質問主意書

第151回国会(常会)

質問主意書


質問第一六号

富山県営熊野川ダムからの取水事業に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十三年四月十二日

中村 敦夫   


       参議院議長 井上 裕 殿


   富山県営熊野川ダムからの取水事業に関する質問主意書

 一九八四年に、富山県営の多目的ダムとして富山県大山町に熊野川ダムが完成した。このダムの事業目的の一つに、水道利用がある。当初の計画では、熊野川水道用水供給事業によって、一九八五年より周辺六市町村で構成する受水団体に日量十万立方メートルの給水を始めることになっていた。しかし、ずさんな事業計画の結果、現在に至っても用水供給事業を開始するために必要な取水施設や浄水施設、加圧送水施設などは建設されていない。当然、完成後、受水団体には一滴の水も供給されていない。
 この間、建設費百九十三億円のうち水源費の負担金が約七十一億円を占め、国庫補助などを除いた約三十三億円を企業債で賄い、その返済総額は利子分と合わせて二〇一四年までで九十八億円に及ぶ。受水団体の一つ富山市では、企業債の償還として毎年約六千万円から七千五百万円の支払を続けている。
 熊野川水道用水供給事業の目的は、幾度か変遷してきた。一九七四年に基本計画が厚生省に提出されたときには、目的を「人口増加に備えた将来に向けた水源確保」としていた。その後、「災害時などに備えた水源の複数化」に理由が変わった。こうした中、本年二月六日、富山市が市議会建設委員会で「富山市の水道用水では常願寺川からの取水が、水利権を越える取水をしているために国から是正するように指導を受けている。そのため、市単独事業として熊野川ダムから取水事業を行う」という報告が行われた。このことは、従来の水源開発の理由になかったことである。
 現在、多くの自治体において、水道料金の値上げが行われている。それは、施設整備に巨額の投資を行い、水道料金の値上げ分をその償還財源としていることによる。熊野川水道用水供給事業及び今回の富山市からの熊野川ダムからの取水事業は、山形県鶴岡市の水道行政問題と並び、全国の自治体水道行政の抱える典型的な例と言える。よって、この問題に関する政府の見解を明らかにする必要がある。
 以上の観点から、次の事項について質問する。なお、同様の文言が並ぶ場合でも、各項目ごとに平易な文章で答弁されたい。

一、富山市による常願寺川からの超過取水について、建設省による是正指導がなされていたと聞くが、その経緯を明らかにされたい。

二、富山市による常願寺川からの超過取水について、これまで水利権上の位置付けはどうなっていたのか。また、超過取水を続けてきた富山市当局に法的な責任は生じないのか。

三、建設省が富山市に超過取水是正の指導をした際、建設省は富山市から常願寺川の水利権量の増大を求められたか。

四、建設省が富山市に超過取水是正の指導をした際、熊野川から取水する案のほか、複数代替案の検討をしたのか。検討をしたならば、その内容を具体的に明らかにされたい。

五、富山市は、常願寺川に日量二万立方メートルの水利権を持つ朝日工業水道と、日量二・六五万立方メートルの水利契約を交わして、超過取水を続けている。このことについて、政府の見解と今後の対応を示されたい。

六、富山市は、新たに農業用水から日量二・六万立方メートルの水利権を得るため、政府に働きかけをしていると聞く。その経緯について、具体的に明らかにされたい。

七、富山市は常西用水土地改良区に常西用水施設使用料を支払っている。政府は、その根拠と金額の算出方法を承知しているか。承知しているならば、その内容を示されたい。

八、今回の取水事業で富山市に付与される水利権は、暫定水利権であると聞く。この暫定水利権の期限を明らかにされたい。また、この暫定水利権の更新可否についても、併せて明らかにされたい。

九、河川の水利権に、表流水と伏流水の区別があるのか。

十、工業用水を水道用水に転用する場合の必要条件及び手続を示されたい。

十一、常願寺川の水利権の許可条件を明らかにされたい。また、河川維持流量を地点別に提示するとともに、流量を決めた根拠についても併せて明らかにされたい。

十二、富山市では、今回の熊野川ダムからの取水事業を市単独事業だとしているが、そのとおりか。

十三、熊野川水道用水供給事業は、周辺六市町村で構成する受水団体に水を供給する目的で、国庫補助が行われた。補助金適正化法などの関係法令に照らし、富山市単独の取水事業として水利用が行われることについて、問題はないのか。

十四、受水団体では、熊野川ダムの水源費の負担金支払を始めている。熊野川水道用水供給事業が始まらない場合、受水団体の負担金はどうなるのか。

十五、給水予定量の七十五・四パーセントを占める富山市が事業を先行して実施すれば、受水団体全体の水需要が伸び悩んでいるため、熊野川水道用水供給事業の休止状態が続くと考えられる。こうした事態に対する政府の対応を明らかにされたい。

十六、富山県が熊野川水道用水供給事業の中止を決めた場合、補助金の返納を求めるのか、政府の方針を明らかにされたい。

十七、取水事業開始に当たり、富山県から富山市に熊野川ダム負担金の追加負担金が課せられている。この追加負担金の発生について、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。