質問主意書

第151回国会(常会)

答弁書


答弁書第一一号

内閣参質一五一第一一号

  平成十三年四月十三日

内閣総理大臣 森 喜朗   


       参議院議長 井上 裕 殿

参議院議員福島瑞穂君提出高レベル放射性廃棄物地層処分の研究開発に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員福島瑞穂君提出高レベル放射性廃棄物地層処分の研究開発に関する質問に対する答弁書

一について

 御指摘の「中部事業所の業務概要」に記載されている「地質環境調査」(以下「本件調査」という。)について、核燃料サイクル開発機構(以下「サイクル機構」という。)から聴取したところ、その概要は次のとおりである。

1 本件調査は、サイクル機構の前身である動力炉・核燃料開発事業団(以下「動燃事業団」という。)の中部事業所において、昭和六十一年度から昭和六十三年度までの間、日本各地の地層に関する基礎的な情報を得ることを目的として、おおむね日本全国を対象として、各調査地点の地層に係る文献の調査又は各調査地点における地表踏査によって実施された。また、本件調査の結果は、「広域調査地表調査シート(昭和61年度および昭和62年度)」及び「広域調査地表調査シート(昭和63年度)」と題する報告書として取りまとめられている。
 本件調査は、法令に基づくものではないから、法令上の正式名称は存在していない。
2 本件調査は、約五百七十地点において実施された。本件調査は、日本各地の地層に関する基礎的な情報を得ることを目的として、おおむね日本全国を対象として実施したものであるが、その調査の対象となった地点を公表した場合、当該地点の周辺地域がサイクル機構により放射性廃棄物が持ち込まれる候補地であると誤って理解をされ、当該周辺地域の住民等に混乱を引き起こす可能性があることから、サイクル機構としては、現時点においては、当該地点を公表することができるかどうか慎重に検討すべきであると考えている。
 なお、サイクル機構においては、今後、情報公開請求があった場合、公開の原則等を定めたサイクル機構の情報公開指針に従って、外部の有識者により構成される情報公開委員会の意見を聴いて、個別に公開請求に係る資料の公開又は非公開の判断を行っていくこととしている。
3 昭和六十一年度及び昭和六十二年度における本件調査は、「放射性廃棄物処理処分方策について(中間報告)」(昭和五十九年八月七日原子力委員会放射性廃棄物対策専門部会報告。以下「昭和五十九年中間報告」という。)及び「放射性廃棄物処理処分方策について」(昭和六十年十月八日原子力委員会放射性廃棄物対策専門部会報告。以下「昭和六十年報告」という。)において、動燃事業団は高レベル放射性廃棄物の処分予定地の選定主体として「広域調査」(精密調査地点の選定等を目的として、複数地点において行われる地表踏査等による岩体規模等の調査をいう。以下同じ。)及び「精密調査」(広域調査によって順次選定された候補地点において行われる水理機構調査及び試すい等による岩体規模、岩石特性等の調査をいう。以下同じ。)を行うこととされたことを受けて、「広域調査」の一部として実施された。また、昭和六十三年度における本件調査は、「原子力開発利用長期計画」(昭和六十二年六月二十二日原子力委員会決定。以下「昭和六十二年長期計画」という。)において、国が別に決定する処分事業の実施主体が処分予定地の選定を行い、動燃事業団は「地質環境等の適性を評価するための調査」を実施するとされたことを受けて、その一部として実施された。「中部事業所の業務概要」に記載されている「国の定める方針」は、昭和六十二年長期計画における右の内容を指している。

二について

 御指摘の「地層処分研究開発5ケ年計画」(昭和六十一年十一月二十一日科学技術庁原子力局策定。以下「5ケ年計画」という。)における「処分予定地の選定のための調査」は、昭和五十九年中間報告及び昭和六十年報告において動燃事業団が行うこととされた「広域調査」及び「精密調査」を意味している。これらの調査について、サイクル機構から聴取したところ、その概要は次のとおりである。

1 「広域調査」として実施されたものとしては、一についてで述べた昭和六十一年度及び昭和六十二年度における本件調査のほか、昭和六十年度から昭和六十二年度までの間、文献の調査、航空写真及び人工衛星(ランドサット)画像の判読及び解析による調査並びに地表踏査(以下「本件調査以外の広域調査」という。)が実施されており、本件調査以外の広域調査の結果を取りまとめた調査報告書の名称は別紙のとおりである。
 なお、「精密調査」については、昭和五十九年中間報告及び昭和六十年報告において、「広域調査」によって候補地点を選定した上で実施するとされていたところ、昭和六十二年長期計画の決定を受けて、具体的な候補地点を選定しないまま「広域調査」を終了したことから、実施されていない。
2 サイクル機構においては、本件調査以外の広域調査の対象となった地点を公表した場合、当該地点の周辺地域がサイクル機構により放射性廃棄物が持ち込まれる候補地であると誤って理解をされ、当該周辺地域の住民等に混乱を引き起こす可能性があることから、サイクル機構としては、現時点においては、当該地点を公表することができるかどうか慎重に検討すべきであると考えている。
 なお、サイクル機構においては、今後、情報公開請求があった場合、公開の原則等を定めたサイクル機構の情報公開指針に従って、外部の有識者により構成される情報公開委員会の意見を聴いて、個別に公開請求に係る資料の公開又は非公開の判断を行っていくこととしている。

三について

 御指摘の5ケ年計画における「処分予定地の選定」との表現については、昭和五十九年中間報告及び昭和六十年報告において、高レベル放射性廃棄物については「地層処分による」とされるとともに、「処分予定地の選定は、動力炉・核燃料開発事業団が」行うとされたことを踏まえたものである。
 また、サイクル機構から聴取したところ、御指摘の「中部事業所の業務概要」における「処分予定候補地の選定」との表現は、昭和六十二年長期計画において、高レベル放射性廃棄物については「深地層中に処分することを基本的な方針とする」とされるとともに、「処分予定地の選定は処分事業の実施主体に行わせる」とされたことを踏まえたものであるとしている。
 なお、特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律(平成十二年法律第百十七号)に定められた概要調査地区、精密調査地区及び最終処分施設建設地については、同法に従って、原子力発電環境整備機構が選定することとされている。

別 紙 1/2

別 紙 2/2