第153回国会(臨時会)
答弁書第三号
内閣参質一五三第三号 平成十三年十一月十三日 内閣総理大臣 小泉 純一郎
参議院議員櫻井充君提出ソンドゥ・ミリウ水力発電事業に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員櫻井充君提出ソンドゥ・ミリウ水力発電事業に関する質問に対する答弁書 一及び九について 一般に、円借款の供与は被援助国からの要請を受けて実施するものであり、ソンドゥ・ミリウ水力発電計画(以下「本件計画」という。)についても、被援助国であるケニア共和国(以下「ケニア」という。)からの円借款供与の要請を受けて、我が国としてその必要性等を検討した結果、平成九年一月に本件計画の第一期分への円借款供与に係る交換公文を締結したものである。また、現在、ケニア側の環境、社会面での取組及び債務償還可能性について我が国として確認することを前提として、第二期分への円借款供与に係る交換公文につき署名の準備を進めているところである。
二について ケニアにおいては、電力の供給不足のため計画停電が日常的に実施されている状況にある。本件計画は、ケニア西部のソンドゥ川から取水の上、流れ込み式発電所に導水し発電することにより、このような状況の改善に資するものであり、また、安定的電力供給の確保及び水力資源活用による石油購入外貨の節約等の効果が期待され、本件計画を実施する地域の住民を含め、広くケニア国民の利益になるものと考えている。 三について マウ森林は、ケニアの国内法に基づき、同国の天然資源省森林局によって管理されており、御指摘の「森林破壊の問題について現地調査や科学的な検討」は、ケニア側において、実施の要否を含めた検討が行われるものと考えている。
四について 本件計画についての事業実施機関であるケニア電力公社は、土木工事の実施前から、本件計画の内容に加え、ソンドゥ川の水の発電所への転流や放水路を通じての復流による流量変化、住民の移転や一部の土地の収用に伴う住民の生活への影響、ソンドゥ川の渡し船事業への影響等に関する説明を地域住民に対して行ってきており、これらの影響に対しては、補償方法や補償内容等についての関係住民との協議及び交渉を経て、その補償手続はほぼ終了していると承知している。また、事業実施機関は、今後とも定期的に地域住民との対話を行っていく予定であり、住民の移転後の生活状況について、事業実施機関、事業実施業者、地域住民、非政府組織(以下「NGO」という。)及び有識者から構成される本件計画に関する技術委員会(以下「技術委員会」という。)での議論等を踏まえ、モニタリング及び評価を実施していくものと承知しており、我が国としても事業実施機関に対して適切な対応を促していくこととしたい。 五について 国際協力銀行は、平成八年六月に本件計画の審査を行った際、本件計画が移転住民の移転後の生活や生活手段喪失者の生活にも配慮したものであることを確認したと承知している。そして、事業実施機関は、住民の移転や一部の土地の収用に伴う住民の生活への影響及びソンドゥ川の渡し船事業への影響に対し、補償方法や補償内容等についての関係住民との協議及び交渉を経て、補償手続をほぼ終えており、国際協力銀行としてもその過程を注視してきたものと承知している。
六について 発電に必要な流量を確保できるのが「雨期の六か月間だけである」とする御指摘がいかなる根拠に基づくものか明らかではないが、本件計画は、発電のための転流によってソンドゥ川の河川維持が害されることのないよう必要な河川維持流量を確保しつつ、流量が少なくなる乾季も通じてソンドゥ川の季節的な流量変動に応じた発電を行うものである。
七について 本件計画の完成後に発電される電力は、ケニアの全国送配電網を通じてケニア全国の産業及び生活用の電力として供給されることとなっており、特定の産業や生活用への電力配分量があらかじめ決められているわけではないと承知している。河川流量の変動に伴う発電量の変動がケニア全国の電力需給バランスに与える影響については、他の発電所の発電量を変化させること等により調整されるものと承知している。 八について 本件計画においては、過去約四十年間の日ごとの実測流量を基に年間発電可能量が算出されているが、月ごとの発電計画は策定されていないと承知している。
十について 技術委員会は、平成十三年一月に現地の事業実施機関、事業実施業者、地域住民、NGO及び有識者が参加した対話集会における決議を受けて設立され、事業実施機関、事業実施業者、地域住民、NGO及び有識者から構成されていると承知している。技術委員会の現委員長は、事業実施機関から選出されているが、これは、事業実施機関が本件計画実施に係る責任主体であること等にかんがみ、最初の技術委員会において出席者の協議を経て決定されたものと承知している。また、その後も技術委員会の構成について検討が行われ、必要な構成員が追加されたと承知している。
十一について 御指摘の「より詳しい会計資料」が具体的にいかなるものを指すのか明らかではないが、円借款により実施される本件計画においては、契約企業が行う仕事の出来高等についての対価の支払請求に関し、契約発注元である事業実施機関が当該支払請求の内容を精査し、国際協力銀行がその結果を確認するところ、その過程における支払請求書類等については、支払日や支払金額といった契約企業の事業上の信用に係る情報、工事や調達の単価など契約企業の競争力に係る情報等が含まれており、このような情報を公にすることは当該企業の正当な利益を害するおそれがあることから答弁を差し控えたい。 |