質問主意書

第150回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第三号

内閣参質一五〇第三号

  平成十二年十月三十一日

内閣総理大臣 森 喜朗   


       参議院議長 井上 裕 殿

参議院議員照屋寛徳君提出戦後処理問題としての戦時遭難船舶犠牲者に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員照屋寛徳君提出戦後処理問題としての戦時遭難船舶犠牲者に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねの平成十年度以降実施した洋上慰霊の実施年月日等は、次の表のとおりである。

図 表

二及び三について

 国が主催する洋上慰霊については、関係遺族の要望等も踏まえながら、海域ごとに行う方式による実施を引き続き検討しているところである。

四について

 関係省庁が保有する資料を調査するとともに、関係海運会社に対して照会を行った結果により承知している範囲内では、戦時遭難船舶遺族会の資料「沖縄関係戦時遭難船舶一覧表」に掲げられた船舶のうち対馬丸を除く二十五隻の遭難当時の所有者、管理主体等は、次のとおりである。

1 波上丸

 所有者は大阪商船株式会社、管理主体は陸軍、出港地は香港、航行目的は軍務、遭難年月日は昭和十七年十月七日、遭難海域はラバウル南方海域、沈没原因は潜水艦による攻撃、船客死亡者数は二名である。
 護衛の有無、乗船人員数、生存者数、事故報告書の有無及び死亡者名簿の有無については、把握していない。

2 近江丸

 所有者は日本郵船株式会社、管理主体は船舶運営会、出港地はクサイエ、航行目的は貨客の運送であり、護衛はなく、遭難年月日は昭和十七年十二月二十七日、遭難海域はポナペ周辺海域、沈没原因は潜水艦による攻撃、乗船人員数は百二十四名、船客死亡者数は百二十四名、生存者数は零名である。
 事故報告書の有無及び死亡者名簿の有無については、把握していない。

3 嘉義丸

 所有者は大阪商船株式会社、管理主体は船舶運営会、遭難年月日は昭和十八年五月二十六日、遭難海域は奄美大島北方海域、沈没原因は潜水艦による攻撃である。
 出港地、航行目的、護衛の有無、乗船人員数、船客死亡者数、生存者数、事故報告書の有無及び死亡者名簿の有無については、把握していない。

4 湖南丸

 所有者は大阪商船株式会社、管理主体は船舶運営会、遭難年月日は昭和十八年十二月二十一日、遭難海域は薩南諸島周辺海域、沈没原因は潜水艦による攻撃である。
 出港地、航行目的、護衛の有無、乗船人員数、船客死亡者数、生存者数、事故報告書の有無及び死亡者名簿の有無については、把握していない。

5 赤城丸

 所有者は日本郵船株式会社、管理主体は海軍、出港地はトラック、航行目的は軍務であり、護衛はあり、遭難年月日は昭和十九年二月十七日、遭難海域はトラック諸島周辺海域、沈没原因は飛行機による攻撃、乗船人員数は八百六十一名、船客死亡者数は七百八十八名、生存者数は七十三名である。
 事故報告書の有無及び死亡者名簿の有無については、把握していない。

6 夕映丸

 所有者は栗林商船株式会社、管理主体は陸軍、出港地は門司、航行目的は軍務、遭難年月日は昭和十九年二月十七日、遭難海域はトラック諸島周辺海域、沈没原因は飛行機による攻撃、乗船人員数は百八十三名、船客死亡者数は二名である。
 護衛の有無、生存者数、事故報告書の有無及び死亡者名簿の有無については、把握していない。

7 亜米利加丸

 所有者は大阪商船株式会社、管理主体は海軍、出港地はサイパン、航行目的は軍務であり、護衛はあり、遭難年月日は昭和十九年三月六日、遭難海域は硫黄島南東方海域、沈没原因は潜水艦による攻撃、乗船人員数は六百四十二名、船客死亡者数は五百九十九名、生存者数は四十三名である。
 事故報告書の有無及び死亡者名簿の有無については、把握していない。

8 台中丸

 所有者は大阪商船株式会社、管理主体は船舶運営会、遭難年月日は昭和十九年四月十二日、遭難海域は奄美大島北西方海域、沈没原因は潜水艦による攻撃である。
 出港地、航行目的、護衛の有無、乗船人員数、船客死亡者数、生存者数、事故報告書の有無及び死亡者名簿の有無については、把握していない。

9 美山丸

 所有者は日本郵船株式会社、管理主体は海軍、出港地はパラオ、航行目的は軍務であり、護衛はあり、遭難年月日は昭和十九年五月十四日、遭難海域はパラオ北西方海域、沈没原因は潜水艦による攻撃、乗船人員数は千五十七名、船客死亡者数は八十五名、生存者数は九百七十二名である。
 事故報告書の有無及び死亡者名簿の有無については、把握していない。

10 ジョクジャ丸

 所有者は南洋海運株式会社、管理主体は海軍、出港地はパラオ、航行目的は軍務であり、護衛はあり、遭難年月日は昭和十九年五月十五日、遭難海域はパラオ北西方海域、沈没原因は潜水艦による攻撃である。
 乗船人員数、船客死亡者数、生存者数、事故報告書の有無及び死亡者名簿の有無については、把握していない。

11 千代丸

 所有者は栃木商事株式会社、管理主体は海軍、出港地はサイパン、航行目的は軍務であり、護衛はあり、遭難年月日は昭和十九年六月二日、遭難海域はマリアナ諸島周辺海域、沈没原因は潜水艦による攻撃である。
 乗船人員数、船客死亡者数、生存者数、事故報告書の有無及び死亡者名簿の有無については、把握していない。

12 白山丸

 所有者は日本郵船株式会社、管理主体は海軍、出港地はサイパン、航行目的は軍務であり、護衛はあり、遭難年月日は昭和十九年六月四日、遭難海域は硫黄島南西方海域、沈没原因は潜水艦による攻撃、乗船人員数は六百四十五名、船客死亡者数は三百二十五名、生存者数は三百二十名である。
 事故報告書の有無及び死亡者名簿の有無については、把握していない。

13 神島丸

 所有者は栗林商船株式会社、管理主体は海軍、出港地はサイパン、航行目的は軍務であり、護衛はあり、遭難年月日は昭和十九年六月十二日、遭難海域はサイパン島北北西方海域、沈没原因は飛行機による攻撃である。
 乗船人員数、船客死亡者数、生存者数、事故報告書の有無及び死亡者名簿の有無については、把握していない。

14 宮古丸

 所有者は大阪商船株式会社、管理主体は船舶運営会、遭難年月日は昭和十九年八月五日、遭難海域は徳之島伊仙崎沖海域、沈没原因は潜水艦による攻撃である。
 出港地、航行目的、護衛の有無、乗船人員数、船客死亡者数、生存者数、事故報告書の有無及び死亡者名簿の有無については、把握していない。

15 広順丸

 所有者は広海商事株式会社、管理主体は海軍、出港地はパラオ、航行目的は軍務であり、護衛はあり、遭難年月日は昭和十九年八月十三日、遭難海域はミンダナオ島周辺海域、沈没原因は潜水艦による攻撃、乗船人員数は九百六十二名、船客死亡者数は六百二十八名、生存者数は三百三十四名である。
 事故報告書の有無及び死亡者名簿の有無については、把握していない。

16 開城丸

 所有者は大阪商船株式会社、管理主体は船舶運営会、遭難年月日は昭和二十年三月二十四日、遭難海域は東シナ海、沈没原因は飛行機による攻撃である。
 出港地、航行目的、護衛の有無、乗船人員数、船客死亡者数、生存者数、事故報告書の有無及び死亡者名簿の有無については、把握していない。

17 第一千早丸

 遭難年月日は昭和二十年七月三日、遭難海域は尖閣諸島周辺海域である。
 所有者、管理主体、出港地、航行目的、護衛の有無、沈没原因、乗船人員数、船客死亡者数、生存者数、事故報告書の有無及び死亡者名簿の有無については、把握していない。

18 第五千早丸

 遭難年月日は昭和二十年七月三日、遭難海域は尖閣諸島周辺海域である。
 所有者、管理主体、出港地、航行目的、護衛の有無、沈没原因、乗船人員数、船客死亡者数、生存者数、事故報告書の有無及び死亡者名簿の有無については、把握していない。

19 朝日丸、広善丸、栄丸、千鳥丸、照国丸、八重丸及び横山丸

 所有者、管理主体等は把握していない。

五について

 戦傷病者戦没者遺族等援護法(昭和二十七年法律第百二十七号)は、国家補償の精神に基づき、国と雇用関係又は雇用類似の関係にあった軍人等が戦争公務等により障害の状態となり、又は死亡した場合に、これらの戦傷病者や戦没者遺族等に対し年金等を支給することを規定している。これに加えて、同法第二条第三項第二号は「もとの陸軍又は海軍の要請に基く戦闘参加者」を同法に基づく年金給付等(以下「年金給付等」という。)の対象としており、沖縄戦においては我が国で唯一民間人を巻き込んだ地上戦が行われ、その際、民間人が軍の要請により戦闘に参加したことから、これらの民間人が年金給付等の対象とされているところである。しかしながら、御指摘の戦時遭難船舶に乗船していた民間人については、このような事情がないことから、年金給付等の対象とはされていないものである。
 なお、対馬丸遭難学童は、年金給付等の対象ではないが、沖縄戦が目前に迫った時期に、政府の軍事政策に協力するという形で学童疎開が行われ、その途中で米軍の攻撃により遭難したという特別の事情を考慮し、その遺族に対して対馬丸遭難学童遺族特別支出金を支給することとしているものである。