質問主意書

第150回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一五号

医療法における精神病床の人員配置基準に係る特例規定と社会権規約に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十二年十一月二十八日

朝日 俊弘   


       参議院議長 井上 裕 殿


   医療法における精神病床の人員配置基準に係る特例規定と社会権規約に関する質問主意書

 政府は、去る平成一二年一一月一六日に開かれた参議院国民福祉委員会において、堀利和委員の質問に答えて「一方で、精神病床の基準ということでございますけれども、これは広く精神疾患の特性に応じた医療を確保するために設けられたものでございまして、精神障害者に対しての保健医療サービスの提供というものを差別するものではない、したがって社会権規約に違反するものではないと、そのように厚生省としては考えております。」(福島豊政務次官)と答弁している。
 そこで、このような政府の答弁を踏まえて、以下の点について質問する。

一、国際連合社会権規約委員会の一般的意見第五(障害を持った人)第一五段落の中で、同委員会は障害に基づく差別を定義して、「規約の目的上『障害に基づく差別』とは、経済的、社会的及び文化的権利の承認、享受、又は行使を無効にし、又は害する効果を有する、障害に基づくあらゆる区別、排除、制限、特恵、又は合理的便宜の否定を含むと定義できる。」と述べている。
 政府は、社会権規約の解釈上「障害に基づく差別」に関するこの社会権規約委員会の見解に同意するか。もし、異なる見解を有するとすれば、その具体的内容とその根拠を明らかにされたい。

二、同じく同委員会の一般的意見第五の第三四段落(F第一二条-身体的及び精神的健康に対する権利)では、国連総会決議「障害者の機会の平等化に関する基準規則」第二条第三項「国家は障害を持った人、特に幼児及び子供が、社会の他の構成員と同じ制度内で、同じレベルの医療ケアを与えられることを確保すべきである」を引用している。

1 医療法における人員配置基準に係る特例により、精神病床は医師を入院患者四八人に一人、看護婦(士)を入院患者六人に一人と規定しているのは、一般病床が医師を一六人に一人、看護婦(士)を三人に一人であることと比較しても、精神科入院患者が他の社会構成員と同じレベルの医療ケアを受ける権利を侵害していることは明らかではないか。
2 精神科入院患者は、我が国においては多くの場合、単科精神病院の閉鎖病棟に入れられており、それ自体、医療ケアにアクセスする権利を大いに制限されているが、その上人員配置基準に係る特例規定により劣悪なレベルの医療ケアしか受けられない差別的な治療構造になっており、これは、正に一で述べられている社会権規約委員会の定義する「障害に基づく差別」に該当するのではないか。
3 前記国会答弁では、「そして今回の医療法改正におきまして、(中略)精神疾患の特性に応じて質の高い精神医療サービスを提供できる新たな省令における基準を定めることといたしておりまして」としているが、政府は、入院精神障害者が他の社会構成員と同じレベルの医療ケアを受ける権利を有することを基本的なものと考え、その上で新基準の策定を行おうとしているのか。

  右質問する。