質問主意書

第151回国会(常会)

答弁書


答弁書第三五号

内閣参質一五一第三五号

  平成十三年六月二十六日

内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 井上 裕 殿

参議院議員海野義孝君提出少額訴訟手続等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員海野義孝君提出少額訴訟手続等に関する質問に対する答弁書

一について

 少額訴訟手続とは、訴訟の目的の価額が三十万円以下の金銭の支払の請求を目的とする訴えについて、原則として、一回の口頭弁論期日で審理を完了し、口頭弁論の終結後直ちに判決の言渡しを行う手続をいう。この少額訴訟手続は、司法を国民に利用しやすいものにするという理念に基づき、簡易裁判所の管轄に属する訴訟事件の中でも、特に少額であり、しかも、複雑困難でないものについて、迅速かつ効果的な解決をするための手続として、現行民事訴訟法(平成八年法律第百九号)において創設されたものである(同法第六編)。
 現行民事訴訟法は、平成十年一月一日から施行されているが、少額訴訟手続の利用件数は、最高裁判所事務総局の調べによると、新受件数については、平成十年度八千三百四十八件、平成十一年度一万二十七件、平成十二年度一万千百二十八件となっており、また、既済件数については、平成十年度六千八百十九件、平成十一年度九千九百二十八件、平成十二年度一万八百六十七件となっていて、年々増加する傾向にある(右既済件数には、少額訴訟手続から通常訴訟手続に移行した件数を含み、平成十二年度の数値は、いずれも概数である。)。
 このような少額訴訟手続の利用件数の推移は、少額訴訟手続が利用者から迅速かつ簡易な手続として積極的に評価されていることの現れであると認識している。
 なお、平成十年度及び平成十一年度の既済事件中には、売買代金請求事件(平成十年度九百四件、平成十一年度千百九十八件)、貸金請求事件(平成十年度七百四十件、平成十一年度八百四十八件)、立替金・求償金等請求事件(信販関係事件に限る。)(平成十年度八十四件、平成十一年度百十九件)、交通事故による損害賠償請求事件(平成十年度九百八十四件、平成十一年度千七百二十七件)、その他の損害賠償請求事件(平成十年度四百三件、平成十一年度四百三十八件)、手形・小切手金請求事件(平成十年度三件、平成十一年度一件)などが含まれている(右件数には、少額訴訟手続から通常訴訟手続に移行した件数を含まない。)。

二について

 内閣に設置された司法制度改革審議会が本年六月十二日に取りまとめた意見書において、「少額訴訟手続は、利用者から高い評価を受けており、国民がこの手続をより多く利用しうるようにする見地から、少額訴訟手続の対象事件の範囲については、それを定める訴額の上限を大幅に引き上げるべきである。」との提言がされている。
 政府は、本年六月十五日に司法制度改革審議会意見に関する対処方針を閣議決定し、その中で、司法制度改革審議会意見を最大限に尊重して司法制度改革の実現に取り組むこととし、改革の推進体制等について定める法律案をできる限り速やかに国会に提出して、その成立を期すとともに、改革を実現するための方策の具体化につき鋭意検討を進め、所要の措置を講ずることとしており、その一環として、簡易裁判所における民事裁判実務の運用状況等を参考にしつつ、少額訴訟手続の見直しに取り組んでいく所存である。

三について

 現行民事訴訟法の立案の際には、当時の民事裁判実務の運用状況について幅広く情報を収集して、それらを立案に当たっての基礎資料として活用し、現行民事訴訟法の施行後は、実務の運用状況を見守ってきたところであるが、今後とも、民事裁判法制に関する法整備を行うに当たっては、民事裁判実務の運用状況について積極的に情報を収集し、立案に当たっての基礎資料としていく所存である。

四について

 内閣に設置された司法制度改革審議会は、平成十二年十二月から本年三月までの間、関係省庁、最高裁判所等が参加する勉強会を開催し、裁判所と裁判外紛争処理機関の連携等について意見交換を行った。同審議会は、その結果も踏まえて審議を行い、本年六月十二日に内閣に提出した意見において、裁判外紛争解決手段の拡充及び活性化に向け、裁判所や関係機関等の連携を促進するための体制を整備するとともに、裁判外紛争解決手段の利用の促進及び裁判手続との連携の強化のための基本的な枠組みを規定する法律の制定も視野に入れて必要な方策を検討すべきであるとしている。なお、国民生活センター等においても、本年二月以降、東京簡易裁判所との間で、相互の連携の強化等を目的とする意見交換を実施していると承知している。
 政府としては、裁判所と裁判外紛争処理機関の連携の在り方の問題についても、二についてで述べた閣議決定した対処方針に従って適切に対処していく所存である。