質問主意書

第150回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第八号

内閣参質一五〇第八号

  平成十二年十一月二十八日

内閣総理大臣 森 喜朗   


       参議院議長 井上 裕 殿

参議院議員照屋寛徳君提出国際自然保護連合のジュゴン保全勧告決議に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員照屋寛徳君提出国際自然保護連合のジュゴン保全勧告決議に関する質問に対する答弁書

一について

 自然及び天然資源の保全に関する国際同盟(以下「IUCN」という。)は世界的な自然保護及び天然資源の持続可能な利用等を促進するために設立された団体として、これらの分野における調査研究、普及啓発、関係各方面への助言等を行っており、我が国がこれに加盟することは、我が国の環境重視の姿勢を表明することの一環として有意義であることから、我が国は国家会員として平成七年六月二十一日にIUCNに加盟した。なお、IUCNの会員には、国家会員、政府機関会員及び非政府機関会員の三種類があり、環境庁は昭和五十三年九月二十七日に政府機関会員として加盟しているところである。

二について

 採択された勧告決議においては、我が国及び米国に対し、ジュゴン、ノグチゲラ及びヤンバルクイナの生存の確保を助けるための適当な措置を講ずることが要請されているが、政府としては、これらの動物の保護策の在り方については今後よく検討していく必要があり、勧告決議の要請に対応する措置の具体的内容を直ちに確定することが困難であることから、勧告決議の採択に際しコンセンサスに参加しなかったものである。

三について

 沖縄は、亜熱帯林やサンゴ礁が分布し、地域固有の動植物が多く生息するなど、生物多様性の保全の観点から重要な地域であり、今回のIUCNの勧告決議は、沖縄の自然環境やジュゴンの保護への国際的な関心の高さの表れであると受け止めている。

四について

 IUCNの勧告決議に係る政府としての考え方は、次のとおりである。

勧告一のa)

 普天間飛行場の移設に係る政府方針(平成十一年十二月二十八日閣議決定。以下「政府方針」という。)において、普天間飛行場の代替施設(以下「代替施設」という。)については、自然環境に著しい影響を及ぼすことのないよう最大限の努力を行うこととしており、代替施設の建設に当たっては、環境影響評価を実施することとしている。
 なお、防衛施設庁においては、この環境影響評価とは別に、ジュゴンの生息状況に係る予備的調査を実施しているところであり、その調査結果については、できるだけ早期に代替施設の基本計画の策定に必要な事項について協議する代替施設協議会に報告することとしている。

勧告一のb)

 ジュゴンは、文化財保護法(昭和二十五年法律第二百十四号)第六十九条第一項の規定により、天然記念物に指定され、捕獲を始めとする現状変更等が規制されており、また、水産資源保護法(昭和二十六年法律第三百十三号)第四条第一項の規定により、採捕が禁止されているところである。
 ジュゴンの保護については、関係省庁が密接に連携して取り組むべき課題と認識しており、更にいかなる対応が必要かについては、今後検討してまいりたい。

勧告一のc)

 沖縄本島北部三村にまたがるやんばる地域(以下「やんばる地域」という。)は、固有種や希少種が生息する自然の豊かな地域と認識している。これまで環境庁においては、自然公園法(昭和三十二年法律第百六十一号)第二条第二号に規定する国立公園の指定を念頭に置き、やんばる地域の自然環境の調査を実施している。また、やんばる地域に生息するノグチゲラ及びヤンバルクイナについては、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(平成四年法律第七十五号)第四条第三項に規定する国内希少野生動植物種に指定しているほか、ノグチゲラについては、同法第四十五条に規定する保護増殖事業計画を策定している。
 また、ジュゴンについては、環境庁において、分布、生物学的特徴等に関する国内外の研究論文、文献、資料等の収集調査を行うとともに、防衛施設庁において、先に述べた生息状況に係る予備的調査を実施している。

勧告一のd)

 世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約(平成四年条約第七号)に基づく自然遺産の世界遺産一覧表への記載には、同条約第十一条5の規定に基づき世界遺産委員会が定めた基準に照らして、その自然環境が顕著な普遍的価値を有すると認められるものであるとともに、国内法上その自然環境を保護するための措置を採ることが必要とされているところである。
 現在、環境庁においては、やんばる地域において自然公園法第二条第二号に規定する国立公園の指定を行うことを念頭に置いて、調査及び検討を進めている段階であり、やんばる地域の世界遺産一覧表への記載について検討を行う段階にはないと考えている。

勧告三のa)

 政府としては、政府方針において明らかにしているとおり、代替施設の建設に当たっては、環境影響評価を実施するとともに、その影響を最小限にとどめるための適切な対策を講ずる所存である。

勧告三のb)

 北部訓練場については、その過半を返還することが日米間で合意されているが、返還される区域に所在する七か所のヘリコプター着陸帯を同訓練場の残余の区域に移設すること等が条件となっている。当該ヘリコプター着陸帯の移設等に関しては、沖縄本島北部の自然環境の保全にできる限り配慮するとの観点から、防衛施設庁において自然環境調査等を行ったところであり、政府としては、同施設の移設等に当たっては、自然環境に与える影響を最小限にとどめるよう、適切に対処していく所存である。