質問主意書

第151回国会(常会)

質問主意書


質問第一号

商品先物取引被害の防止と商品取引所法に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十三年一月三十一日

円 より子   


       参議院議長 井上 裕 殿


   商品先物取引被害の防止と商品取引所法に関する質問主意書

 商品取引所法は、平成十年四月に改正され、平成十一年四月一日より施行された。
 ところが、全国の消費生活センターに寄せられる商品先物取引に関する苦情相談件数は、平成十一年度が二九五一件にも上り、過去最高を記録した。しかも、先物取引被害の特徴は、取引開始時の不当勧誘行為の問題だけでなく、その後、取引を継続する過程で取引枚数の拡大や追証拠金の請求をめぐって不当勧誘・受託行為が繰り返され、深刻な被害を発生させていると指摘されている。それまでは先物取引の知識も経験もなかった一般委託者が、手持ち資金を根こそぎ投入させられ、さらには借金を重ねる者や横領事件にまで陥る者が後を絶たない現実は、先物取引業界全般に大きな社会的問題性があると思われる。
 行政規制を必要最小限度にとどめ、公正な取引ルールに基づく事後的チェックの強化を目指そうとする近年の規制改革政策の中にあって、先物取引被害の有効な防止対策をどのように講ずるのかが問われるところである。
 そこで、これに関連する事項について、以下のとおり質問する。

一、商品先物取引をめぐる委託者トラブルの実情について

1 前述の消費生活センターに寄せられた苦情相談のほか、農林水産省及び経済産業省の関係窓口に寄せられた苦情相談、業界団体の相談窓口に寄せられた苦情相談について、その件数、被害金額を明らかにされたい。さらに、全体の推移及び主な苦情内容と特徴についても明らかにされたい。
2 先物取引の損失に起因した委託者の不祥事事件(横領、詐欺、殺人等の犯罪行為)がしばしば発生しているようであるが、主務省又は業界団体においてその実情を把握しているか。
 こうした不祥事事件を招いた事案について、商品取引員の勧誘・受託行為の問題点を主務省又は業界団体において調査したことがあるか。あればその概要を明らかにされたい。
3 商品取引員の業務遂行上の問題点に関して、主務省が過去五年間に商品取引員に対する行政処分を行った例があるか。あれば、その業者名、処分内容及び理由の概要を明らかにされたい。
4 商品先物取引の委託者の取引状況に関する農林水産省・通商産業省の共同調査報告書(平成十年六月三十日)によれば、委託者が取引を開始した契機の約六割が商品取引員の電話・訪問による積極的勧誘であり、委託者の取引開始以来の損益状況は全体の約八割が損失を被っているとのことである。
 こうした全体的な取引実態及び苦情相談の実情を踏まえて、政府としては、商品先物取引の勧誘・受託行為の更なる適正化を図る必要があると考えるがどうか。

二、先物取引被害の防止対策について

1 平成十年の商品取引所法改正に伴って、不適正な売買取引の受託業務を主務省が監視する「委託者売買状況チェックシステム」(農林水産省)及び「売買状況ミニマムモニタリングシステム」(通商産業省)が廃止された上、商品取引員の自己玉数量を規制する通達が廃止されるなど、行政規制の緩和が進められている。
 これに代えて、勧誘受託業務の適正さを確保するためには、実効性ある民事取引ルールを設けるべきだと考えるがどうか。
2 民事取引ルールの具体例として、断定的判断の提供や仕切り拒否や一任売買の受託などの不当な勧誘・受託行為が行われたときは、これによって生じた委託者の損害を賠償する責任を負う旨の民事規定を、商品取引所法の中に定めることが考えられるがどうか。
3 商品取引員が委託者に推奨する売買建玉と対立する自己玉(向かい玉)を立てるという不当な取引方法を抑制するため、自己玉の数量規制に代えて、自己玉の存在及び数量を委託者に開示することを義務付けるべきだと考えるがどうか。
4 以上のほか、不当な勧誘受託行為を効果的に規制するため、政府としてはどのような方策を検討しているか。

  右質問する。