質問主意書

第151回国会(常会)

質問主意書


質問第三四号

被収容者に対する懲罰制度の運用等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十三年六月八日

福島 瑞穂   


       参議院議長 井上 裕 殿


   被収容者に対する懲罰制度の運用等に関する質問主意書

 日本の刑事拘禁制度ついては、近年、被収容者動作要領の適正化、革手錠使用要件の厳格化など、行刑当局により改善の取組が一部行われたことは、国内外で評価を受けている。一方、依然として批判が絶えない問題として懲罰制度が挙げられる。そこで被収容者に対する懲罰制度の運用等について以下質問する。

一、懲罰と医師による診断について

1 懲罰執行前、執行中、執行後の診断(監獄法施行規則一六〇条二項、一六一条、一六三条)について、各段階ごとの診断内容(診断項目、科罰可能性の判断基準、その他)等を規定した文書が存在するか。存在するとすればその名称及び具体的内容について、明らかにされたい。
2 1において、診断内容を規定した文書が存在しない場合、具体的にどのような項目につき診断を行っているか、明らかにされたい。施設ごとに異なる場合、東京拘置所、大阪拘置所、府中刑務所、大阪刑務所並びにL級(千葉刑務所、岐阜刑務所、岡山刑務所、大分刑務所、熊本刑務所、宮城刑務所、旭川刑務所、徳島刑務所)及びW級(栃木刑務所、和歌山刑務所、笠松刑務所、岩国刑務所、麓刑務所、札幌刑務所)の各施設につき、具体的内容を明らかにされたい。
3 懲罰執行中の診断について、どのような時間的間隔で実施すべきかについて統一的な基準が存在するか。存在するとすればその名称及び内容について、具体的に明らかにされたい。
4 3において、統一的な基準が存在しない場合、具体的にどのような時間的間隔で実施しているか、明らかにされたい。施設ごとに異なる場合、2に掲げた各施設につき、具体的規定を明らかにされたい。
5 診断の結果懲罰不相当と認められた件数を、懲罰種類別、執行前、執行中の各段階別に過去一〇年間各年ごと明らかにされたい。
6 懲罰執行中の診断について、診断結果が記載される文書名及び規定の様式名を具体的に明らかにされたい。
7 過去一〇年間各年ごとに、執行後健康状態に異常があると認められた件数について、総数及び2に掲げた各施設ごとの件数につき、具体的に明らかにされたい。

二、「懲罰表」の「様式第一号の3(第一三条関係)」中、執行前健康状態欄に「執行差し支えなし(体重kg)」、執行後健康状態欄に「異常なし(体重  kg)」との不動文字が各印刷されていることについて

1 懲罰の執行に差し支えがあり、又は執行後健康状態に異常があると認められた場合は、どの様式を使用し、どのような記載をするのか、具体的に明らかにされたい。
2 体重のみが記載されていることについて、その趣旨を具体的に明らかにされたい。
3 体重以外の診断項目の内容及びそれらが記載される文書名並びに規定の様式名を具体的に明らかにされたい。

三、監獄法が、懲罰執行前、執行中、執行後の各段階において医師の診断を義務付けていることは、懲罰(特に軽屏禁。)が被収容者の心身の健康状態を害するおそれが高いことから、これを防止する目的の措置であると考えられる。しかしながら、実際の被収容者、施設職員からの訴えによれば、懲罰手続における医師のチェックが有効に機能していないのではないかと疑わざるを得ない。現在の実務において、懲罰手続における医師の診断が、右のような目的を十全に果たしていると考えているか。政府の見解を示されたい。

四、懲罰と階級の低下との関係について

1 過去一〇年間の有期刑及び無期刑仮釈放者の出所時処遇階級別人数につき、各年ごとに明らかにされたい。
2 階級低下(行刑累進処遇令七四条)及び適用除外(同七五条)の各処分について、具体的にどのような要件で適用されるか、明らかにされたい。
3 階級低下及び適用除外の各処分の適用に当たっての基準は存在するか。存在するとすればその名称及び具体的内容について、明らかにされたい。施設ごとに異なる場合、一の2に掲げた各施設につき、具体的基準を明らかにされたい。
4 階級低下及び適用除外の処分について、一回の処分につき何階級低下するのか。
5 規律違反容疑者の取調べの後、懲罰不相当により終了したとき、懲罰審査会を開催した結果、「懲罰不相当」の旨の意見が出されたとき、審査会の「懲罰相当」の意見を基に懲罰が科されたとき、及び同意見を基に懲罰が科されなかったときの、四つのケースにおいて、同時に階級低下及び適用除外の処分がなされた件数を、過去一〇年間、各年ごとに明らかにされたい。

五、いわゆる「収容者身分帳簿」について

1 「収容者身分帳簿」に編綴される文書につき、内訳の具体的名称を明らかにされたい。
2 1のうち、懲罰手続において、新たに作成される文書及び既に作成された文書に記載がなされる文書の、各具体的名称を明らかにされたい。

  右質問する。