質問主意書

第151回国会(常会)

答弁書


答弁書第一号

内閣参質一五一第一号

  平成十三年三月九日

内閣総理大臣 森 喜朗   


       参議院議長 井上 裕 殿

参議院議員円より子君提出商品先物取引被害の防止と商品取引所法に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員円より子君提出商品先物取引被害の防止と商品取引所法に関する質問に対する答弁書

一の1について

 農林水産省、経済産業省、国民生活センター、全国の消費生活センター及び日本商品先物取引協会(以下「協会」という。)に寄せられた商品先物取引に係る平成十年度以降の苦情及び相談の件数並びにその推移は、別表一のとおりであるが、これらの苦情及び相談に係る被害金額については、苦情及び相談の内容が様々であることから、把握できない。なお、協会は、その会員である商品取引員と顧客等との間に生じた商品先物取引の受託等に関する紛争について、商品取引所法(昭和二十五年法律第二百三十九号)第百三十六条の五十四等の規定に基づきあっせん及び調停を行っているところ、平成十一年四月から平成十二年十二月末までの期間に協会によるあっせん又は調停により解決した紛争二十五件の和解金額については、別表二のとおりである。
 当該期間において協会が受け付けた苦情及び相談(七百九十件)について、苦情又は相談の申出人の主張に基づき協会がその内容を分類したところ、商品取引員の勧誘に係るもの(二百六十七件)が全体の約三分の一を占め、次いで委託証拠金の返還に係るもの(百八十四件)、売買決済時期に係るもの(百五件)等の契約締結後の商品取引員の対応に係るものが多くを占めている。なお、協会以外の者が受け付けた苦情及び相談については、それらの内容を分類していない。

一の2について

 協会は、商品先物取引の委託者が横領、詐欺等の犯罪に関与したとされる事件(以下「不祥事事件」という。)の報道に接した場合、当該委託者と取引を行った商品取引員の特定等の実情把握に努めた上、当該商品取引員の勧誘及び受託が商品取引所法、協会の定款その他の規則等に違反していないかどうか、その受託等業務管理体制に不備はないかどうか等について調査を行っている。
 平成十一年四月から平成十三年一月末までの期間において、協会が不祥事事件に係る委託者と取引を行った商品取引員の勧誘及び受託に関して調査を行い、何らかの措置を講じた主な事例の概要は、次のとおりである。

(一) 協会は、商品先物取引の委託者が業務上横領容疑で逮捕された事件について調査を行った結果、当該委託者と取引を行った商品取引員の受託等業務管理体制の不備のため、委託者の資産等から見て不相応な取引の受託が行われるとともに、当該容疑に係る不正資金の流入が防止されなかったとして、平成十二年三月に当該商品取引員に対して商品取引所法第百三十六条の四十八の規定に基づいて定められた協会の制裁規程により過怠金を課した。
(二) 協会は、商品先物取引の委託者が業務上横領容疑及び詐欺容疑で逮捕された事件について調査を行ったところ、当該委託者が取引を行ってから調査が行われるまでに数年が経過していたため、当該容疑と商品先物取引との関係は不明であったが、商品取引員による委託者の資産確認が十分であったとは認められないこと、また、当該容疑に係る不正資金の流入が防止されなかった可能性があること等の理由から、平成十一年五月に当該商品取引員に対して所要の指導を行った。

一の3について

 平成八年一月から平成十二年十二月末までの間において、農林水産省及び経済産業省が商品取引所法第百三十六条の二十五等の規定に基づいて行った行政処分の概要は、別表三のとおりである。

一の4及び二の4について

 商品取引員の勧誘及び受託については、従来から、商品取引所法の厳正な運用によりその適正さの確保に努めてきたところであり、また、商品取引所法の一部を改正する法律(平成十年法律第四十二号。以下「平成十年改正法」という。)においては、商品取引員等が顧客に対して誠実かつ公正にその業務を遂行するよう義務付けられるとともに、商品取引員が顧客の知識、経験及び財産の状況に照らして不適当と認められる勧誘を行って委託者の保護に欠けることとなる場合等には、主務大臣が当該商品取引員に対して改善を命ずる等の措置をとることができるものとされたところである。
 また、平成十年改正法で追加された商品取引所法第百三十六条の四十八の規定により、協会は、その会員である商品取引員が商品取引所法、協会の定款その他の規則等に違反した場合には、当該商品取引員に対して過怠金の賦課等の制裁を課すことができるようにされたところであり、平成十一年四月から平成十三年一月末までの間において、その会員である商品取引員の勧誘及び受託について六件の制裁を課した。このほか、協会は、当該期間において、平成十年改正法で追加された商品取引所法第百三十六条の十一等の規定に基づき、商品取引所法等に違反した外務員について四件の職務停止の措置を行った。
 政府としては、今後とも商品取引所法等を厳正に運用し、協会に対して自主規制の徹底を指導するとともに、「商品先物取引制度の改革について(答申)」(平成十年一月二十六日商品取引所審議会答申)に述べられている「制度改革については、不断の見直し、点検を行っていくことが必要不可欠である」との提言の趣旨を踏まえ、商品先物取引の勧誘及び受託の更なる適正化に努めてまいりたい。

二の1及び2について

 一の4及び二の4についてで述べたとおり、政府としては、今後とも商品取引所法等の厳正な運用、協会の自主規制等によって、商品取引員の勧誘及び受託の更なる適正化に努め、委託者保護を図ることとしている。
 御指摘の民事取引ルールの詳細は明らかではないが、委託者と商品取引員との間における紛争の解決については、個々の事案に応じて適正かつ迅速な処理を行うことが重要であることから、平成十年改正法で追加された商品取引所法第百三十六条の五十五の規定に基づき、弁護士等で組織されるあっせん・調停委員会が協会に設置され、これにより紛争の適正かつ迅速な処理が図られることとなっている。
 このあっせん・調停委員会においては、商品取引員による断定的判断の提供その他の不当な勧誘等があったと認められる場合には、個々の勧誘等の不当性の程度、態様等を考慮した上、過去の裁判例等を踏まえて委託者の損害の適切な回復を図っているものと考えている。

二の3について

 商品取引員が自己の計算により行う取引である自己玉の数量については、既にすべての商品取引所が、その業務規程に基づき、各商品取引所において、各商品ごとに誰でも見ることができるよう開示しているところである。
 なお、商品市場における取引の公正の確保を図るため、平成十年改正法で追加された商品取引所法第四十一条の規定に基づき、商品市場における取引について学識経験を有する者により組織される市場取引監視委員会を商品取引所に設置し、商品市場における取引の方法等を監視させる等所要の措置が講じられたところである。

別表一 商品先物取引に係る苦情及び相談の件数の推移

別表二 商品先物取引に係る日本商品先物取引協会のあっせん又は調停による和解金額及び件数

別表三 商品取引員に対する商品取引所法に基づく行政処分(過去五年間)1/2

別表三 商品取引員に対する商品取引所法に基づく行政処分(過去五年間)2/2