質問主意書

第151回国会(常会)

質問主意書


質問第四三号

横須賀港の原子力空母母港化問題に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十三年六月二十八日

福島 瑞穂   


       参議院議長 井上 裕 殿


   横須賀港の原子力空母母港化問題に関する質問主意書

 横須賀米軍基地は一九七八年より二十八年間にわたって、米海軍空母の事実上の母港として利用されている。この横須賀米軍基地では、現在十二号バースの延長工事が行われており、この工事によって大量の有害物質を含む土壌が横須賀港の中に崩落するなど、環境への汚染が懸念されている。この延長工事は、二〇〇七年度以降に横須賀港を事実上の母港とすると考えられる米海軍の原子力空母の接岸や物資補給のための荷役を行うために必要な工事ではないかと推測されているが、日本政府はこの事実確認をまだ行っていないという。米海軍の原子力空母が横須賀港を事実上の母港とすることになれば、排水放出による放射能汚染、放射性廃棄物の陸揚げ、貯蔵などに伴う汚染や労働者被曝、さらには原子力空母の原子炉事故の危険性など、母港化に伴う新たな問題が発生することになる。したがって、日本政府は母港化に関する事実を確認し、それに伴って国民に不利益が発生する場合には、事前にそれを防止する措置を講ずるべきであると考える。よって以下質問する。

一、現在米海軍には通常型空母は三隻しかなく、残る空母はすべて原子力空母である。一九九八年十月、米国防総省は今後建造される空母はすべて原子力空母とすると決定した。横須賀港を事実上の母港としているキティホークは二〇〇七年頃には退役の予定である。したがって、早ければ二〇〇七年にはキティーホークに代わる原子力空母が横須賀港を事実上の母港とすることが考えられるのではないか、政府の見解を示されたい。そうならないと考えるのであれば、その根拠を示されたい。

二、一九九八年には米国防総省報道官の発言や米軍関係紙「スターズ・アンド・ストライブス」の報道記事、さらには米国議会会計検査院の報告書などによって、横須賀港が原子力空母の母港となることが明らかになったとされる。政府は、これら発言や記事、報告書を確認し、その内容を米国政府にただし、説明を求めたことがあるか。求めたことがなければ、その理由を、あるならば米国政府の回答を示されたい。

三、ニミッツ級原子力空母に積まれた原子炉の出力は熱出力で九十万キロワット、発電炉に換算すると出力三十万キロワットで、百万キロワット級の原子力発電所の三分の一に相当する。もし仮に原子力空母が東京湾内で原子炉事故を起こし、最悪の放射能放出事故に至った場合、東京湾に接する首都圏各地域でどのような被害が発生すると予測されているか。政府はこの事故のシミュレーションを行ったか。行っていないならば、これから行うつもりはあるのか、ないならばその理由を明らかにされたい。

四、原子力空母にかかわる放射能漏れ事故、汚染、労働者被曝など、どのようなことが過去に起こっているかを政府は調査しているか。調査しているならばその調査結果一覧を示されたい。調査していないならば、これから行うつもりはあるか、ないならばその理由を示されたい。

五、横須賀港に寄港を繰り返している原子力潜水艦でも放射能漏れと思われる事件は繰り返し起こっている。横須賀港や佐世保港での異常放射能計測事件である。政府は、このように度々繰り返されている異常放射能計測事件について調査したか。調査していれば、その一覧と異常放射能の原因を示されたい。調査していないならば、これから行うつもりはあるか、ないならばその理由を示されたい。

六、一九八八年にはカリフォルニア大学のジャクソン・デイビス教授が、原子力潜水艦による放射能放出事故のシミュレーションを行い、放射能放出によって風下十キロの住民は放射能を帯びた空気を吸入したり、死の灰の降下による地表汚染で飲料水や食物の汚染による二次被曝で、遺伝障害も含めると十五万人もが死亡するとしている。これは原子力空母の十分の一程度の熱出力しかない原子力潜水艦の事故を想定したものであり、原子力空母の事故の場合、その被害はもっと拡大することが考えられる。政府は、このような事故に備え、原子力災害についての防災対策を原子力発電所や核燃料施設等のみではなく、動く原子炉である原子力空母や原子力潜水艦にも義務付けるべきだと考えるが、どうか。

七、横須賀十二号バースの延長工事では、大量の有害物質を含む土壌が横須賀港内に崩落し、周辺環境を汚染することが懸念されている。その原因の多くは十分な事前調査も行われないまま、工事が強行されたことにある。このようにずさんな工事が急ピッチで進められる背景にも、米海軍原子力空母の事実上の母港化準備のためという疑惑が考えられる。政府は母港化準備のためであるということを認めない立場のようであるが、仮に今後、この事実が原子力空母の事実上の母港化のためであったということになった場合、果たされなかった政府の説明責任は誰がどのように取るのか。責任の所在は外務大臣にあるのか、防衛庁長官にあるのか、もしくは内閣総理大臣にあるのか、明確に示されたい。

  右質問する。