質問主意書

第151回国会(常会)

答弁書


答弁書第四二号

内閣参質一五一第四二号

  平成十三年七月十七日

内閣総理大臣 小泉 純一郎   


参議院議長 井上 裕 殿

参議院議員加藤修一君提出霞ヶ浦における環境ホルモンについての調査研究及び解明等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員加藤修一君提出霞ヶ浦における環境ホルモンについての調査研究及び解明等に関する質問に対する答弁書

一について

 内分泌かく乱化学物質(いわゆる環境ホルモン)については、科学的には未解明な点が多く残されているが、世代を越えた深刻な影響をもたらすおそれがあり、その解決は国民の安全安心に係る重要な問題であることから、政府として、各種の調査研究を進めているところである。
 お尋ねの霞ヶ浦における内分泌かく乱化学物質については、つくば市にある独立行政法人国立環境研究所において、平成十一年度から「内分泌かく乱化学物質総合対策研究」の一環として、霞ヶ浦における内分泌かく乱化学物質の存在量に関する調査、内分泌かく乱化学物質のヒメタニシの繁殖に及ぼす影響に関する研究等を行うとともに、本年三月、同研究所に内分泌かく乱化学物質の研究の中核的施設として環境ホルモン総合研究棟を設置し、引き続き調査研究を行っている。また、国土交通省においては、平成十年度から全国の一級河川のうち霞ヶ浦を含む国が直接管理している区間において、内分泌かく乱化学物質に関する水質調査を行っている。
 今後とも関係機関の連携を図りつつ、霞ヶ浦における内分泌かく乱化学物質に関する調査研究を一層進めてまいりたい。

二について

 環境省においては、「内分泌攪乱化学物質問題に関する国際シンポジウム」を平成十年度から京都市、神戸市、横浜市と毎年開催してきたところであるが、本年度は、独立行政法人国立環境研究所に環境ホルモン総合研究棟を設置したことを踏まえ、十二月につくば市で開催することとしており、霞ヶ浦に関する調査研究の成果の紹介、一般市民の参加機会の確保等についても配慮してまいりたい。

三について

 国土交通省においては、平成十年度から三か年にわたり、地方公共団体と共同で下水道における内分泌かく乱化学物質に関する調査を実施してきた。この調査結果によれば、多くの内分泌かく乱化学物質は下水処理の過程で九十パーセント以上減少するとともに、高度処理を行えば、更に除去効果が高くなることが確認された。
 また、厚生労働省においては、平成十一年度から「内分泌かく乱化学物質の水道水中の挙動と対策等に関する研究」を実施してきており、本年度においては、浄水処理過程における内分泌かく乱化学物質の効果的な除去対策についての研究を実施しているところである。
 今後とも関係各省において相互に連携を図りつつ、必要な調査及び検討を行い、内分泌かく乱化学物質への適切な対応に努めてまいりたい。

四について

 霞ヶ浦に下水を放流している区域の下水道普及率は、平成十一年度末現在で五十三パーセントであるが、すべての下水処理場で内分泌かく乱化学物質の除去効果が極めて高いとされている高度処理を実施している。今後とも、国庫補助制度等を通じて、霞ヶ浦周辺地域の下水高度処理施設の整備に努めてまいりたい。
 また、霞ヶ浦から取水しているすべての上水道は、内分泌かく乱化学物質の除去効果があるとされている高度浄水処理を実施している。

五について

 現在、有機物の分解に必要な酸素の消費量を測定することにより有機物の量を測定する化学的酸素要求量(以下「COD」という。)を、測定が簡便で比較的誤差が少ないこと、他の有機汚濁指標との間に高い相関関係が認められること、これまでも長年にわたりCODを用いて有機汚濁の測定が行われておりデータの継続性が確保できること等の理由により、有機汚濁についての環境基準項目として採用している。
 有機汚濁の指標としては、COD以外にも、物質収支を把握するという観点から水中に存在する有機物中の全炭素量を示す指標である全有機炭素(TOC)の濃度等の指標が研究目的に応じて用いられており、過去にCODを用いて測定したデータとの継続性等にも留意しつつ、その活用可能性について知見を収集してまいりたい。

六について

 霞ヶ浦は、昭和六十年に湖沼水質保全特別措置法(昭和五十九年法律第六十一号)に基づく指定湖沼に指定され、同法に基づき定められた湖沼水質保全計画に則して、水質保全に資する事業や各種汚濁源に対する規制等の水質保全対策が総合的かつ計画的に推進されており、最近の霞ヶ浦における水質状況は、代表的な汚濁指標であるCODの平均値でみると横ばいの状況にある。
 御指摘の「霞ヶ浦水質浄化プロジェクト」は、科学技術振興事業団及び茨城県が汚濁湖沼の水環境修復技術の開発等を目的として行っている共同研究事業である。本事業においては、これまでに排水処理装置等に関する技術が開発されており、これらの研究成果を利用しつつ、引き続き湖沼の汚濁対策強化に資するよう、研究開発を推進していくこととしている。

七について

 生物反応を用いて化学物質の有害性を評価するバイオアッセイなど、多数の化学物質による総合的な有害性を把握するための手法については、関連情報の収集及び整理、水環境のモニタリング等への活用可能性に関する調査研究等を進めているところである。

八について

 多様な社会活動に伴い様々な物質が環境中に排出されている状況等を踏まえると、水質監視技術の確立は重要であると認識している。
 このため、下水道については、現在、下水中の毒性化学物質を細菌等の生物によって検出する技術について研究開発を進めるとともに、微生物を活用した高度処理技術の開発及び普及を図っているところである。
 また、上水道については、魚類等の生物の反応を活用した水質監視技術、活性炭の吸着作用に加えて微生物による有機物の分解作用を活用した生物活性炭処理等の技術が必要に応じて導入されているところであり、引き続きこれらの技術の導入を促進してまいりたい。

九について

 内分泌かく乱化学物質の人に対する健康影響については、現時点では、科学的に未解明の点が多いが、国民の健康を確保する観点から、その解明は、極めて重要な課題と認識している。
 厚生労働省においては、平成十年十一月に「内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会中間報告書」を取りまとめたところであり、また、平成十一年度から厚生科学研究において、妊娠中及び授乳中の実験動物を用いて、内分泌かく乱化学物質が出生児の成長に及ぼす影響についての研究を行っているところであり、このような取組を通じ、内分泌かく乱化学物質の人に対する健康影響の早急な解明に努力している。
 また、注意欠陥多動性障害については、平成十二年度の厚生科学研究において、全国の医療機関及び学校における注意欠陥多動性障害の子供の実態調査を行うなどにより、その実態の把握に努めるとともに、平成十三年度の厚生科学研究において、妊娠及び出産時における母体を取り巻く環境が注意欠陥多動性障害の子供の発生率に与える影響等について調査研究を行っているところである。今後、注意欠陥多動性障害の子供に対する適切な対応の在り方について検討することが必要と考えている。