質問主意書

第151回国会(常会)

質問主意書


質問第二八号

被収容者の増加と刑務官等の労働条件に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十三年五月二十一日

福島 瑞穂   


       参議院議長 井上 裕 殿


   被収容者の増加と刑務官等の労働条件に関する質問主意書

 近時、刑事拘禁施設における被収容者数が激増し、施設によっては定員を超過している実情にある。犯罪発生件数が顕著に増加している実情にないにもかかわらず、被収容者数がこのように激増している原因は慎重に調査する必要がある。そして、未決被収容者に対する保釈率や有罪判決時の実刑率などとも比較検討し、今後過剰拘禁に陥らないための総合的な刑事政策を検討する必要がある。
 他方、現実の被収容者の激増に対して、刑務官の数は厳しい公務員定員削減の政策の下で、増加していない。被収容者一人当たりの職員数においても、我が国はヨーロッパ諸国と比較して、約二分の一程度となっている。このような実情の中で、刑務官の労働は以前にも増して過酷なものとなっており、処遇の一線で働く刑務官の疲労は極限に達している。
 このような状況では、犯罪を犯した者の社会復帰のための有益な活動を行うことも困難な実情にあるといわなければならない。さらには、刑務官の劣悪な労働条件は職員の定着を妨げ、処遇の内容にも悪影響を与えかねない。
 被収容者の増加に対処し、受刑者に対する社会復帰のための処遇を充実するためには、まず職員の待遇を改善し、職員の定員を増加して、優秀な職員の質・量の両面にわたる確保に努めるべきであると考える。
 さらに、現在の業務の内容についても、合理化に努めて、例えば十五分ごとの夜間の巡視などの必要性の疑わしい業務については、頻度・量を見直す必要がある。また、被収容者の面会・手紙についても、原則としてすべての面会と手紙について実施されている立会い・検閲などを、必要的なものとしないで、遠方からの監視、抜取り検査にとどめ、保安上の必要のある場合にのみ立ち会い、検閲を行うこととすれば人員不足の解消の一助にもなると考える。
 よって、以下のとおり質問する。

一 過去五年間の刑事拘禁施設の職員数の推移を施設の種類別に示されたい。

二 過去五年間の一日平均被収容者数の推移を未決被収容者及び既決被収容者の別に示されたい。さらに、それぞれについてその内訳も併せて示されたい。

三 過去三年間の刑務官及び法務教官一人当たりの平均休日出勤日数及び平均年休取得日数を示されたい。

四 中央省庁等改革基本法第四十三条第七項に、刑事拘禁施設について、その特性を考慮しつつ可能な限りその運営につき効率化及び質的向上を進めるものとする、とあるが、刑事拘禁施設職員の定員について同法を踏まえ今後どのような手当をしていくのか。
 検察官、裁判官が増員される一方で刑事司法の重要な一翼を担う刑務官についても増員すべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。

五 過去三年間の刑務官及び法務教官の単身赴任者の人数を示されたい。なお、法務教官については初等課、中等課、高等課の別に示されたい。
 安定的かつ勤労意欲を持って労働するためにはできる限り単身赴任は避けるべきであると考えるが、職員の異動について政府の見解を示されたい。

六 平成十三年六月一日時点の全国の刑務所における収容定員、被収容者数及び収容定員に対する収容率を施設ごとに明らかにされたい。

七 収容定員を超えて収容しているいわゆる「過剰収容状態」にある施設について、過剰収容に対する対策と職員の増員計画の有無及びその内容を明らかにされたい。

八 刑務官の定員の算定根拠として、刑務官一人当たり被収容者何人の割合となっているのか。また、業務量として、政府はこの割合が適正なものと考えているのか、刑務官の業務の実態を踏まえ見解を示されたい。

九 過去五年間の法務大臣に対する情願数の推移を示されたい。
 法務大臣に対する情願が増加しているとすればその原因について政府はどのように考えているか、見解を示されたい。

一〇 外国人被収容者、高齢被収容者及び女子被収容者については、それぞれ一般の被収容者と異なる配慮が求められるが、これらの被収容者の増加に伴い、緊急に必要としている措置はあるか、あるならばそれぞれの被収容者別に示されたい。

一一 現在、夜勤の巡回を十五分に一回程度行っていると聞いているが、収容体制に影響が及ばないことを前提としつつ刑務官の負担を軽減する観点から、巡回の間隔を伸張し、回数を減らすことは可能か、政府の見解を示されたい。

一二 弁護士と未決被収容者の間の信書の検閲について、未決収容者には無罪の推定が働いていることからも本来これを行うべきではないと考えるが、政府の見解を示されたい。

一三 弁護士・家族との被収容者の面会の立会い・信書の検閲についても、より簡略化・省力化すべきではないか、政府の見解を示されたい。

  右質問する。