質問主意書

第150回国会(臨時会)

質問主意書


質問第二〇号

神奈川県内の米軍基地・施設における遊休部分の返還に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十二年十一月三十日

小泉 親司   
畑野 君枝   


       参議院議長 井上 裕 殿


   神奈川県内の米軍基地・施設における遊休部分の返還に関する質問主意書

 神奈川県内には、横須賀の「長井通信施設」を含め一七か所もの米軍基地・施設が存在し、その多くが市街地や住宅地に隣接しているため、県民生活や生活環境、街づくり等に大きな障害となっている。また、幾つかの基地では危険物等の保管や貯蔵が行われているために、近隣住民の健康と安全、環境破壊に対する不安の原因にもなっている。首都圏にこのような外国の軍事基地が存在していることは、国際的にも異常な事態であり、米軍基地は全面撤去すべきである。
 これらの米軍基地・施設の中には、明らかに遊休化していると思われる施設・区域が存在している。我々の調査によると富岡倉庫地区、上瀬谷通信施設、池子住宅地区及び海軍補助施設などはその最たるものである。既に地元住民や自治体からは、遊休地の有効利用が望まれ、返還の要望が強く出されている。本年十一月十三日にも、横浜市議会から「横浜市内米軍施設の早期返還等に関する要望書」が、跡地利用構想とともに政府へ提出されているところである。
 日米地位協定第二条第三項には、「合衆国軍隊が使用する施設及び区域は、この協定の目的のため必要でなくなつたときは、いつでも、日本国に返還しなければならない。合衆国は、施設及び区域の必要性を前記の返還を目的としてたえず検討することに同意する」と規定されている。したがって、米軍への提供施設・区域については、その目的が終了し遊休化した場合、直ちに無条件で日本側に返還されることは当然のことである。
 以下、富岡倉庫地区、上瀬谷通信施設、池子住宅地区及び海軍補助施設並びに深谷通信所について質問する。

一 富岡倉庫地区(横浜市金沢区)について

 富岡倉庫地区は、ベトナム戦争以来ほとんど利用されておらず、空き地同様になっていた。一九九二年三月から一時的に材木と骨材が搬入されたが、これらの資材も現在は全く集積されておらず、文字通り完全な遊休地となっている。さらにこの施設には、国道三五七号線を挟んで海側に岸壁を備えた地区があるが、この部分はベトナム戦争以来全く使われていない。

1 遊休化の事実を認めるか。認めないのであれば、どのような認識でいるのか。政府の認識を明らかにされたい。とりわけ、岸壁部分は既に返還されてしかるべきだと考えるが、どうか。
2 これまで政府は、日米地位協定第二条第二項の規定に基づき、日本側から返還の要請をしたことはあるか。ある場合はその結果を、ない場合はその理由を明らかにされたい。
3 日米地位協定第二条第三項によると、米国は「施設及び区域の必要性を前記の返還を目的としてたえず検討する」と規定されている。政府はこれまで、米国が「返還を目的とした」検討をしたことがあるかないかということを、米国政府に対して、確認したことはあるか。あれば、確認した内容を明らかにされたい。
4 日米地位協定第二条第一項(a)によると、「個個の施設及び区域に関する協定は、第二十五条に定める合同委員会を通じて両政府が締結しなければならない」と規定されている。この協定は結ばれているのか、結ばれているならば、その内容を明らかにされたい。

二 上瀬谷通信施設(横浜市瀬谷区・旭区)について

 上瀬谷通信施設は、一九九一年頃から巨大なアンテナ群が全面撤去され、九五年には基地周辺地域に設定されていた「電波障害防止制限区域」の指定も解除された。通信施設としての機能が一部残されているものの、施設名も「支援施設」に変更され、囲障区域以外の広大な用地は遊休化が歴然としている。
 また、昨年九月七日に、我が党の中路雅弘衆議院議員(当時)や畑野君枝参議院議員らが同施設の調査を行った際、デヴィット・P・スミス司令官は、「フェンスで囲った区域(四三・二ヘクタール)を除く八割以上は使用していない」と言明している。
 さらに、在日米軍が上瀬谷通信施設を含む県内米軍基地の一部を返還し、その見返りとして上瀬谷通信施設に米軍家族住宅の建設を求めていることが、昨年新聞報道された。これについては、既に中路議員が、遊休化した部分への家族住宅六〇〇戸の建設などを計画している米軍内部文書の存在を明らかにしている(一九九六年十二月五日衆議院安全保障委員会)。

1 囲障区域以外の部分の遊休化を認めるか。認めないのであれば、どのような認識でいるのか。政府の認識を明らかにされたい。
2 政府は、遊休地への家族住宅建設要望が米軍から事務レベルで提案されたことを認めている(二月二十八日参議院外交・防衛委員会の防衛庁長官答弁など)が、このこと自体、遊休状態にある区域が存在することを、米軍自らが証明しているものと考えるが、どうか。
3 現在、政府がつかんでいる米軍住宅・倉庫群建設計画にかかわる全ての情報を明らかにされたい。
4 昨年十二月十四日の参議院外交・防衛委員会における小泉親司議員の質問に対して、政府は、日米地位協定第二条第二項の規定により、日本政府の側から返還要請をすることは、協定上可能であると答弁している。それならばこれまで、日本側から返還の要請をしたことはあるか。ある場合はその結果を、ない場合はその理由を明らかにされたい。
5 これまで政府は、日米地位協定第二条第三項の規定に基づき、米国が「返還を目的とした」検討をしたことがあるかないかということを、米国政府に対して、確認したことはあるか。あれば、確認した内容を明らかにされたい。
6 日米地位協定第二条第一項(a)に規定されている協定は結ばれているのか、結ばれているならば、その内容を明らかにされたい。

三 池子住宅地区及び海軍補助施設(逗子市池子・久木、横浜市金沢区)について

 ここは一九七八年以来遊休化していたが、一九八五年、「池子弾薬庫」を「池子住宅地区及び海軍補助施設」に名称変更することを日米両政府間で合意、全面返還を求める住民の声があるにもかかわらず、政府は米軍住宅の建設計画を強行してきた。しかし、計画地以外の残る約二〇〇ヘクタールの部分は遊休状態になっている。

1 遊休化の事実を認めるか。認めないのであれば、どのような認識でいるのか。政府の認識を明らかにされたい。
2 これまで政府は、日米地位協定第二条第二項の規定に基づき、日本側から返還の要請をしたことはあるか。ある場合はその結果を、ない場合はその理由を明らかにされたい。
3 これまで政府は、日米地位協定第二条第三項の規定に基づき、米国が「返還を目的とした」検討をしたことがあるかないかということを、米国政府に対して、確認したことはあるか。あれば、確認した内容を明らかにされたい。
4 日米地位協定第二条第一項(a)に規定されている協定は結ばれているのか、結ばれているならば、その内容を明らかにされたい。

四 深谷通信所(横浜市泉区)について

 この施設は、在日米海軍極東コンピュータ通信本部(横須賀市)の管理下にあったが、昨年厚木基地の管理となった。それに伴い、日本人従業員も職場が厚木基地へ移転となり、現在は若干名の警備員が厚木から通っている程度である。また、施設の周辺住民によると、テレビやラジオの受信障害もなくなったということである。
 活用状況について、日本政府としてどこまで把握しているのか、明らかにされたい。

  右質問する。