質問主意書

第153回国会(臨時会)

答弁書


第百五十三回国会答弁書第七号

内閣参質一五三第七号
  平成十四年一月二十二日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


参議院議長 井上 裕 殿

参議院議員福島瑞穂君提出日本国債の格下げに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員福島瑞穂君提出日本国債の格下げに関する質問に対する答弁書

一の1及び2について

 平成十三年二月に財務省が公表した「財政の中期展望」で用いた前提条件は、第一に、平成十三年度当初予算における制度及び施策のほかには新規の施策を行わないことであり、第二に、名目経済成長率等の経済指標が一定であるということである。このような前提条件は長期間にわたる試算になじまないものであり、お尋ねのようにこれらを用いて長期間にわたる試算を行うことは困難である。
 なお、「財政の中期展望」に基づき、過去の借金の元利払いから新たな借金を差し引いたいわゆるプライマリーバランスを国の一般会計について試算すると、平成十四年度がマイナス十四兆九千億円程度、平成十五年度がマイナス十五兆九千億円程度、平成十六年度がマイナス十七兆五千億円程度であり、今後、その赤字幅は拡大していくと予測される。

一の3について

 「構造改革と経済財政の中期展望」(平成十四年一月十八日経済財政諮問会議答申)では、二千十年代初頭までに国と地方を合わせたプライマリーバランスの黒字化が達成されると見込んでいるが、民間部門の着実な経済成長が実現するとともに、国と地方を通じて財政構造改革に取り組み、簡素で効率的な政府を実現することがその前提となっている。そして、「構造改革と経済財政の中期展望」が検討の対象とした期間である平成十四年度から平成十八年度までにおいては、財政支出について、「配分の重点化、諸制度の改革、さらには事務事業の効率化、PFIの活用などを中心とする財政構造改革を推進することにより、歳出の質を改善するとともに、歳出を抑制する。」とされ、また、「受益と負担の関係についても引き続き検討を行うこととする。」とされている。お尋ねの方策としては、こうした議論も踏まえつつ、財政構造改革に向け取り組んでいく必要があると考える。

一の4及び5について

 一の1及び2についてで述べたとおり、「財政の中期展望」で用いた前提条件を用いて長期間にわたる試算を行うことは困難であるので、プライマリーバランスの黒字化の達成のために必要な消費税率の引上げ幅や一般歳出の削減率について、お尋ねのような試算を行うことは困難である。
 また、一の3についてで述べた「構造改革と経済財政の中期展望」におけるプライマリーバランスの見込みについては、内閣府が作成した経済財政モデルによる試算を参考としているが、プライマリーバランスの黒字化を消費税率の引上げだけで達成しようとする場合の具体的な引上げ幅や、一般歳出の削減だけで達成しようとする場合の具体的な削減率については、経済動向、各経済主体の行動等、不確実な要素が多いこともあり、お答えすることは困難である。

二の1について

 お尋ねの都市銀行の国債売買額の半期ごとの推移を把握することは困難であるが、日本銀行の金融経済統計により、昭和五十五年九月末からの都市銀行の国債保有額の半期ごとの増減の推移を試算すると、別紙のとおりである。

二の2について

 普通国債の保有状況については、国債証券で保有され、転々流通するためにその保有者を特定できないいわゆる現物債や、日本銀行の振替決済制度を利用しているいわゆる振決債のうち実質的な保有者を特定できない証券会社等の顧客からの預かり分等があり、保有者別の内訳を明らかにすることは容易ではないが、日本銀行の国債登録簿に登録されているいわゆる登録債の登録状況及び振決債の帳簿記帳状況から推計している。
 御指摘の普通国債の保有者別の割合は、その保有者を日本銀行、資金運用部、市中金融機関、証券会社及び個人等に分類して示したものであるが、個人等に分類しているものには、個人のほか、郵便貯金特別会計、簡易生命保険特別会計、国債整理基金特別会計、外国法人、公益法人等の日本銀行、資金運用部、市中金融機関及び証券会社に属さないものすべてが含まれている。
 登録債の登録状況及び振決債の帳簿記帳状況から推計すれば、お尋ねの海外金融機関その他の海外の法人及び海外の個人等の保有割合は全体で三・五パーセント、保有額は十一兆七千六百八十二億円となっている。なお、この内訳を推計することは困難である。

二の3について

 日本銀行の国債保有額が、平成二年度から平成十一年度までに、八兆五千億円程度から五十五兆円程度に増加した理由について日本銀行に照会したところ、次のとおりであった。
 すなわち、この間に日本銀行の国債保有額が四十七兆円程度増加したのは、長期国債の買切オペの実施、短期国債の買現先オペ及び買切オペの増加等によるものである。このうち、長期国債の買切オペは、その買入額をおおむね銀行券の伸びに対応させる方針の下で行っている。また、短期国債の買現先オペ及び買切オペの増加は、平成十一年度下期にいわゆるコンピューター二千年問題を背景とした金融機関の資金需要の高まりに対応して資金を供給したことや、いわゆるゼロ金利政策の効果を浸透させるように豊富な資金を弾力的に供給していることによるものである。

二の4について

 お尋ねの投資信託に組み込まれているものは、個人等の保有するものに含まれる。
 また、個人等には、二の2についてで述べたとおり、個人のほか、郵便貯金特別会計、簡易生命保険特別会計、国債整理基金特別会計、外国法人、公益法人等の日本銀行、資金運用部、市中金融機関及び証券会社に属さないものすべてが含まれている。

二の5について

 資金運用部は、資金運用部に預託された資金等を、法律の定めるところにより、予算について国会の議決を経、又は承認を得なければならない法人に対する貸付け等のほか、国債に運用している。
 このうち、国債保有額については、平成十二年度末において七十二兆六千八百二十三億円となっている。なお、その内訳は、利付国庫債券が六十九兆六千九百四億円、日本国有鉄道清算事業団債券承継国債が二兆九千九百十九億円となっている。また、利付国庫債券のうち、売戻条件付きで買い入れているものは、十二兆三千九百五十五億円である。

二の6について

 米国財務省の統計によれば、平成十三年八月末の米国国債の我が国における保有額は三千百十六億米ドルとなっているが、その保有者別の内訳は明らかになっていない。
 お尋ねの五つの分類のうち日本銀行の米国国債の保有額については、日本銀行は、外国為替市場及び債券市場への影響もあり、諸外国と同様に公表していない。また、資金運用部は米国国債を保有していない。市中金融機関、証券会社及び個人等の米国国債の保有額については把握していない。
 なお、財務省が平成十三年一月十一日に発表した「外貨準備等の状況」によれば、政府及び日本銀行の保有する外貨準備のうち米国国債を含む外貨証券の額は、平成十二年末で二千七百九十五億米ドルとなっている。
 また、財務省が平成十三年五月二十五日に内閣に提出した「平成十二年末現在の対外の貸借に関する報告書」によれば、我が国における米国国債を含む外国債券の保有額は、外貨準備を除いて、平成十二年末において、公的部門が七兆七千二百十億円、銀行部門が三十兆七千四百五十億円、その他部門が七十四兆八千二百四十億円となっている。

二の7について

 政府は、外国為替資金特別会計、簡易生命保険特別会計及び郵便貯金特別会計において米国国債を含む外貨証券を保有している。
 このうち、外国為替資金特別会計の保有については、外国為替市場における平衡操作等によって取得した外貨を用いて、外貨準備の運用の一環として行っているものである。簡易生命保険特別会計の保有については、加入者から支払われた保険料等を積み立てた積立金である簡易生命保険特別会計積立金を財源として、その運用の一環として行っているものである。郵便貯金特別会計の保有については、郵便貯金の受入金である郵便貯金資金を財源として、その運用の一環として行っているものである。

二の8について

 我が国における米国国債の保有額の増減は、国を含めた保有主体が金利の動向等様々な要因を勘案し、各々の判断において米国国債への投資について決定した結果であると考えられ、お尋ねの原因について、一概に申し上げることは困難である。
 お尋ねの五つの分類ごとの米国国債の保有額の増減については、二の6についてで述べたとおり、米国財務省の統計において明らかになっていない。
 このうち日本銀行の米国国債の保有額の増減については、日本銀行は、外国為替市場及び債券市場への影響もあり、諸外国と同様に公表していない。外国為替資金特別会計についても同様である。また、資金運用部は米国国債を保有していない。市中金融機関、証券会社及び個人等の米国国債の保有額の増減については把握していない。

三の1について

 御指摘の「隠れ借金」的な手法が何を意味するのか明確ではないが、平成十三年度第二次補正予算については、経済環境の急激な変化に対応し、構造改革をより一層推進しつつ、デフレの進行とあいまって景気が加速度的に悪化することを回避するために、高い経済効果が期待できる施策を緊急に実施することが必要であるとの考え方から編成することとしたものであり、また、その財源については、安易な国債増発によることなく、政府の保有資金を活用することとしたものである。

三の2について

 国債の今後の格付けの動向を予測することは困難だが、国債に対する信認が低下し、それに伴い長期金利が上昇すれば、利払費の増大による財政の硬直化、民間投資の抑制等が引き起こされるおそれがあることは認識している。このため、政府としては、財政構造改革に積極的に取り組むこととしており、平成十四年度予算においては、その第一歩として、国債発行額を厳しく抑制するとともに、歳出の徹底した見直しを行った。今後は、「構造改革と経済財政の中期展望」も踏まえつつ、プライマリーバランスの黒字化に向けて財政構造改革に取り組んでまいりたい。

三の3について

 我が国の国債は、各回の入札において円滑かつ安定的に消化されており、市場から十分信認を得ているものと考えている。
 なお、海外格付け機関による格付けが将来の国債市場に与える影響については、国債市場は景気の動向等様々な要因によって変動するものであるので、そうした特定の要因の影響を分析し、予測することは困難である。
 いずれにしても、政府としては、我が国の国債について、市場からの信認を維持し、将来の発行に支障を来すことのないよう、早急に財政構造改革を始めとする各般の構造改革を積極的に推進するとともに、国債の発行に当たっても、市場参加者の要望を適切に把握し、償還年限間の均衡のとれた適切な発行計画の策定、市場実勢を反映した発行条件の設定等に努めてまいりたい。

三の4について

 お尋ねの具体的な指針及びその実現への方策については、一の3についてで述べたとおり、本年一月十八日に経済財政諮問会議が「構造改革と経済財政の中期展望」の中で示したところであるが、政府としては、こうした議論も踏まえつつ、財政構造改革に向けた取組を進めてまいりたい。

別紙