質問主意書

第153回国会(臨時会)

質問主意書


質問第五号

電源三法交付金事業である刈羽村源土運動広場に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十三年十月二十六日

福島 瑞穂   


       参議院議長 井上 裕 殿


   電源三法交付金事業である刈羽村源土運動広場に関する質問主意書

 新潟県刈羽村の源土運動広場は刈羽村が電源三法交付金事業として総合運動センター「ラピカ」とともに建設した野球場やテニスコートなどを含むスポーツ施設である。「ラピカ」では建設後、様々な問題が明らかになり電源三法交付金事業の在り方が問われることとなっている。
 同時期に同じ刈羽村の電源三法交付金事業として交付金が交付された源土運動広場でも、ゲートボール場で雨が降ると何日間も水たまりが出現して競技ができない状態となったり、テニスコートの法面や多目的広場の表面には、建設廃材と思われるコンクリートやアスファルト片や木片、それに古タイヤやビニールが無数に露出している。源土運動広場においても、このように明らかに欠陥が目に見える形で現れているのである。しかるに「ラピカ」に対しては、経済産業省による調査と電源三法交付金の一部返還決定等が行われ、会計検査院の調査も進められているが、源土運動広場については同様の調査検討が進められているのか不透明で判然としていない。
 ゲートボール場のコート面の不等沈下は現在も継続しており、設計上は一面の標高差が七・五センチメートルのはずのものが、二〇〇一年九月現在、最大で三・五倍の二六センチメートルもの標高差となっている。設計では九・三二メートルから九・二〇メートルのコート面の標高は、最高で九・二一メートル、最低で八・七七メートルとなっている。中央線上の東側は設計標高九・三二メートルのものが八・八六メートルとなっており、四六センチメートルも沈下している。二〇〇〇年六月から二〇〇一年九月までの間の測量で、沈下が二一センチメートルあったこと、現在も沈下が継続していることを地元関係者が確認している。一九九八年春刈羽村は、「今後の沈下は一〇から三五センチメートル(全沈下量の二〇%程度)で沈下は終息傾向にある」と判断して、仕上げ工事を実施したようであるが、沈下の終息判断は誤っていたと言わざるを得ない。設計どおりの標高に仕上げられたのであれば、現在まで想定以上の沈下となっており、今後も沈下は続くと推定される。
 ゲートボール場は竣工一年後の二〇〇〇年五月には、早くも八面のうち東側四面の大修理を実施しているほどである。こんな状態であるにもかかわらず、ゲートボール場の竣工時の施工監理記録(標高記録)が存在しない。それでも検査には合格し、交付金が支払われているのは極めて不自然である。よって以下質問する。

一、ゲートボール場の設計上の標高は、東西方向に中央部を一律に九・三二メートルであり、南北方向に〇・五%の勾配をつけ、中央部から二四メートル地点で一律九・二〇メートルとなるよう設計されている。施工前の旧地表面は地形図の標高から西側は八・三六メートル、東側は七・四二メートルで傾斜していたことが読みとれる。また、ゲートボール場計画地の五か所で実施したサウンデング調査の結果からは、著しい基礎地盤の不均一(軟弱層の層厚変化)を確認できる。さらに、ゲートボール場計画地の三か所で実施した沈下板の観測結果から、全沈下量は約四〇センチメートルと一三四センチメートル、一二六センチメートルと推定しており、圧密沈下を来す軟弱層の不均一を物語っている。
 このような地形・地質条件で東西方向に一定標高のゲートコート面を計画した結果、旧地盤傾斜に準じて東側が大きく沈下し、中央部にひび割れが発生した。ゲートボールコートの設計標高は、一般的な設計手法として適当と考えるか。

二、源土運動広場のゲートボール場は、鹿島道路特許工法の難透水性舗装=ファインクレー工法で設計、施工している。軟弱地盤に関して初歩的、常識的知識さえあれば、不等沈下が想定される基礎地盤上の舗装は透水性とすることが一般的である。財団法人日本体育施設協会のゲートボール場建設指針作成委員会企画編集による「ゲートボール場建設指針」でも、「IV.コート面の設計 1.屋外コート (2)軟弱地盤の基礎処理」の部分に「基礎処理を行ったとしても深層における圧密沈下が予想される場合にはコートの不等沈下は防ぎきれない。従って多少の沈下でも影響の少ないクレイ系コート、または全天候系でも置敷タイプ、透水タイプなどの使用を検討することが必要である」と記載されている。しかるに、源土運動広場のゲートボール場では透水性でなく難透水性舗装を選択した。その結果、降雨後には何日も水たまりが生じている。ゲートボールコートの舗装工法として、ファインクレー工法を選択したことは、一般的な設計手法として適当と考えるか。

三、源土運動公園の予定地における産業廃棄物の存在は、一九八八年に地質調査した際のボーリング柱状図にも記載されている。また、一九九六年、一九九七年の施工監理報告の添付写真にも無数の産業廃棄物が写っている。施工や施工監理を実施した者が、この産業廃棄物の存在を知らなかったとは考えられない。それにもかかわらず、テニスコートの法面や多目的広場の表面に産業廃棄物が露出するような施工が行われ、施工監理関係者は改善の指摘をしなかった。その結果、源土運動広場の現況は先に述べたような実態になっている。産業廃棄物が表面に露出するような施工や施工監理は、一般的な設計手法として適当と考えるか。

四、財団法人電源地域振興センター(以下「センター」という。)は、一九九六年度に刈羽村での振興相談事業として石原・山口計画研究所(以下「研究所」という。)と「源土運動広場整備工事計画技術検討調査」を契約している。そこで研究所とセンターの関わりについて以下の点を明らかにされたい。

1 研究所は建築意匠設計事務所と理解するが、センターは何を根拠に技術検討の事業者として選定したのか。
2 研究所と契約したのは、センターの意向か、刈羽村の要請か、それ以外の意向か。それ以外であれば、どこの意向か具体的に名前を挙げて示されたい。
3 研究所が源土運動広場整備工事計画技術検討調査を行ったのは、源土運動広場工事が開始された年である。この調査結果は、工事にどのように反映されたのか。
4 センターは、その他の電源地域の案件でも研究所と契約しているが、それぞれの地域で成果はどのように事業に反映しているか。

五、刈羽村は、ゲートボール場の沈下に関して「想定以上の沈下となっているが、所詮は老人の遊び場、修繕しながら維持管理すれば良い」と言っていると聞く。また、産業廃棄物の露出は「拾い集めれば済む」と言っていると聞く。
 ゲートボール場の沈下は、土質工学等の認識を欠く初歩的設計ミスや判断ミスから生じたことで、不可抗力とは考え難い。竣工時の標高記録が存在しない工事竣工検査も信じ難いことである。産業廃棄物の露出は漫然と施工し、かつ施工監理もされなかった結果ではないかと想起される。源土運動広場では一般的公共事業としては信じ難いことが行われていたにもかかわらず、経済産業省も刈羽村もそして会計検査院も、これを問題視しているようには見受けられない。
 一般的公共事業では、事業成果の品質を保証するために検査の基準が設けられている。例えば高さは基準から二センチメートル以内に収めるとか、長さは五センチメートル以内になるようにすることといったようなものである。ところが源土運動広場の工事では、基準と比較すべき標高等の竣工時記録が存在しないにもかかわらず、電源三法交付金事業としての検査に合格している。また、工事の欠陥が見つかっても交付金支出の問題が指摘されない。電源三法交付金事業の場合、一般的公共事業とは異なり検査基準が存在しないのか。
 また、使用に支障を来しているにもかかわらず、なぜ経済産業省や会計検査院がこのような欠陥工事を問題にしていないのか、その理由を明らかにされたい。

  右質問する。