質問主意書

第154回国会(常会)

質問主意書


質問第六号

労働基準法における監督機関に対する申告に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十四年二月一日

井上 美代   
八田 ひろ子   


       参議院議長 井上 裕 殿



   労働基準法における監督機関に対する申告に関する質問主意書

 今日、わが国の労働者は、就業人口の八割を超えており、その労働条件の改善を図ることなしに、日本社会の健全な発展を期待することはできない。この点で、労働条件を一般の契約事項にゆだねず、「労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。」(第一条 労働条件の原則)として、労働者保護の立場から使用者を規制している労働基準法が果たす役割は極めて重要である。
 ところが、長引く不況と史上最悪の雇用情勢の下、労働条件が急速に悪化し、解雇や賃金の遅欠配、サービス残業の蔓延、有給休暇取得への妨害など、労働基準法違反が頻発している。こういう中で、労働者の監督機関に対する申告も増大している。
 同時に、労働者の申告が様々な理由で抑制される中で、私たちの事務所へも、全国各地の労働者の妻や親など、思い余った家族から「毎月百五十時間以上の残業です。このままでは夫は死んでしまう」などという切実な訴えが手紙や電話、インターネットなどを通じて、たくさん寄せられている。
 周知のとおり、労働基準法第百四条は「事業場に、この法律又はこの法律に基いて発する命令に違反する事実がある場合においては、労働者は、その事実を行政官庁又は労働基準監督官に申告することができる。②使用者は、前項の申告をしたことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱をしてはならない。」と労働者の申告権と申告を理由とした不利益な取扱いの禁止を明文をもって規定している。
 言うまでもなく、本条が設けられたのは、「本法の適用事業が極めて広範囲にわたり、法の遵守を労働基準監督官の摘発にのみ委ねていてはその実効を期し難いので、申告によって監督機関の権限の発動を促進する」(厚生労働省労働基準局編著「労働基準法コンメンタール」)ためである。簡単に言えば、労働基準法など、労働者保護法令をきちんと守らせるために、労働者の参加と協力を求めているのである。
 事実、二〇〇〇年三月二十四日の最高裁における「電通過労自殺裁判」では、家族の調査とそれに基づく告発により、企業の長時間・サービス残業が断罪された。
 よって以下質問する。

一、労働者本人からの申告以外に、労働者の家族等から全国の監督機関に寄せられる労働条件に関する訴えや情報はどの程度あり、その内容はどのような特徴を持っているか、また、監督機関はどのような取扱い、処理を行っているのか、明らかにされたい。

二、労働者と起居を共にする家族が、出退勤時刻や賃金の遅欠配など、その労働者の生活と労働実態を客観的に把握できるのは言うまでもないことである。家族等から監督機関に寄せられる様々な情報は、労働法令違反の重大な事実を通報しているものが多く含まれており、労働基準行政の展開にいかすべきものである。
 したがって、これらの情報も労働者本人の申告に準じて取り扱うべきであるが、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。