質問主意書

第152回国会(臨時会)

質問主意書


質問第六号

咽喉部や気管カニューレ、気管内チューブなどの中の痰や分泌物を吸引する行為をヘルパーに特例として認めることに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十三年八月九日

渡辺 孝男   


       参議院議長 井上 裕 殿


   咽喉部や気管カニューレ、気管内チューブなどの中の痰や分泌物を吸引する行為をヘルパーに特例として認めることに関する質問主意書

 介護保険が施行され、本制度の下に在宅介護サービス給付を受ける要介護者を擁する家庭が増えている。
 その中には、気管切開部より気管カニューレを装着し、あるいは気管内挿管状態で人工呼吸器を使用している重症要介護者を在宅医療と在宅介護の両サービスを併用して家族介護を行っている家庭も存在している。
 このような重症の呼吸障害を有する要介護者を介護している家庭では、家族が睡眠のため休息を取る目的で在宅介護サービスの保険給付を受け、ヘルパーに要介護者の介護を依頼することがある。その介護時に咽喉部や気管カニューレの中の痰や分泌物を吸引除去する必要が当然ながら生じてくる。しかし、現行の医療法では、医師や看護婦(士)、保健婦(士)、助産婦以外のヘルパーがこれらの行為を行うことは許されていない。したがって、休息中の家族がヘルパーの連絡を受け、家族の責任の下家族自身が吸引行為を行っており、せっかくのヘルパー派遣を受けながら休息が取れない状況にある。
 そこで、これらの状況を改善する必要があると考え、以下四項目について質問する。

一、一定の条件下において、ヘルパーに咽喉部や気管カニューレや気管内チューブなどの中、あるいはそれらの末端周辺にたまった痰や分泌物を吸引除去する行為を特例的に認め、家族介護者の休息を可能ならしめるべきである。この点に関しての政府の見解を示されたい。

二、右の場合、ヘルパーに痰や分泌物の吸引を認めるための「一定の条件」について私は次のような考えを持っている。

(一) 緊急の場合であって、医師や看護婦(士)による速やかな医療給付が不可能な場合に限定すること。
(二) 担当ヘルパーは一級ヘルパーとし、国による医療・介護講習会((1)気道の解剖と呼吸の生理、(2)感染症とその予防、(3)気管切開や気管内挿管と人工呼吸器による呼吸管理、(4)人工呼吸器、気管内チューブ、気管切開部用気管カニューレの構造と機能、及びその操作と取扱い、(5)人工呼吸法や心マッサージなどの救急蘇生法、など)を受講し、その知識と実技を習得した者に限定すること。
(三) 主治医が担当ヘルパーに対し、患者の病状に応じた対処などについて十分な指導を行い、緊急の場合に安全に吸引行為を行えると判断した場合に限ること。
(四) 意思の表明が可能な場合は、要介護者本人とその同居している家族の承諾があること。要介護者が意思の表示ができない場合は、家族の承諾があること。
(五) ヘルパーは当該吸引行為を行ったときに異常を発見した場合には、即刻主治医に連絡し、訪問医療若しくは救急医療を受けられるような体制が出来上がっていること。
(六) ヘルパーは当該吸引行為を行った場合で、特別な異常を認めない場合には、二十四時間以内に主治医に報告書を提出すること。報告書には吸引行為を行った理由、吸引行為を行った年月日、時刻、吸引前後の要介護者の異常の有無などを記載すること。

 私はヘルパーに特例として吸引行為を認める「一定の条件」として少なくとも前記の(一)から(六)までの六点のすべてを満足する必要があると考えている。この点に関しての政府の見解を示されたい。

三、一及び二で示したような形で特例的にヘルパーに吸引行為を認め、それを実施する場合には医療・介護サービス提供側と患者とその家族側が共にこの特例的措置を利用しやすいように、主治医に対してはヘルパーへの指導に対する報酬を医療保険から支払い、担当するヘルパーに対しては特別加算として介護報酬に上乗せすることを介護保険制度の中で認めることが重要と考える。この点に関しての政府の見解を示されたい。

四、厚生労働省としてヘルパーに特例として吸引行為を認めることを具体的に検討しているのであればその案を示されたい。

  右質問する。