質問主意書

第153回国会(臨時会)

質問主意書


質問第二号

歯科用水銀アマルガムに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十三年十月十五日

櫻井 充   


       参議院議長 井上 裕 殿


   歯科用水銀アマルガムに関する質問主意書

 歯科用水銀アマルガム(以下「アマルガム」という。)は、主に銀、スズ、銅から成る合金粉と水銀を練和し、主にう蝕治療のため歯に充てんする歯科治療材料である。現在、アマルガムは健康保険適用歯科材料として認定されている。
 アマルガム中の水銀量は約五〇%と言われている。水銀は、毒物及び劇物取締法において毒物に分類されており、常温で蒸発し、作業場の空気を汚染する。また、強熱すると有害な煙霧及びガスを発生する。有害性については、吸入すると有害で、急性中毒として、歯肉炎、肺炎、腎障害、循環器障害など、慢性中毒として、歯肉炎、腎障害、聴力障害、視野狭窄、精神障害などが知られている。
 このような水銀の有害性にかんがみ、アマルガムによって水銀中毒を生ずるか否かについて欧米の専門家によって討議されたことがあった。その結果は、アマルガムからの水銀蒸気あるいは水銀イオンの溶出は微量であり、急性水銀中毒あるいは慢性水銀中毒を生ずることはないというものであり、厚生労働省は、これが歯科界における通説であるとしている。なお、同時に水銀に対する過敏症の既往歴のある患者にはアマルガムを使用しないこと等の注意事項も喚起されている。
 しかし、アマルガムは一九七〇年代ごろには盛んに使用されていたが、近年は使用量が減少している。それは、アマルガムより確実に安全な歯科材料ができたからである。大学においても、今やアマルガムについて学ぶことは少ないという。一方、最近は歯科用金属アレルギーが注目を集めるようになった。NHKや民間のテレビ放送の中でも、アマルガムに含有される水銀による金属アレルギーが紹介されている。アマルガムが人体に悪影響を及ぼす可能性を持っているというのである。
 このような現状から、国民にとってアマルガムが必要なのかどうか検討する必要があると考えている。
 そこで、以下質問する。

一 我が国において、現在、年間何本の歯牙がアマルガム充てんされているのか。また、何人程度の患者がアマルガム充てんを受けているのか。それらから推察して、歯科治療現場において水銀がどの程度使用されているのか明らかにされたい。

二 アマルガムに含まれる水銀は、我が国では毒物及び劇物取締法で毒物に分類されているが、毒物を口腔内に詰め込んでいる事実を認めるか。

三 水銀は常温で気化し、作業場の空気を汚染するとされているが、アマルガムに含まれる水銀は口腔内で気化しないのか。また、アマルガムが、咀嚼や歯磨き又は歯科において除去される際、水銀蒸気を遊離する可能性はないのか。

四 水銀は皮膚から吸収されて中毒を起こすこともあるとされるが、口腔粘膜からは吸収されるのか。

五 ヨーロッパ諸国においてアマルガムの使用を禁止する動きがあるが、その理由は何か。また、実際に禁止されている国はあるのか。

六 水銀は強熱すると有害な煙霧及びガスを発生するが、火葬時に遺体の体内に詰め込まれたアマルガムから発生すると思われる有毒ガスが、火葬場に勤務する職員の健康を害する可能性はないか。また、火葬場周囲の環境汚染につながる可能性はないのか。

七 歯科においてアマルガムを除去する場合、歯科医院からの排水に水銀が含まれるため、環境が汚染される可能性があるが、政府はどのように考えているか。また、除去する際に生じるアマルガム粉塵や、水銀蒸気の吸入によって、歯科医師の身体に悪影響が出ると考えられないか。

八 アマルガム充てんのある小児は、統計学的に有意にアトピー性皮膚炎に罹患しているという報告があるが、政府の見解を示されたい。

九 最近の歯科材料の研究に伴い、アマルガムに代わる歯科材料が登場している。この際、アマルガムの使用を禁止し、危険性の少ない材料への転換を図るべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。また、使用を禁止しないのであれば、なぜ必要なのか、積極的理由を明らかにされたい。

  右質問する。