質問主意書

第150回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一三号

土地収用法等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十二年十一月二十七日

福山 哲郎   


       参議院議長 井上 裕 殿


   土地収用法等に関する質問主意書

 現在、建設省は来年の通常国会に向け、土地収用法の改正作業を進めている。より良い制度を考える上で最も重要な点は、現行の法制度や運用における問題点を把握することであると考える。よって以下質問する。
 なお、同様の文言が並ぶ場合でも、各項目ごとに答弁されたい。

一 事業認定の公正性について

 土地収用法及び公共用地の取得に関する特別措置法は、憲法第二十九条に定める私有財産権と公益性を調整するための法律であり、公益性を誰がどのような方針で判断するかが、最も重要な骨格である。

1 公共用地の取得に関する特別措置法制定に際し、事業認定機関は第三者的な行政委員会であるべきだという見解が立案に参画した学者より提起されたと聞くが事実か。
2 そのような形にならなかったのは、建設省の反対があったためと聞くが事実か。事実であるならば反対の理由は何であったか。
3 道路やダム事業において事業認定を申請する当事者である建設省が同時に、認定者であることは公正に欠ける。この点を改善すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。また、改めるとした場合、いかなる改善策が選択肢としてあり得るか。現在、考え得る選択肢を列挙されたい。
4 二〇〇一年の省庁再編により、事業認定機関は国土交通省となり、これまで運輸省から申請されていた事業についても、申請者と認定者が同一組織内に存在することとなり問題は大きくなる。より公正な制度とするためには、認定を第三者に委ねるべきだと考えるが政府の見解を示されたい。

二 事業認定の手続について

1 土地収用法第二十二条、第二十三条では、建設大臣又は都道府県知事は、事業認定を行う場合、必要があると認めるときは、「申請に係る事業の事業計画について専門的学識又は経験を有する者の意見を求めることができる」、また「公聴会を開いて一般の意見を求めなければならない」と定められている。しかし、現行法の制定以来、これらは一度も行われたことはなく、空文化していると聞くが事実か。事実であるならば、いかなる理由で一度も公聴会等が行われなかったのか。
2 第二十五条では、事業認定の利害関係者は、「都道府県知事に意見書を提出することができる」とあるが、意見書が提出された後、それらに対する回答は何らない。行政への住民参加と行政の説明責任が求められる中、この状況は改善されなければならないと考えるが政府の見解を示されたい。

三 事業認定の申請時期について

1 事業認定の申請時期について、建設省は事業計画の決定後速やかに申請すべきであるという立場をとり、通知、通牒、訓令を出していると聞くが事実か。
2 事業計画の決定後速やかに申請した例はあるか。また、事業計画の決定後速やかに申請しない場合、その理由はいかなるものがあるか。具体的に例示されたい。
3 実際には、任意買収を進め、事業に反対する地権者の土地だけが残った状態で事業認定がなされ、事業認定取消訴訟を起こしても、事実上、訴えの利益がなく、地権者は対抗できないという問題が起きている。これについての政府の見解を示されたい。

四 行政事件訴訟の執行不停止の原則について

1 行政事件訴訟法によると、第二十五条で「執行不停止の原則」が採られ、訴訟が起きても裁判所は、行政に対し執行停止命令をかけないことが原則となっている。しかし、「執行停止の原則」を採用している国もあると聞く。双方のメリット、デメリットをどのように考えるか。
2 行政事件訴訟法で、裁判所が事業停止を認めた場合、内閣総理大臣は異議を申し立てることができるが、裁判所はそれを覆すことができない。これは違憲であるという説があるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。