質問第七号
日本国債の格下げに関する質問主意書
右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。
平成十三年十二月六日
福島 瑞穂
参議院議長 井上 裕 殿
日本国債の格下げに関する質問主意書
一一月二八日、米国格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ及び英米系格付け会社のフィッチは日本の長期国債の格付けを上から3番目の「AA」に引き下げた。これは主要七か国(G7)の中ではイタリアと並び最低水準である。もう一つの米国格付け会社ムーディーズは、既に昨年九月、日本国債を上から3番目に格下げしており、一二月四日には更に上から四番目の「AAマイナス」に相当する「Aa3」に引き下げた。各社とも日本国債については更に格下げ方向であると伝えられており、日本は近いうちにイタリアを下回り、主要七か国の中で最低の格付けとなる可能性が高い。このような状況を踏まえ、政府は自ら発行する国債の信頼性確保のために十分な手立てを行わねばならない。よって、以下質問する。
一 日本財政の今後の展望について
1 「財政の中期展望」(二〇〇〇年度-二〇〇四年度)の前提条件(実質経済成長率二%等)をそのまま使って二〇二五年度までの国債費と地方債費の推移の試算を示されたい。
2 前項の試算で二〇二五年度までに限ると国の財政のプライマリー・バランスの達成は可能か。
3 もし不可能だとすれば、この試算で二〇二五年度までに国の財政でプライマリー・バランスを達成するためにいかなる方策があるか。
4 この達成のために、二〇〇三年度から消費税の引上げだけで行うと仮定すれば、消費税の引上げ幅はいくらになるか。
5 この達成のために、二〇〇三年度から一般歳出の削減だけで達成すると仮定すれば、毎年度の削減率はいくらになるか。
二 日本国債の保有状況等について
1 一九八〇年度からの都市銀行による国債売買額の半期ごとの推移を示されたい。
2 日本国債の保有状況を見ると、一九九九年度で日本銀行が一六・六%、資金運用部が二一・七%、市中金融機関が二三・三%、証券会社が一・七%、個人等が三六・六%となっている。この内訳では、海外の法人や個人等が保有している日本国債の保有状況が読み取れないが、海外金融機関、その他の海外の法人及び個人等の保有量はそれぞれ何%で、合計金額は何兆円になるか示されたい。
3 日本銀行の国債保有額は、一九九〇年度には八兆五千億円程度で全体の五・二%であったが、一九九九年度には五五兆円で一六・六%と、金額で七倍、比率で三倍になっている。日本銀行の国債保有額がこのように跳ね上がった理由は何か。
4 一九九九年度に、最も国債保有額が多かったのは個人等で一二一兆四千億円に上る。個人等の国債保有額には、MMFなどの投資信託に組み込まれたものも含まれているのではないか。また、個人等の「等」にはどのようなものが含まれるか。
5 資金運用部の国債保有額は七二兆円余りである。資金運用部はこの保有国債を、現在どのように運用しているのか。
6 一方で米国国債の保有額を見ると、二〇〇一年八月の保有量は日本が三一一六億ドルと海外保有者の中で二六%以上を占めている。日本国内での、米国国債の保有量の内訳を日本国債と同じように日本銀行、資金運用部、市中金融機関、証券会社及び個人等に分類すると、その金額と比率はどのようになっているか。二〇〇〇年末の保有額で示されたい。
7 政府が米国国債を保有している場合、その財源はどこから出されているのか。
8 米国国債の保有額の推移を見ると、今年に入って日本の保有額は減っており、米国国債を手放していることが読み取れるがその原因は何か、また、設問6で挙げた五つの分類の中で、どこがどれだけ手放しているかを示されたい。
三 日本国債の信頼性確保について
1 政府は今年度の二次補正予算の編成に当たり、国債整理基金特別会計に国債償還財源として積み立てられているNTT株の売却収入を流用する方針と聞いているが、このような手法はいわゆる「隠れ借金」に他ならず、これにより国債三〇兆円枠を堅持したとしても、日本国債の信頼性が回復されることはなく、むしろ金融市場の不信感を強めかねない。したがって、国債の信頼性回復のため、債務を先送りする「隠れ借金」的な手法は採るべきでないと考えるが、政府の見解を示されたい。
2 国債の格下げが更に行われ、ダブルA(AA)を維持できず、シングルA(A)に下がったときには、国債の信用度はワンランクの低下を超えて大幅に落ちてしまうと指摘されている。シングルA(A)に下がれば、市中銀行など国債保有を敬遠し始めるという予測もある。そのような事態になれば、長期金利が上昇し、政府の財政赤字はますます増大する。このような事態を政府は予測していないのか。
3 海外格付け機関による国債の格下げが行われるたびに、政府は民間会社の見解にはコメントする立場にない、我が国の国債の信任にいささかの問題もない旨の見解を繰り返しているが、そもそも国債が信任できるとする根拠は何か、明らかにされたい。
また、現実の金融市場において格付け機関の影響力は無視することはできず、このまま格下げが続けば、将来の国債発行に支障を生じることは否定できない。この点について政府の見解を示されたい。
4 国債の格付けは、引き続き「弱含み」とされ、今後の動向を注視する必要がある。このような中で、政府は「聖域なき構造改革」を推進し、財政を健全化することで国債に対する信頼性を確保しようとしているが、そのためには具体的な指針の提示とその堅持が不可欠である。この点について、具体的な指針を示した上で、その実現への方策について明らかにされたい。
右質問する。
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