドライン一部改正案では、情報公開について非常に曖昧な表現しか行っていない。パブリックコメントも踏まえ、情報公開の規定を具体的にどのように改善するのか。

十八 NEXIは、国際的な合意に沿って、現在改訂中の環境配慮のためのガイドラインを、二〇〇三年末に再度見直すとのことだが、それに向けたNEXI及び経済産業省の取組について、具体的に説明されたい。

十九 十分な環境配慮のためには、環境審査に関わる部署の充実が不可欠である。厳しい財政状況で大幅な正職員の増員が困難な中、NEXIは、JBICのように、専門知識と意欲を持つ人材を非常勤職員として雇用する考えを有しているか。

  右質問する。